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リュカ伝の外伝

作者:あちゃ
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恋する乙女達のスピード勝負

(グランバニア王都:中央地区・中央地区体育館)
パナスSIDE

学校行事が盛り沢山だった二学期を終え短い冬休みに突入して3日目。
そんな貴重な休日に私は朝早くから着飾り魔道人員輸送車(バス)に乗っている。
隣の席には友達の“ポリノスーン”が座っている……同じ目的を持って。

目的地は王都中央地区にある国営の体育館だ。
今日はそこで王都内の国義教学校(国営義務教育課程学校)の剣術部が大会を行い何処の国義教学校(国営義務教育課程学校)が一番なのかを競わせ確認するらしい。
フェンシング部も同時に大会するらしい……如何(どう)でも良いけどね。

いや、ぶっちゃけちゃうと“剣術”だろうと“フェンシング”だろうと興味は無い!
私……そう私と隣に座ってる友達(ポリノスーン)は大会になんぞ微塵も興味無く、ただ一人の男子だけが目当てで如何(どう)でも良いスポーツの大会にオシャレな格好をして見学しに来ているのだ。

目的の人物の名はピパン君……フルネーム『ピパン・ハンター』と言い、兎も角凄いイケメンだ。
そのイケメン具合は顔だけの話ではない!
もう全てを兼ね備えてると言っても語弊は無いだろう。

まず特筆すべきは先程から再三言ってる顔……長時間眺めていても飽きる事は無いだろう。
そんなイケメンなのに、性格も優しく楽しい。
しかも頭も良いから、その顔と心を活かして女子(ある意味男女関係なく)のハートを鷲づかみする!

家柄も最高で、お父様は現役の軍務大臣。
お母様も以前に文部魔法学大臣を務めていたお方だ。
そしてここからが凄いのだが、そのお母様は現国王陛下の従兄弟(いとこ)であり、順位は低いが王位継承権も持っている。(何番なのかは知らない)

そんな最優良物件(最高彼氏候補)が私(友達(ポリノスーン)もだが)の同級生として直ぐそこに存在している。
逃すなんて出来る訳が無い!

友達(ポリノスーン)の存在をみれば解るが、(ピパン君)を狙ってる女子は大勢居る。
この魔道人員輸送車(バス)にポリノスーンが乗り合わせたのは偶然(同じ事を目的に考えてるから当然とも言える)だが、他のハイエナ(ピパン君を狙うブス)共は、まだ居る事だろう。

この大会自体は昔からやってるらしい(知らんけど)が、私が見学を始めたのは2年前からだ。
学校で何時も一緒に居るグループ(仲が良いワケでは無くって、勝手に暴走しない用に牽制してる)の一人である“ネモリア”が、その1年も前から黙って見に行っており、それが発覚!

発覚した理由が『一人で行ったら大会日を間違えてたらしく、無意味に着飾っているこの女(ネモリア)と体育館前で遭遇(因みにこの年は西中央地区の体育館)。そして詰問したら白状』となり、私も参加する事へと!

本来ならもっと早く会場へ赴いてるハズなのだが、昨晩に決めた今日着ていく服が気に入らなくなり、再度選び直していたらこんな時間になってしまってた。
その所為でこの女(ポリノスーン)と同じ魔道人員輸送車(バス)に乗る羽目に……

大会見物自体には間に合うだろうが、その見物場所は最悪な所になるだろう。
試合なんかは見えなくても良いのだが、ピパン君から私のことが見えないであろう事がムカつくのよ! 如何すれば良いのかしら?

過ぎた時間は如何(どう)しようも無いと諦めるけど、他の魔道人員輸送車(バス)とかを追い抜いて、今すぐに私だけが到着すれば大分マシな事になるだろう!
(なん)とかならないの!?

って言うか……(なん)魔道人員輸送車(バス)の周りに、同じ魔道人員輸送車(バス)みたいなのが沢山居るわ!?
魔道人員輸送車(バス)……みたいに人が乗ってるけど、2~3人だし大きさも全然小さい。

去年は居なかったと思うけど……うん。
絶対に居なかったわ。
だってアイツ等が邪魔なんだもん!

パナスSIDE END



(グランバニア王都:中央地区・中央地区体育館)
ピピンSIDE

年内最後の公的行事。
仰々しく聞こえはするが内容は大した事では無い。
義務教育課程の学生による部活動の一環である。

俺の息子も今年8年生として大会に出場する事に……
1年生の時からやってる部活動であり、個人戦となる各年齢の試合に8年連続での出場だ。
本人も当然嬉しがっており、父親の俺も鼻が高い!

本来(普通?)ならば父親として息子の試合は個人戦・団体戦問わずに最前列で観戦するのが筋なのだが、俺は毎年(というか全ての大会)親としてでは無く、大会来賓の軍務大臣として参加しているから、個人的に息子の試合だけを観る訳にいかないのだ!

なので息子の応援は(ドリス)に任せており、本当は駄目なのだが城から一緒の魔道車(まどうしゃ)に乗って来てるつもりであった。
大会会場入り口まで一緒には無理だが、ある程度離れてる場所(例えば中央公園の向こう側)とかで降ろして歩いて来てもらう等をするつもりだった。

息子(ピパン)にはそう伝えており、我々(両親)の存在は意識しているだろう。
だがドリスが息子にサプライズを思い付いた。
大した事では無いのだが、最近息子(ピパン)に初彼女が出来、親である我々も気に入っている女性が居る

その彼女を内緒(息子にって意味)で招待してアイツの活躍を観てもらおうと思っている。
だがその彼女ってのがサラボナに住んでおり、我々の一存だけでは連れてくる事が出来ない。
更に言えば、急に決めた事だから、相手(彼女)側(家族等)の都合を考慮してない……

なので先ずはリュカ様に相談して、あの人(リュカ様)魔法(ルーラ)とご尽力を得る。
その後でリュカ様を含めてルディー君の下へ行き彼を説得する。
“説得”とは言ったが、彼も快く了承してくれて、万事準備が整った。

何も知らない息子だけが冬の寒い早朝から準備をし、所属の学校(部室)へ集まり、他の部員と共に会場入りをした。
俺は仕事なので一旦は職場(軍務大臣政務室)へ行き、そこから新しく公用車として配備された軍用魔道車・Hanmmer(軍用・ハンマー)で会場へ向かう。

本日が初の任務として認識される事になるのだが、(軍務大臣)に関わらずほぼ全ての上級公務員に公的行事の際に送迎用として使用される魔道車(まどうしゃ)が当てがわられた。

当然だが私的な目的で使用する事は厳禁であり、先程言ったこっそり(ドリス)を会場へ送り届けるなんて大問題になる。
リュカ様からは『バレない様にやれよ……バレても庇えないし、庇わないからな(笑)』と言われ公然の秘密となっている。

そんなワケで、今年の大会から、その大会の来賓として呼ばれた公務員は公用車に乗って来場してる。
ただ軍用魔道車・Hanmmer(軍用・ハンマー)なのは(軍務大臣)だけ……

他の……例えば国義教学校(国営義務教育課程学校)等を管轄に入れている文部魔法学大臣のストゥディオ殿は(株)レックスの特注セダンで『エグゼクティブ』と言う名前の魔道車(まどうしゃ)が支給されている。

特注とは言えセダンタイプ。
未舗装の道等を走るのは苦手であるし……
特注とは言え民間車。
俺の乗る軍用魔道車・Hanmmer(軍用・ハンマー)と違い魔道結晶(バッテリー)を積んでいる。

国家として見栄えを優先させる必要があったから、公用車(公式用魔道車)は走れて200km(キロメートル)くらいとの事。
俺の乗っている軍用魔道車・Hanmmer(軍用・ハンマー)は以前にも話した通りドライバー(運転手)の持つ魔力量次第なので、その点も軍・民の違いである。

因みにこの軍用魔道車・Hanmmer(軍用・ハンマー)ドライバー(運転手)だが、通常装備の軍用魔道車・Hanmmer(軍用・ハンマー)なら200~250km(キロメートル)走行可能な魔力を持っている……らしい。

失礼な感想で申し訳ないが、このドライバ……名前を『ガデツ・キコール大尉(36)』と言い、見た目では腕力だけで物事を解決へ導きそうな風貌をしているのだ。
だが彼はどちらかと言えばインテリで、初級の火炎魔法『ギラ』と解毒魔法の『キアリー』を使う事が出来る。

部隊長としても指揮能力は申し分なく、俺専属のドライバー(運転手)にしてしまうには惜しい逸材だ。
俺に魔力が無く、軍用魔道車・Hanmmer(軍用・ハンマー)を運転出来ない所為でもあるが、魔力があっても見栄えとして各大臣等には運転はさせないだろう。

本年度から使用される事となった公用車(公式用魔道車)の所為で大会会場入り口付近は大混雑。
大会に参加する選手は皆が学生(義務教育課程の学生)
それ以外は応援に来た親御さん等だから、大半がまだ魔道人員輸送車(バス)を利用している。

その魔道人員輸送車(バス)等は急に増えた魔道車(まどうしゃ)に困惑しているだろう。
魔道車(まどうしゃ)が増えて動けない状態(以前リュカ様が『渋滞』と仰ってた)には魔道人員輸送車(バス)ドライバー(運転手)だけで無く当然利用客にも迷惑が掛かっている。

軍用魔道車・Hanmmer(軍用・ハンマー)は指定されたスペースに駐車させる為、俺は会場のメイン玄関付近で降車。
ドライバー(運転手)のガデツ大尉と共にそのスペースに走って行く魔道車(まどうしゃ)を軽く見送りながら周囲を見渡すと魔道人員輸送車(バス)停が少し離れた所に設置されてる為、ここ(会場目の前出入り口)では降りれない乗客の少女が、車内からでも聞こえてくる(流石に窓が開いている)声で怒鳴っているのが見受けられた。

気持ちは解らないでも無いが、あんなに騒がれるのは本当に迷惑だ。
今の俺には如何する事も出来ないしな。
無視……と言うか放っておいて俺は会場内へ入って行く。

会場内には既に先遣してる部下が居り、俺に近付くと敬礼をして出迎えてくれる。
俺も返礼で返し互いに動き出す。
複数居る部下の内の一人が「本年度はフェンシング部からの見学となっております故、こちらの会場へお願い致します」とフェンシング大会会場の来賓控え室へと俺を誘う。

去年度は剣術部が先に見学だったのだが、毎年贔屓が無いようにとの配慮で交互に変わって見学を行うのが通例だ。
どちらも前半は個人戦を行い、終わり昼食(個人戦が終わるタイミングにもよる)を摂り、ほぼ午後から団体戦へと内容が進んでいく。

例のサプライズだが……
妻に全てを任せている為、俺の方では現状を確認出来ないで居る。
まぁ問題ないとは思うのだが、何でだか剣術部の会場の方は人が多いのだ。

出場参加選手数はほぼ同じだから、そこで人数差が出てるとは思えないけど……
剣術部の父兄の方が応援に力を入れているのか?
息子の彼女(サプライズで連れてきてもらった彼女)は人見知りが激しい女性だから、向こう(剣術部会場)が混んでいるのが凄く気がかりである。

ピピンSIDE END



 
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