リュカ伝の外伝
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
最年少が一番まとも
(グランバニア城内:ルディー宅)
ピパンSIDE
何時までも進展しないデイジーさんの部屋探し。
今日はそれで彼女に大きなトラウマを植え付けてしまった。
だから早々に解決する為に、迷惑を承知でルディーさんの部屋に沢山の大人を呼び付けている。
先ずは今回のメインであるデイジーさん。
そしてその彼女の母親であるデボラさん。
更には今日デボラさんと口論して問題を大きくしてしまったウルフ宰相。
一応この部屋の主のルディーさん。
そしてここからは解決の為に力を出させたいお偉いさん……
先ずは最終的には子供である俺の代理で動いてくれるピピン。
更に最終的にはデイジーを始めサラボナの面子に指示を出せるルドマンさん。
そしてその全てに有無を言わさず指示を出し、ルドマンさんを連れてきてもらえたリュカ様!
本当に理由は解らないが、本気でリュカ様の事を嫌っているデボラさんがブツブツ煩いが、それでもこれだけの面子が集まる事が出来たのは凄い事だと思う。
父さんと母さんには心から感謝をしたい。リュカ様との縁故……ありがとう!
さて、そんな状態ではあるが……今日の出来事までは特にルドマンさんとリュカ様には俺の口から説明させてもらった。
ウルフ宰相に任せたら、口だけは上手いから自分だけは罪が無い様な言い方で皆を騙す可能性もあるし、それだけは避ける事に徹した。
その甲斐あってかリュカ様に叱られるウルフ閣下……
「申し訳ありません……」
流石に今回は神妙に反省している……フリかもしれないから油断出来ないんだよなぁ!
で本編に入りたいんだけど、俺の勝手な都合を優先させてもらい……
「申し訳ないんだけど、この話し合いが終わったら……って言うか正しく解決したら、直ぐにでも一番の被害者である俺のクラスメイトのギャンルのご自宅に行って、事態の説明と謝罪をしてもらいますからね! そして学校にも話が行ってるかも……ってか行ってるはずですから、行ってない場合は説明と解決の旨の説明等を行ってもらいますから!」
「それはそっちでやりなさいよ!」
こ、このババア……舐めた事言いやがって!
殴ってやろうかと拳を握り締めた……その瞬間。
「伯母さんに謝りに行かれると余計に被害が大きくなるから、ワザワザ拒否らなくても行かせませんよ。僕等がそんなにバカに見えますか? 僕がデイジーの家族として常識的な行動を評価して貰ってきますよ!」
そうルディーさんが場を押さえてくれた。
なので話し合いが終わり次第、この場の一人(デボラさん)を除いた面子でギャンルの家に謝りに行ってくる事になった。
俺や父さんは兎も角、多分顔も知らないルドマンさんや自国のおえらいさんではあるウルフ閣下……更にはリュカ陛下の登場に向こうも困惑してしまうだろうけど、こればかりは勘弁してもらいたい。
今回の件は彼があまりにも可哀想過ぎるからね。
さて……
今度こそ本題だ。
一体何をしたくてこうなっているのか?
「“何を”って、そりゃ娘の新生活を始める為よ!」
「ですが彼女の意見よりも別件で難航している様に見えますが?」
「母親の我が儘が酷いからだろ」
皆が思っている共通認識でもウルフ閣下が言うと何故だかトゲがある様に聞こえる。
「我が儘じゃ無いわよ! 私も一緒に暮らすんだから、当然の要求でしょ!」
「それなんだよ……如何して娘の新生活に、母親が介入してこようとしてんだよ!? もうコイツもガキじゃ無いんだから、一人暮らしで良いじゃねーか!」
「ここはグランバニアだぞ! リュカのお膝元だぞ! そんな危険地帯に私の可愛い娘を一人で住まわせる事なんて出来る訳無いだろ!」
「え~……僕、自分の娘には手を出さないよぉぅ(笑)」
えっ!? リュカ様の娘!!
「や、やっぱり貴様が父親か!?」
「だから違ーって言ってんだろハゲ親父! リュカもその件は娘が生まれた時に終わらせた事だろ! 面白がって今の状況で蒸し返すな!」
「あはっはっはっはっ……悪ぃー悪ぃー! ハゲマンの頭皮が真っ赤になるのを見たくなって(笑)」
「こ、この……じょ、状況を考えんか馬鹿者が!」
ち、違うって事ですよね!?
俺が思わず仰天してデイジーさんとリュカ様の顔を交互に見ていると……
「大丈夫だよピパン君。リュカ様は本当に彼女の父親じゃ無いから」
とルディーさんが耳打ちしてくれた。
ほ、本当ですか?
でもデイジーさん……これだけの美人ですよ!?
リュカ様の血が混じってるって言われた方が信憑性が高いんですが!?
「彼女と君に血の繋がりは無いよ。安心して」
更に小声で耳打ちしてくれるルディーさん。
そ、それを信じるのが妥当なんだろう。
……ってか、何で俺と彼女に血縁関係が無い事に安心しろって言ってくれてるんだ?
………………解らない?
何をルディーさんは俺から感じ取ってんだ?
そりゃ……デイジーさんは凄く可愛いけど……
もしかして……俺……
フッと俺の隣で俺の左手を胸に抱き締めているデイジーさんに視線を向ける。
凄い可愛い!
瞳の奥が何時も輝いていて、見詰めていると吸い込まれそうになる。
しなやかで艶やかな黒髪に対し、透き通る様な真っ白な肌が美しく、その感触を求めてしまいそうだ。
あれ……俺……デイジーさんに……恋してる?
す、好きに……なっちゃってる?
い、いや……でも……出会ったばかりだし……会ったのだって昨日ルディーさん越しと、今日のトラブル時だし……
いや……今はそれを考えている場合じゃ無いんだ。
彼女の新生活について問題を解決させないと。
俺は慌てて意識を今後の事に戻す。
リュカ様の悪ふざけのルドマンさん激怒も落ち着いてきた様で、また話し合いが再開される。
「兎も角さぁ……話を元に戻すけどさぁ……お前が出しゃばってこなきゃ万事解決なんだよ! それが解らないのかなぁ? 頭悪ぃーなぁ(笑)」
「このガキ……」
だから如何してアンタは人を怒らせる様な事ばかり言うんだよ!
『娘に一人暮らしをさせれば良いじゃん』って程度の台詞で止めれば良いんだよ!
「わ、私が一緒じゃ無いと……娘だって……た、大変でしょ!?」
「アンタが子離れ出来て無いだけだろが! 彼女だってガキじゃねーんだ! 自分の事は自分で出来るだろうし、それでも不安が残るのなら先に一人暮らしを始めた兄貴と一緒に生活させれば良いだろが! 其奴が妹に手を出すとは思えんし」
「………………お前……本当に……殺すぞ!」
信じられないくらいの殺気をウルフ閣下に向けるデボラさん。
何をそんなに怒らせた?
あまりの殺気にリュカ様に視線を向けて助けを求める。
リュカ様は楽しそうに笑い「その辺にしとけって」とウルフ閣下を窘める。
俺の隣に座ってるルディーさんからは「言いたくて仕方ないのかなぁ? 困った人だ」と小声での嘯く。
何だろうか?
何か意味があるのだろう事は解るのだが、俺には何が起きてるのか……デボラさんには何が逆鱗だったのか解らない。
「デボラ……何でそんなに怒っている?」
とルドマンさんも不思議がっている。
ルディーさんも理由を解っている様子だし、後で教えてもらえるのだろうか?
でも長であるルドマンさんも解ってない事を、他家の俺に教えてくれるとは思えないし……
「ちょっと失言が過ぎた事は謝りますよ。申し訳ございませんでした。でも何度でも言いますが、母親のアンタが一緒に暮らす事を諦めれば、全て解決でしょう。豪邸を建てるにしてもアンタの意見を反映させる必要は無いのだし、そもそも留学するだけの事に豪邸を建ててやる必要性が皆無なんだ。多少難のある物件でも、一人暮らしの善し悪しを体験させてやるのも親心だと思うんだよ」
「お前も一人暮らしをしてみろよ(笑)」
「女の方から潜り込んでくるんだよ! アイツ自分の部屋がゴミ屋敷だから……如何言う親に育てられたんだ?」
マリーちゃんの事だろう。
突っ込み入れられて即座にリュカ様に反撃をする。
こんなコト出来るのはコイツくらいだろう。
「でも……寂しい(涙)」
本当に本心なんだろう……
デボラさんの両目から涙が溢れてくる。
衣装と同じくド派手なメイクだから、流れる涙が黒くてビビる。
そんな瞬間……やっと俺の左手を離してくれたデイジーさんは、黒いけど寂しげな色の涙を流している母親に抱き付く。
「お母さん……大丈夫よ……ルディー兄も居てくれるし、ピパンさんも助けてくれるし……会いたくなったらリュカ様に頼んで、直ぐに帰らせてもらうわ。だから……お願い。私に一人暮らしをさせて」
大きくは無い。
何時もの様に音量はそれ程でも無いけど、しっかり……そして力強く自分の意思を母親に伝えるデイジーさん。
「おいハゲマン……凄げー金が掛かるかもしれないけど、アリアハンのMDに言って、MHをもう一組作って貰えば?」
「MH……あの機械か。リュカよ……お前が口利きをしてくれるのか?」
「何で僕が!? 貴重なモノと引き換えに売ってくれる様に頼めよ、大商人様」
「簡単に言うな! 神が欲しがる貴重なモノって何だ!?」
け、見当も付かないな?
「“神”だけに“髪”を欲するんじゃね? お前の残りの部分を毛根事捧げちゃえよ(笑)」
「何を馬鹿な事を言っとるんじゃ……まぁそんなモノでアレが買えるのなら、全くもって安い買い物じゃわい。わっはっはっはっはっ!!」
とんでもなく失礼な提案であったが、当のルドマンさんが笑っているのだし、この人達には気にするレベルの話題じゃぁ無いのかな?
父さんなんかは一言も発言してないけど、ずっと胃を押さえている。巻き込んでしまって申し訳ないです。
「まぁ頭を下げるのは絶対にしないけども、僕もハゲマンと一緒にMDの所に行って、僕流にだけど口利きしてやろうか?」
「お前流ってのが気になるな。他人が絶対に怒るヤツじゃないのか?」
「さぁ……怒らせる自信は大いにある」
「じゃぁ駄目に決まってんだろが!」
この大人達は、何時もこんな感じの話し合いなのか?
「じゃぁこうしましょうよリュカさん」
一番の大人であるリュカ様とルドマンさんの会話に割り込んできたのは、能力だけはある青二才野郎……ウルフ宰相。
「この話し合いの場を作り上げ、取り敢えず問題解決に導いた栄誉ある責任者のピパンに一緒に行かせて、MHをもう一組作る様に責任を持たせてMDを討伐させましょう」
……そ、それって……俺!?
リュカ様やルドマンさんの視線が集まる中、恐る恐る自分を指さし確認。
周囲の大人全員から無言で首を縦に振られ、とんでもない任務を押し付けられた事を知る。
「そ、そんなの無r「さぁてと! 次は一番の犠牲者たる……え~とギャンル君?だっけ……のご自宅に謝罪の挨拶に行かなきゃなぁ!」
だが心優しい大人達は、話題をギャンルに変えて謝罪行脚の計画を進めている。
唯一の味方であろう父さんまでもね!
ピパンSIDE END
ページ上へ戻る