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リュカ伝の外伝

作者:あちゃ
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誰も悪くないけどトラブルが発生する事はある

(グランバニア王都:中央地区)
ピパンSIDE

裏路地で困っているのはデイジーさんだった!?

つい昨日……
サラボナから来て生活してるルディーさんに紹介された、来年度からグランバニアで暮らす事になった彼の従姉妹のだ。

昨日の印象で思ったのは、彼女は極度の人見知りだ!
多分、本当に家族(あの派手なお母さん?)とはぐれてしまい、困っていた所に本心から助けようとの気持ちでギャンルが声をかけたんだろうけど、アイツの顔が怖い所為で怯えて逃げ出そうとした瞬間に手を反射的に捕まれて今の状況なんだと思われる。

「すまんが手を離せギャンル!」
双方を助ける為に俺は慌ててギャンルの手を振り解いた。
ギャンルの手を叩く様に離させ、デイジーさんを庇う様に俺の背後に回り込ませ、両手を広げて二人の間で壁になる。

「な、何だよ……ピパン!? お、俺は別に何もやってないぞ!!」
「う、うん。それは解ってるから……だから落ち着け」
元々コイツは俺の事を嫌っている。

そんな俺が現れ女性を自分(ギャンル)から守ろうとしてる。
多分……いや絶対に気に入らないだろう。
なるべく早く状況説明をして落ち着かせないと……

そう思いながらデイジーさんの事も気になってるので、チラリと振り返り見る。
色んな事が一気に襲いかかり恐怖に陥ってるが、如何(どう)やら俺の事(顔)を憶えていて思い出したみたいで、突然涙を大量に溢れさせて……

「た、助けてぇ……ピ、ピパンさぁん……怖いのぉぉ!!」
と俺の背中に抱き付き泣き出してしまった。
コレは拙い……

「な、何だよ!? お、俺……何にも悪い事……し、してねーぞ!!」
解ってる。俺はその事を十分に理解してる。
だが事態が困った方向へ動き出している。

普段あんなに声が小さいデイジーさんだが、恐怖の所為だろうけど泣き声が尋常じゃ無いくらい大きく、人気の少ない裏路地に野次馬が集まってきた。
そしてこの状況……

誰が見ても美女(デイジーさん)を襲ってる不良(ギャンル)……そして颯爽と助けるヒーロー()って構図が出来上がっている。
良心から行動してたギャンルの為にも、デイジーさんには当然ながら、お集まりの野次馬方にも理解をしてもらわないと……

って考えてたんだけど、
「お、俺……何も悪い事してねーから!!」
と叫んで、ギャンルが逃げ出してしまった!?

あぁ拙いよ……
解るよ……気持ちは解るよ。
周囲からの“不良野郎が女の子に襲いかかった。懲らしめてやれ!”的な雰囲気を感じる現状……

逃げ出したいし、実際に逃げ出しちゃったけど……
そうなると説明も出来ないし、完全な事態の解決も出来なくなっちゃう!
とは言え、俺の背中に縋り付いて泣いてるデイジーさんを放置(もしくは一緒に連れ)して逃げ出したギャンルを負うワケにもいかない。

後日……なるべく早くに(ギャンル)や家族(多分、今日の事を自ら報告するだろう)……更には学校(学校の紋章の入ったフェンシング部のユニフォームを着てるから周囲に知られてる)に俺の方(と言っても父さんに頼む事になる)から状況説明をしなければ。

特にギャンルの家には菓子折を持って行って、咄嗟だったとはいえ事態をややこしくしてしまった事を詫びないと。
遅くなると無駄に風評被害が増す可能性もあるから悠長な事は言ってられない。
だが今は俺の背中で泣き喚くデイジーさんだ。

俺は優しく声をかけながら……
「もう大丈夫ですから……デイジーさん。もう怖い事は無くなりました。俺が居ます……一緒に帰りましょうね」
と言って正面から顔を見れる様にして落ち着かせる。

彼女も「ヒック……ヒック!」とまだ泣きながらだが、落ち着こうと頑張っている。
何時までもこの場に居るワケにもいかないし、取り敢えず公園のベンチまで行こうと説明して動き出した……だが恐怖が完全に拭い去り切れてない彼女は、俺の左手を握り抱きしめる様にご自身の胸部へ押し当てる。

他意は無い。
解っている……そんな事は解っているのだけれど、彼女の豊満で柔らかい感触が俺の男を刺激する。
ちょっと早くベンチに座りたい。歩きにくいであります!



(グランバニア王都:中央地区・中央公園)

野次馬の人集りから逃げ出して、中央公園の“中央公園東北体育館側”の一番近いベンチに座って取り敢えずの休息をとる。
デイジーさんからは何があったのかを通常の小声で説明してもらい、先程の状況までを推察出来た。

で当然御如く、昨日の続きで引っ越し先を探してる内にお母さん等とはぐれてしまい、ギャンルに罪を擦り付けてしまった様だ。
しかも腹立つのが、お母さんが我が儘を言って現状他人(ひと)が住んでる家に上がり込もうとかして、それらの行為をウルフ閣下(今日は随伴したらしい。ルディーさんは今日は学校を休めなかったらしい)に叱られ、互いに喧嘩している内にはぐれてしまったらしいんだ!

一体何をやってるんだあの人達は!?
誰の為の引っ越しか!?
何の為に家を探してるのか!?

そういう事を思い返して行動してもらいたいよ!
空も薄暗くなってきて、風が冷たい時間になってきた。
俺は申し訳ないと思いながら、着ていた剣術部のユニホームを彼女に着せて何時までもここに居られない旨を伝える。

多分この周辺をお母さんやウルフ閣下が探しているだろうから、見つけてもらえるのを待つのが良いのだろうけど、寒さで風邪でもひいたら大変だし、魔道人員輸送車(バス)に乗って城まで帰ろうと提案する。城内にならルディーさんの部屋もあるし、最悪リュカ様に頼る事も出来る。

デイジーさんの手を引き立ち上がって一番近くの魔道人員輸送車(バス)停を探す……
すると、
「デイジー!!」
と女性の声が。

振り向くと当然デイジーのお母さんが駆け寄ってきていた。
昨日とは別のド派手な衣装を身に纏い。
側には何時も通りに澄まし顔のウルフ閣下もいる。(何か苛つくなぁ!)

「ピパン……何してんだお前?」
お前は何してたんだよ!?
そう言いそうになったけど、今は我慢をして経緯を説明する。

「そ、そうなのね……ありがと」
ド派手なお母さんからは一応の謝辞。
その彼女(お母さん)も寂しかったんだろう……

俺からデイジーさんを引き剥がし、自らに抱き付かせる様に引き寄せている。
のだが、今回の事がかなりのトラウマな彼女(デイジーさん)は、俺の手を離せないで居る。
勿論その手が胸に押し当てられている状況で。

魔王の如き眼光で「お前、何処触ってんだコラ!」と小声で脅してくるお母さん。
本気でビビる視線ではあったが、如何する事も出来ない俺は「仕方ねーだろ!」と小声で応戦。
それでも俺から引き剥がそうと試みるから、俺はイヤイヤだがウルフ閣下に視線を向けて……

魔法(ルーラ)を使ってもらえませんかね!? 俺もそれで帰りたいのですが!?」
と気付いて無いワケじゃないけど状況を楽しんでいる宰相閣下を促した。
ホント……ムカつくコイツ!

「もう良いのか? 右手も押し当てれば?」
「早く魔法(ルーラ)仕えよ!」
苛つく野郎の苛つく台詞に思わず敬語を忘れてしまう。

何でルディーさんはコイツを尊敬してるんだ!?



(グランバニア城内:ルディー宅)

本来ならデイジーさん等は王都の高級ホテル“王国ホテル”のスイートに泊まっていて、部屋探しが終わったら(一段落)そこに帰るのだが、今日は色々な事が巻き起こり一旦城内のルディーさん宅に集合してる。

と言うのも、色々と話を聞いてきた俺からの提案で、早急に今回の件(デイジーさんの部屋探し)を終わらせる事に動き出そうと思い立った。
だから、申し訳ないけどもルディーさんの部屋に多数の人物を招集して貰った。

これで話が纏まれば良いのだが。

ピパンSIDE END



 
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