リュカ伝の外伝
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面倒事は早めに解決させろ!
(グランバニア王都:中央地区・中央公園)
ルディーSIDE
リュカ様が言った通りだ。
今回の相談料は高く付く……
全くもってその通りだ!
ドーナッツなんかなら幾らでも買うさ!
でも今じゃ無いでしょう!
今はさぁ……取り敢えずの一段落として、一旦帰りましょうよぉ!!
この公園(中央公園)も作る前から魔道車の開発の事を念頭に置いて計画したんだろう……
今居る“中央公園南側”の入り口だけに限らず、他の15カ所くらいある入り口にも、魔道車を駐車する為に用意していたかの様なスペースが存在する。
その駐車スペース(仮)にP・P・Hを停めた社長は、ワザワザ魔道車から降りて、降りる気配を見せない僕に気付かない態度で『またマイド買って来いよ。今度は一人1個じゃなくて、何種類か買ってこい』と言い、僕を車外へと追い立てる。
社長はそのまま公園内に入っていくと、“南側噴水”と呼ばれる噴水の周囲に配置されているベンチ(公園入り口から左の方にある)に座り噴水の周囲で活動をしているストリートミュージシャンを眺めている。
チラリと僕を見て『早く買ってこい』と圧をかけてくる。
これはアレだな……
社長もザルツ君の存在に気付いているな。
くぅ……
アイツ(ザルツ君)タイミング悪すぎだろ!
先程は社長と同じ物を購入したが、今度は自分が食べたい物を買う。
『エンジェルフレンチ』とコーヒーだ。
社長はどちらかというと紅茶党(あくまでどちらかと言えばであり、どちらも飲む)だから、相談する身として気を遣い同じ物を買ったが、今回は自分の好きにする。
とは言え一応社長への飲み物は紅茶で、ドーナッツもカン・デ・リングを3個程含み合計15個くらい購入。
好きな種類のドーナッツを腹一杯になるまで食べて下さいって感じですよ。
因みにマイドは種類が多くてどれも美味しい。
公園の社長が陣取ったベンチへ……
飲み物を渡して僕も社長の右隣に座る。
二人の間にはマイドの袋に入った大量のドーナッツ……
僕の座った位置からだと社長が邪魔になって公園内の奥(南端に居る僕等より奥)のザルツ君に気付かれにくい……と計算している。
今日はホント……もう終わりにしたいんだ。
きっと彼らに気付いてる社長には悪いけど……
「お前がNTRった彼女って、向こうでザルツの側に居たモスグリーンのミドルスカートを履いた娘?」
ゴソゴソと右手でドーナッツを袋から取り出しながら、顔は正面の噴水前で演奏を披露している男性4人組に固定して視線を外さずに訊いてくる。
ちぃっ! やっぱり気付いてたんだな……
「はい、そうです。彼女がメリーさん……ザルツ君の幼なじみで、双方の両親共に認められてる彼女です」
「なる程……でも言う程ブスじゃないじゃん」
「僕はメリーさんの事をブスと表現した事は無いです。あくまで僕の趣味では無いってだけ! それに内面は凄く素敵な女性であると断言してます!」
「なる程……解った。すまんな……そんなに怒るなよ」
「別に怒ってませんけど、僕の大事な友達ですから……」
「うん……でもアレだよ」
「……ドレですか?」
「お前……大魚を逃したかもよ(笑)」
「そ、それは……如何言う意味ですか!?」
「あの娘ねぇ……もっと大人(成長)になったら結構な美人になる要素を持っている。女性は化粧でも激変するしね!」
「そ、そうなんですか!? ……い、いやいや! そんなの関係ないですよ!! 僕は他人の女に手を出さない(でいよう)主義ですから!」
「あははっ、でもお前「今回の事を蒸し返さないで!」
話を変えないと……
「と、ところで社長は……結構早い段階で、彼等(ザルツ君とメリーさん)が公園内に居る事に気付いてたんですか?」
「当然だろう……車を運転してたんだ。周囲の状況は常に認識しておかないと運転は危険だよ。公園内でボール遊びをしてた子供が、誤って道路にボールを出してしまい、それを無邪気に取りに行く……それに気が付かず道を走っていて目の前に子供が飛び出してきたら如何する?」
「……あ、危ない……ですね!」
「危ないじゃ済まされない。魔道車みたいな大きな金属の塊が、凄い速度で小さな生身の子供(大人だとしても)に衝突するんだ……子供は死んじゃうよね」
「べ、勉強になります……僕も現在免許を取りに教習所へ通ってますから」
「そうか……まぁ、まだ勉強中って事なら、正に今頑張れよ。僕も応援してるからさ」
「あ、ありがとうございます」
「ところでずっと僕を壁にしてザルツ等から隠れる様にしてるけど、どうせバレるよ。寧ろ丁度良いから、お前から声をかけてくれば?」
「……嫌です」
「嫌ですか? 何故?」
「今日は一段落って事で終わらせたいんです」
「でも面倒事は早々に終わらせるに限るよ」
「向こうが気付いてこっちに来ちゃったら……なんとかメリーさんに話を持ちかけますけど……僕からは行動したくないです。勿論“今日は”って意味ですけど」
「じゃぁ尚更だよ。向こうから近付いてくるからね」
「そうですかぁ~……僕の予想では、二人ともこちらの“中央公園南側”から入ってきて、彼が写真を撮りながら公園内を北に進んでいると思われますから、僕さえ社長の影に隠れていれば気付かず終わりだと思いますけどね」
「言い切るねぇ」
「僕も馬鹿じゃないですからね」
「賭けるかい?」
「……何を賭けます?」
「う~ん……後腐れなく金を!」
「良いですよ。でも常識の範囲内の金額でお願いします」
「100Gで如何だい?」
「……妥当……ですね!」
「じゃぁ決まり(笑)」
うん。決まりだ!
僕は姿を見られない様にしていれば良いだけだし、社長の事はあの二人は知らないだろうから目立つ動きをしても問題ないだろう。
「言っておくけど、勝負事なんだから僕だってジッと自然な流れに身を任せてはいないよ?」
「……そ、そうでしょうけども……あの二人は社長の事を知りませんからね。社長から声をかけても……」
そこまで言ったが、社長は食べかけのドーナッツを一気に頬張ると、残った紅茶で押し流して気にする事なく立ち上がった。
そして目の前で演奏を披露して丁度区切りの付いた4人組のMG担当男性に声をかける。
「なぁ少年。申し訳ないんだが、そのMGを弾かせてもらっても良いだろうか? このドーナッツを全部あげるから」
と頼み込む。でも僕のドーナッツでもあるんですが?
「え!? あ……あぁ……べ、別に今少しなら良いけど、オッサンにギター弾けるの?」
「大丈夫だよ。チョ~得意だから(笑)」
本当の事だから当然なんだけど、知らない人はビックリしてる。本当にドーナッツを全部渡しちゃうんですね。
そして社長はMGを構え奏で始めたのは……『タマシイレボリューション』!?
当然だが社長の弾き語りだ!
かなりの音量で演奏は始まり、一切音量は下げずに名曲が響き渡る。
プリ・ピーが最近発表したばかりの曲だ……
MGを貸してくれてる4人組も、1人だけ知っていた(つまりは彼もプリ・ピーのファン)だけで他の3人や周囲の人々と同じで、名曲に聴き入っている様子が窺える。
だが勿論……例外も居る。
その一人が僕であり……更に言えば、今は気付かれるワケにいかない存在であるザルツ君とメリーさんだ。
……してやられた。
人影や物影に隠れていれば気付かれない距離だが、聞き覚えがある名曲が聞こえてくれば、そちらの方へ意識と視線が向かい、何がある(居る)のかを気付いてしまう程度の距離まで近付いてしまう。
そうなれば人影や物影など無用の長物。
噴水前で『タマシイレボリューション』を弾いてる男性に近付き、横目で少し離れたベンチに座っている僕に気が付くのは時間の問題。
実際にザルツ君は僕を見るや、少し驚いてから僕の座るベンチへと近付いてきた。
一緒の彼女は複雑な表情をしている……
僕も気分は同じだが、今はザルツ君に気付かれてはならないので、驚いた顔をして誤魔化している。
彼は素直だから、多分僕の顔演技でも押し通せるだろう。
「……やぁ、ルd「シッー」
まだ『タマシイレボリューション』が聞こえる中、話しかけてきたザルツ君に、曲が終わるのを待つ様に人差し指を立てて自分の口に当てながら“黙る”ジェスチャーで応える。
暫くして社長の演奏が終わる……
MGを返すや、あまりの演奏の巧さに4人組から矢継ぎ早に質問を浴びせられる社長。
だが軽く自分が何をやってる人間か(プーサン社長がって意味)を説明して切り上げる。
そうやって僕の居るベンチへと戻ってくると、今気が付いたかの様な演技でザルツ君とメリーさんの存在に驚いてみせる。
ワザとらしくないのが余計にムカつく。
「おや、誰だい? ルディーの友達かな?」
「そうなんですよ社長。ご紹介します、彼は大親友のザルツ君。そして彼女はザルツ君の幼なじみのフィアンセであるメリーアンさん。彼等が近くへ来るまで僕は全然気が付かなかったけど、偶然にもこの中央公園でデートをしていたみたいです」
「なる程……偶然かぁ……在るんだねぇ」
「あぁ、今度はザルツ君に紹介しないとだね」
こっちは本当に初見だからちゃんと紹介しないとね。
「こちらの男性はプーサン社長。僕等の女神であるプリ・ピーの所属する芸能事務所の社長で、彼女等(プリ・ピー)をプロデュースしている神の様な存在だ(時折悪魔になる)」
「こ、これは! 貴方でしたか……あの数々の名曲を世に生み出してきてるのは! 何時も感動を頂いております! 遅くなりましたが私はザルツ。ザルツ・ブールグと申します」
プリ・ピーの生みの親と言う事で感動しながら頭を下げるザルツ君。
「は、初めまして。私はメリーアン・モルトと申します。ザルツ経由でファンになりました。先程、社長さんが奏でた『タマシイレボリューション』も大好きな曲の一つです!」
身体全体を震わせて感動を伝えようとしている。
そんな会話が聞こえたのだろうか……
先程の4人組や近くに居た多分プリ・ピーのファン等の数人が社長へ近付こう(物理的にも精神的な意味合いも含めて)としてくるのが伝わってきた。
「う~ん……ここじゃ少し会話しにくいかもねぇ? もう少し公園の奥(ここからだと北の方)へ行って、座れる場所でも探そうか?」
別にもうこの場で解散しても良いんじゃないですかねぇ! 僕はそう感じてたけど、他は違う考えなそうなので、3人+僕の一団は公園内を北へと移動する。
プリ・ピーの事や音楽の事を色々聞きたがっている4人組やその他の方々は残念そうに僕等の移動を眺めている……
2人程、何処までも付いてくる男が居たが、社長が「悪いけど公園でノンビリしたいんだ! ストーキングするのは止めてくれ。行きたい方向が同じだと言うのなら僕等が目的地を変えるから、君等は各々好きなとこに行ってよ」と少しだけ怖い声で言い放ち、彼等から離れる事に成功する。
プリ・ピーに関わらない僕とザルツ君の出会い等の会話で、ここまでの移動中の繋ぎにはなったけど、ストーカー男2人組の所為で結構な移動を余儀なくされた。
折角便利な魔道車という文明の利器にお世話になってるのに、停めてある場所から離れてしまい、結構面倒な状態になってしまった。だから早く帰りたかったのにぃ……
ルディーSIDE END
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