リュカ伝の外伝
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最初から勝負にはなって無かった
前書き
若者達が青春を謳歌するお話。
(グランバニア王都:中央地区・中央地区体育館)
ピパンSIDE
今年最後の大会だ。
個人戦も団体戦も勝利で終わらせたいと思っている。
だがそれは皆同じ事を思っているだろう。
だから俺等に出来る事は、今まで練習してきた事を遺憾なく発揮させる努力をする……それだけだ!
俺が参加するのは剣術大会……
幼い頃より父に教わり頑張ってきた。
国義教学校に入ってからも剣術部に入部し8年間を注いできた。
皆さんは『剣術』と聞いても漠然としか認識出来ないだろう。
だが大きく分けると『剣術』には2つの“作法”というか“動き方”が存在する。
1つめは完全に戦の事である。
対戦相手を殺す(あるいは反撃不可能な状態へとする)事が目的で、戦争以外の何物でも無い。
もう一つが俺の青春を捧げている方で、対戦相手を殺すなんて以ての外……
決められたルールに則り相手から決まり手などを得た方が勝ちとなる。
使用する武器(基本的に剣の形をしている)はイミテーションであり、刃が無いので豆腐くらいしか切れない……尤も豆腐すら型崩れさせてしまうだろう。
だが材質は堅く重傷もそれなりにあるので、雑な当て方をしたり受ける方も気を抜いていると大けがをする恐れもある。
なので試合(勿論練習時)の時は自分の身体の急所とかに保護用のプロテクター(簡易的な鎧)を装着する。
それでもけが人が出てしまう事もあるから、俺は常々から部員に注意を喚起している。
この大会の運営から開会式を進行されついに今年最後の剣術大会が幕を上げた。
先ずは個人戦。各々自分の学校を背負っているが、この勝敗は完全に各個人の物……
俺の試合はまだ先ではあるが、会場内の隅に行き対戦相手となり得る者の試合を見学する。
最近は剣術大会も人気なのかと沢山居る観戦客(?)の人集りを掻き分け、ちょっとした開けた場所に到達すると……
「ピパン!」
と俺を呼ぶ声がする。
辺りを見渡すと、そこには俺の応援に来てくれた母が……
そして何故だかルディーさんも隣に居て……?
そ、そして……しかも……ルディーさんの後ろからデイジーさんが現れて、俺の方へと駆け寄ってくる!!
「えっ、何!? 俺、夢でも見てる??」
「夢じゃ無いよぅ。逢いたくて来ちゃったんだ♥」
突然デイジーさんの登場に俺はパニックになっていると、彼女が可愛らしくこれが現実である事を自覚させてくれる……彼女の柔らかい胸を俺の腕に押し付けて。
如何やら一旦は一人暮らし用のマンションに立ち寄ったらしく、あの時に買った服を着てここには来てる。
普段の服(彼女のお母さんの趣味)だと、あまりにも悪目立ちをするので本当に一安心だ。
俺と同じくこの後に個人戦出場が控えている友達の『ジムエル』君が……
「ねぇねぇ、誰だい? 俺に紹介してくれよ」
と半ば解っていながらニヤニヤ訊いてくれる。
だから彼に説明しようとしたら……
「ここじゃなんだし、ドリスさんが確保したあっちの観戦スペースへ行ってから、落ち着いて話をしようよ」
とルディーさんが提案をしてくれた。
正直俺は軽く混乱状態だし、言われるがまま母さんの後に付いていく……
途中で誰かに呼ばれた気がしたのだが、ルディーさんが、
「付き合いたてでイチャイチャしたい気持ちも解るけど、『バカップル』って呼ばれない為にもう少しキビキビ動いた方が良いよ(笑)」
と、からかわれて慌てて母さんの下へ……(照)
母さんが確保してくれたスペースには直ぐに到着。
あまり観戦するには良い場所だとは言い辛い……
その事を言ったら「良い場所だとアンタからも確認出来て、デイジーちゃんの姿に舞い上がって集中出来ないでしょ!」と宣ってました。
やれやれと思いつつ、ジムエル君に俺の彼女を自信満々に紹介。
母さんとは何度かあった事もあるから軽く済ませてけど、ルディーさんは何時も通りに優しくしっかり自己紹介……を終わらせてプリ・ピーの布教活動でした。
因みに彼は既にヴァネッサさんのファンである。
俺よりも先に嵌まっていたんだよ!
ピパンSIDE END
(グランバニア王都:中央地区・中央地区体育館)
ルディーSIDE
……多分リュカ様にはバレてるな。
サラボナ通商連合に諜報部門があり、その総括を僕がやっているって事は間違いなくバレている。
でもその程度なのか、全てでは無いにしろ諜報員の情報(顔・本名・コードネーム・任務・etc……)も調べられてしまってるのか、そこが解らないがやはり今回の件に使うべきでは無かった。
突然ピピン閣下が奥様と僕の部屋に来て、今日のお願いをされた時は驚いたけど、リュカ様も一緒に来て申し訳なさそうにしているのを見せられては断る事も出来ない。
だって手土産としてリュカ様が自腹でカボチ村産の萎びたニンジンを買ってきてくれたから……
だから前日の夕方にリュカ様と共にこっそりサラボナに帰って、お祖父様等に根回しをしてから再度今日の朝にデイジーを迎えにルーラ帰郷。
リュカ様の視線に堪えながら、一旦デイジーのマンションへ行き、デイジーが帰宅する夕刻までリュカ様と暫しの別れ。
正直心は軽くなったので、今度はドリスさんを迎えにグランバニア城へとM・Hを走らせる。
先日の“ピパン初彼女を母親へ紹介”イベントのお陰であの極度なる人見知り少女がドリスさんと仲良く会話している。
二人とも後部座席に乗っているから、ルームミラー越しの確認だけど、僕として凄く喜ばしい。
現状抱えてる心配事は悩んでも解決出来ない部類なので、今は大小関係なく幸せを掻き集めて精神の均衡を保つとしよう。
時間的には大分早くに行動を開始したのだが、大会会場となる中央地区体育館は何だか凄い混雑で、体育館周辺の駐車スペースに魔道車を駐める事も一苦労だった。
何とか駐車をし大会会場へと……
ピパン君を含め多分僕の分も用意してくれてあると勝手に予測するお弁当だと思われる大量の荷物を魔道車から卸し、会場への出入り口に視線を向けると、人が多いからはぐれるのは危険だという事を言ってドリスさんはデイジーの手を握り入場して行ってしまった。
如何やらこの大量の荷物(さっき言った弁当と思われる)を運ぶのが僕の今日の任務になった。
どうもコードネーム“プリティー・ランチボックス”です(T-T)
やはり常識人に見えてもリュカ様と血縁なだけある……ナチュラルに面倒事を押し付けてくるね。
体育館の1階……
つまり選手が試合を行う直ぐ脇は、大会運営とかの係員が設備を広げており、殆どここで観戦する事は無理だと思われる。
だから無難な2階へと上がり、見やすい場所を確保するのが定石だろう。
もう慣れているドリスさんはデイジーの゙手を引いて2階席を物色。
すると、それ程良くは無いが無難そうなスペースを見つけ二人揃って小走りで近付く。
同じ事を思った人も居るらしく、ほぼ同着……まぁ贔屓目で見てちょい早く確保出来たのだが、相手もこの混雑に辟易してたのか「退きなさいよオバサン!!」と大きな声でドリスさんを牽制。
まだデイジーくらいの少女ではあるのだが、将来に希望と不安をギッチリ秘めた存在だ。
「オバサンだぁ~……」
見るからにブチ切れそうになるドリスさんだったが、側に居るデイジーが怒鳴られた事にショックで泣きそうになっていた為、多分普段だったら今頃大乱闘状態だったんだろうけど、我々が別の場所に行く事で事無きを得る。
「まぁ良いわ……仕方ないから今日は3階席で観ましょう」
そう言って凄い視線で先程の少女を睨んで廊下へと出て行く。
僕的にはこの大量の荷物をなんとかしたい気持ちだったので、睨む訳でも無いが将来希望の少女を見詰めた。
少女は少女で僕の視線に気付いたのだが、高飛車に“ふんっ!”とそっぽを向いて無視を決め込む。
そして試合会場に向けてお手製の横断幕を広げて自分の精神世界へとトリップして行く……
なお……その愛の籠もった横断幕には『頑張れピパン君♥』と、僕の疲れを癒やしてくれる文字が。
良いなぁ、この国。最高だよね!
心と足取りが軽くなりつつ僕も3階へと荷物を運ぶ。
さぁ頑張れコードネーム“プリティー・ランチボックス”!
何とか場所も確保し、美女二人と共に寛ぎながらこの大会の開会式等を眺めている。
如何やら我々の目当てであるピパン君は、丁度我々が陣取った場所の真下辺りに居るらしく、3階席からでは姿を確認する事は出来なかった。
だけど事前に用意されてる大会プログラムを見ると、ピパン君の試合時間はまだ先なので声だけでもかけようと思い、開会式が終わって直ぐに3人揃って1階へと向かった。
2階を通り過ぎた辺りで、先程の将来有望少女も同じ事を考えたのか、廊下で遭遇。
だが先んじてたドリスさんは既に1階へと降りており、あの少女を見る事は無かった。
その代わりに廊下へと出てきてたピパン君に偶然遭遇。
少し遅れて後方からあの少女も愛しき人物を発見するも、今回は完全にドリスさんの方が先にピパン君の名を叫ぶ。
当然それに気付くは我らのアイドルピパン君。
直ぐに呼ばれた方に視線を向けてその人物を目視。
だが意識を大きく持って行かれたのは声をかけた主では無く、手を握られ側に居た将来安泰の僕の妹デイジー。
未来のお義母さんの手を離し未来の旦那さんへと走寄抱き付く。
突然のサプライズゲストに驚き戸惑い幸せに浸っているピパン君……そんな彼にご友人が「ねぇねぇ、誰だい? 俺に紹介してくれよ」とナイスすぎる質問をしてくれる。
彼には後で何かを奢ってあげなければ!
こんな人混みだと折角の台詞が訊かせたいオーディエンスに聞こえないのではと思い、「ここじゃなんだし、ドリスさんが確保したあっちの観戦スペースへ行ってから、落ち着いて話をしようよ」と提案する。
彼は素直に快諾。
我々の後に付いて3階へと……
1階、2階よりかは人が少なくなり、ストーカーの様に付いて来た例の将来有望少女が思わず声をかけてきたので僕も慌てて「付き合いたてでイチャイチャしたい気持ちも解るけど、『バカップル』って呼ばれない為にもう少しキビキビ動いた方が良いよ(笑)」と周囲の人々に理解してもらえる様に告知。
そんな当人には恥ずかしいであろう“告知”に全然否定をしない幸せ満載顔のピパン君の追っかけ少女……顔にファンデーションを塗りすぎなんじゃ無いかと思われるくらい真っ白な顔で立ち尽くしている。
思わずサラボナ産の良い化粧品をお薦めしてやろうかと思えるくらい彼女は可愛らしい(笑)
フラフラとした足取りで自らの品位を落としてまで確保した2階席へと帰って行く少女……
正直に教えてあげたい。
もしこの世にデイジーが存在しなくても、君には縁の無い世界だったと思うよ……とね。
すこし意地悪かな?
でもあの性格じゃなぁ……
ルディーSIDE END
後書き
2024年6月24日更新
駄目だよルディー君!
君までそっちの世界にいってしまってはw
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