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神々の塔

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第六十九話 トリックスターその七

「ほんまね」
「人はそやな」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「それはね」
 己を知るということはとだ、アレンカールは施に対して深く考える顔になってそのうえでこうも言ったのだった。
「簡単な様でね」
「難しいな」
「何度かこうしたこと言ってるけれど」
「自分等はな」
「何度お話しても」  
 そうしてもというのだ。
「その都度自分が出来てるか」
「そうなるとね」
「出来てへんって」
「なるな」
「そうなのよね」
「そうやな」
 施もまさにと頷いた。
「これがな」
「自分を知ることはね」
「難しいわ」
「人には主観があるわ」
 この見方がというのだ。
「それでね」
「その主観がな」
「案外強いもので」
「どうしてもな」
「自分をそれで見てしまうわ」
 主観に基づいてというのだ。
「どうしても」
「そやな」
「それでね」
「主観で見るとな」
「自分を高く見ても」
「逆に低く見てもな」
「どうにもね」
 これがというのだった。
「まともにはね」
「見ることはな」
「難しいわ」
「そやな」
「そう、それでね」 
 アレンカールはさらに話した。
「あたい達にしても」
「出来てへんな」
「そうよ」
「リア王でや」
 芥川はシェークスピアのこの悲劇から話した。
「何でリア王は道化を置いてたか」
「自分の傍にな」
「それは自分を客観的に見る為や」
「それで置いてたな」
「あのリア王でもや」
 老いて頑迷になっていた彼でもというのだ。
「ちゃんとや」
「自分をそう見ようとしていたな」
「客観的にな」
 その様にというのだ。
「そうしてたわ」
「そやったな」
「それでや」
 さらに言うのだった。
「まだな」
「自分を見てたな」
「客観的にな、ただ自分ではな」
 リア王はというのだ。
「そうすることはな」
「出来んかったな」
「道化を通じてや」
 そのうえでというのだ。
「自分を見てた」
「道化は鏡やったな」
「リア王が自分を見るな」
「そやったな、そういえばや」
 施はここでこう言った。 
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