リュカ伝の外伝
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
高級店
(グランバニア王都:城間地区)
ピパンSIDE
今日は土曜日。
だが部活の大会が近く、学校は休みでも部活は活動中。
年内最後の公式大会だから部員も皆気合いが入っている。
部室が隣のフェンシング部も同日に大会がある為、気合い十分で今日も練習声が聞こえてきていた。
きっと大丈夫。
これだけ毎日努力をしてるんだし、結構な成績を残せるはずさ!
取り敢えず今日の部活動の時間を終えて、帰り支度する。
部室から出ると丁度フェンシング部のギャンルも帰り支度が終わっていたらしく、互いの部室の前で鉢合わせる。
「おう、今帰りか?」
「あぁ……今日は午前中だけだからね。帰ってから自主練……といきたいが、何処かで買い食い決行かな? 腹が減ったよ(笑)」
数日前のデイジーさんの事件以降、俺はギャンルと仲良くなってきた。
元々ギャンルの方にあった謎の蟠りが、リュカさんを始めお偉いさんが押し寄せてまであの時のコイツの名誉回復に動いた事が功を奏し、所謂『アイツ(俺)って悪い奴じゃ無いのかも?』って思う様になってくれたみたい。
俺もどこぞの自称天才宰相とは違い、誰に嫌われてても問題ないって心境にはなれないから、多少にしろ蟠りが消えてくれた事に安心をしている。
八方美人になる気は無いですけどね。
「俺も行こうかなぁ……? ピパンは何食うの?」
「う~ん……そうだなぁ……?」
まだ正式な昼には時間がある中、我々腹ぺこ学生によくある買い食いシチュエーションを妄想し学校内から出る為に校門へと移動してると、最初のチェックポイント……出入り口の校門付近に、見慣れないメタリックグレーの魔道車が停まっている。
車種は……(株)レックスのSUVだ!
アレは高いヤツだぞ!
しかも……最新車じゃないのか!?
GM社長の父さんから聞いているんだけど、軍内部にGMのみでの生産限定車種Hanmmerが大人気で、一般車として売り出して欲しいとの要望があるのだとか……
因みにその要望を一番声高に叫んでいるのが俺の父のGM社長なんだけどね。
自身に魔力が無いから、GM製の本物のHanmmerには乗れない(運転出来ない)から、見た目だけでもHanmmerに乗りたいと、一般企業(今回は(株)レックス) との共同設計・開発・販売をしてもらったそうだ。
見た目は本家のHanmmerを二回り程小さくした感じ。
中身は(株)レックスのSUVを流用。
流用という言葉は悪いが、性能はピカイチなので信頼と安心の高級車。
ほぼ完全に整備されている王都内の道路は当然の如く、王都を飛び出して山や海等へのキャンプ等アウトドアにも最適な6人乗りの車。
正式名は何か型式があって……あぁそうだ『LXH』と呼ばれている。
目の前に停まっている魔道車(まさにLXH)を見て思い出す……後方に程良い大きさで書いてあるからね。
でも俗称があって、それは『Mini・Hanmmer』と呼ばれている。
詳しいでしょ?
最近父さんがこの魔道車を欲しがって煩いんだ。
憶えちゃったよ(笑)
俺だけで無く、その場に居た沢山の生徒達の羨望の眼差しを受け、突如その車のドアは開かれる。
そして中から出てきたのは……ルディーさん!
よく見ると魔道車のフロントに大きめの初心者マークが付いている。
「ル、ルディーさん……如何したんですかその車? ってか免許は取れたんですか?」
「うん。免許は先週取れてね……先んじてコレも注文してたから、昨日届いたんだ」
運転席から降り、自慢気のルディーさん。
そのご自慢の魔道車を子供に興味津々に見られて心底ご満悦な様子だ。何時も以上に笑顔が眩しい!
「その魔道車って最新のM・Hですよねぇ?」
「あれぇ? よく知ってるねぇ……魔道車に詳しいじゃん!」
あぁ……これは解ってて自慢しに来たな。しょうがない……何時もお世話になってるし、自慢話に付き合ってやるか。
「い、良いなぁ……俺も乗せて下さいよぉ」
「何を言ってる! そのつもりで迎えに来たんだろ! 部活(?)も終わって今から帰るんだろ? 昼飯もまだだろ? 奢るよ。食べに行こうぜぇ……僕のM・Hで!」
「……ってワケで済まんなギャンル。俺はこの方に昼飯を集る事になった。今日はこの辺で……じゃぁ」
「お、おう……じゃぁな」
校門で友達と別れ、高級車に乗り込む。
(グランバニア王都:中央地区)
「凄く良い乗り心地ですね。でも良いんですか……昨日納車されたって事ですし、この助手席に一番最初に座るのが俺っで本当に良いんですか? 今付き合っている彼女が怒りませんか?」
ルディーさんの運転は危なげも無く、ゆっくりと落ち着いた安心出来るモノである。
まだ免許を取得したばかりだからと思い、発進時は身構えて力が入ったけど、暫く走行して信頼する事が出来る様になった。
そりゃぁそうか……安心して任せられない人に免許は交付しないよね。
「彼女ぉ~……? 何だい急に? 今僕には居ないけど?」
「そうなんですか? でもルディーさんの部屋って何時も誰かが出入りしてて賑やかじゃないですか。お友達も女性の方が多くて、一人くらいは居るんじゃないのかなって思いました」
「なる程……う~ん、友達は多い方だと自覚してるけど、だからって女友達全員と関係を持つ程、僕だって我武者羅に女性を追いかけて無いよ。それに実家が実家だから、彼女を見つけるのも慎重に見極めないとならないんだ」
「そうか……お金持ちですもんね」
「ピパン君だって他人事じゃないだろう! 君のお父さんは軍務大臣閣下だよ! 国王陛下とも血が繋がっているし!」
「俺の場合は、玉の輿目当てで来ても最終的にはリュカ様が居ますからねぇ……そう言う人間にはいち早く気付いて、恰好のオモチャにされますよ。俺自身の立場も小さくて、群がる女も居ませんよ」
「あはははっ、そうみたいだね! それにもう君には群がってくる有象無象の女共なんて必要無いもんね!」
「ど、如何言う……!?」
「おいおい頼むよ、義理の弟君! デイジーは僕の可愛い妹なんだから、幸せにしてやってくれよ(笑)」
「!!! ……そ、それは……その……(汗)」
運転してるから正面を見ながらの会話だけど、何時もの優しい口調からの優しい指摘。
「ま、まだ……その……告白したワケじゃ……無いですし……その……フラれるかも……ですし……」
「大丈夫だよ。デイジーの事は大体何でも解るけど、間違いなく君に頼っている。君が居ないと、もう生活が傾いちゃう様なレベルで君の存在に依存している」
「い、依存……ですか?」
「そうだね。言葉は悪いかもしれないね」
「好かれているワケでは無いのですか……俺?」
「そんな事は無い! デイジーは今、君の事が好きで仕方に状態になっている!」
「そ、そうですか?」
「う~ん……僕の言葉選びが悪かったなぁ。もっとしっかりじっくりと説明したいな……」
そう言いながらルディーさんは運転席から周囲の建物を物色する。
「あの店で良いか」
そして彼的な基準で決めた店の近くの駐車スペース(中央公園沿いにあるスペース)に、ご自慢の新車を駐車させる。
グランバニア王都内やサラボナの大きめの都市で有名なチェーン展開しているステーキ店だ。
店名は『それなりステーキ』と言い、値段的には“それなり”で味は“十分”、更に学生の俺から言わせてもらえれば量が“これだけ?”かなって感じの店だ。
家族連れで来る様な店だし、学生が学校帰りに友達と立ち寄る店では無いから、昼飯にこの店を選んでくれた事はラッキーだと感じる。
部活上がりで腹減ってるから、遠慮はするつもり無い!
「お腹空いてるだろうから遠慮はするなよ」
「するつもりなんて端っから無いですけど、唐突に何ですか?」
何かあるのかな?
「いやぁ~……『それなりステーキ』はサラボナ資本の店だから……さ!」
「……? サラボナ資本? 何か関係ありますか?」
解らないなぁ?
「僕と君では立場が違うからね。僕はサラボナの発展を考えるルドマンの孫だし、君はグランバニア派のリュカ様の従兄弟になるワケだし……」
「はぁぁ!? そ、そんな小難しい事を考えて生きてませんよ!」
「そ、そっか……」
「真面目だなぁルディーさんは! 俺なんかそんなに国政(?)に関わるつもり無いですから、そんな“資本”がとか“国家の発展”がとか、別次元の事柄ですよ。まぁ父さんに憧れてるんで軍人にはなりますげ、それこそ軍務大臣にでもなれないとこの国では軍人が政治に関われないから、そこまで考えなくても大丈夫なんですよ」
「だったら安心だ」
笑顔でそう言うと店に入っていく。
俺も後追い、ステーキの香り広がる店内へ……
さぁて決戦だ。
食うぞぅ!
ピパンSIDE END
後書き
このエピソードは2024年6月5日に投稿しました。
ページ上へ戻る