神々の塔

「唐の太宗もな」
「名君って言われてるな」
「その人もや」
「自分を客観視はやな」
「魏徴さんがおってな」　
　自分を諫める重臣がというのだ。
「それでや」
「出来てたな」
「そやったわ」
　こう芥川に話した。
「ほんまな」
「そやったな」
「あの人でもな」
　名君と言われた様な人物でもというのだ。
「自分を客観視はな」
「難しいな」
「そやしな」
「あれやったな」
　芥川はこう施に返した。
「太宗さん魏徴さんが死んで」
「その時に言うたな」
「鏡を失ったってな」　
「まさに自分を客観視する」
「それを失ったってな」
「言いはったな」
「そやったな、しかも」
　芥川はさらに言った。
「その証拠か」
「あの人後でな」
「高句麗攻め込んで失敗してるな」
　魏徴の死後だ。
「そやったな」
「その時は諫められても」
「魏徴さんやなかったしな」
「それでな」　
「聞き入れへんで戦して」
「失敗したな」
「煬帝さんも失敗して」
　髄の煬帝である、度重なる高句麗遠征失敗への反発で叛乱が頻発すると政務を投げ出し江南に逃れそれにより国を滅ぼした。
「それでな」
「同じ失敗したな」
「流石に国は滅ぼさんかったけどな」
　それでもというのだ。
「反面教師にしてた人と同じ失敗したな」
「そやったな」
「確かや」
　シェリルも言ってきた。
「あの人は煬帝さん反面教師にして」
「そしてな」
　施も応えた。
「名君になったが」
「そうした失敗したな」
「自分を客観的に見せてくれる人おらん様になったら
「あれ程の人でもな」
「それだけ自分を客観的に見ることは難しい」
「そやな」
「そや、そやから自分等もな」
　施はシェリルに話した。
「そやからな」
「そのことはわかって」
「やってくことも大事やな」
「ほんまな」
　一行はこうした話をしながらだった。
　先に進みグリモワールの魔神達の前に来た、するとグリフォンの翼に蛇の尻尾を持つ漆黒の狼の姿の魔神マルコキアスに言われた。
「うむ、大儀である」
「はい、これから勝負させてもらいます」
「それではな、わしは嬉しい」
　マルコキアスは綾乃の言葉に応えてこうも言った。