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リュカ伝の外伝

作者:あちゃ
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トラブルだけとは限らないが小さい時の方が解決しやすい

(グランバニア王都:中央地区・中央公園)
ルディーSIDE

予想外に長めの移動時間のお陰でザルツ君にもメリー(メリーアン)さんにも社長の性格が知れ渡ってた。
まぁつまり……社長とリュカ様が同一人物だとは思ってなくても、今後の二人の言動(遣り取り?)が同じになるだろうって事。
ザルツ君は真面目でプライドが高いから、社長にオモチャにされやすい。

それでも社長の魅力やプリ・ピー(プリンセス・ピープル)の話題で、ザルツ君もブチ切れる事(社長もそんな怒る様な事は言ってないしね)なく僕等の仲は深まって行く……表面上。
そう……僕等は皆、他人(ひと)(この場に居る)に言えない秘密を抱えて生きているのだ。

格好付けて嘯いたが早く帰りたいって僕は思い続けてるだけです。
だって社長は、今にもザルツ君だけを引き連れてこの場を離れ、メリー(メリーアン)さんと二人きりで話す環境を作ろうとしてるもん!

周囲には不特定多数が居るので、この場で今回の件の僕等側((ルディー)+ 彼女(メリーアン))の事を話し合わせようとは考えてないけど、社長が中人として僕等が話し合う事が出来る日時と場所を確保して情報を共有する事は出来る。

僕としてはそれすらも後日にしたい先送り思考発動中なんだけど、社長は終わらせられるのなら今日中に済ませたい考えでいるみたいだ。
僕もその方が良いって事は理解してるけれども……

「お腹すいたなぁ……」
突然……
本当に突然、社長が空腹を訴え出す。

何だよ!?
さっきのドーナッツ……全部あげないで何個かは自分で食べれば良かったじゃん!
イラッとさせられる言動……だが、間違いなくコレはワザとだ。

「おいルディー……金を出せ」
この場(僕等4人)の中では見間違える事なく最年長である社長が、相対的に完全に年下である僕に金を無心する。
このシーンだけピックアップすると最悪の大人だ。

「100(ゴールド)ですね……はい」
でも僕は抵抗などせずに直ぐに自分の財布から100(ゴールド)札を取り出し社長に手渡した。
これはさっきのギャンブルでの負け分だ……僕が賭けで負けた分のお金だ。

でもそんな経緯を知らないザルツ君とメリー(メリーアン)さんには、大人しく素直で可愛い若者の“(ルディー)”からお金を(たか)っている悪い大人にしか見えない。
社長を心の底から尊敬する僕には複雑な気分だ……特に今は『ザマァ!(笑)』って感情が優先されるから。

「ザルツ……ここから中央公園の東にある“中央公園東商店街側”出入り口で、何か食う物を買って来いよ。金は……ほら、100(ゴールド)やる。お前のチョイスで食い物と飲み物を買ってこい……お前のセンスが試されるがね(笑)」
パシリにセンスもあったもんじゃないだろう……

そうは思いながらも、これまで(ザルツ君が社長と出会ってからの事)の言動で、何を言っても無駄なんだろうと悟ってるザルツ君は、社長から100(ゴールド)を受け取り僕に申し訳なさそうな顔を向けてから、指定の“中央公園東商店街側”へ向かう。

社長は普段からあからさまに男女間に贔屓感情を入れる人なので、この短時間でも理解出来ているメリー(メリーアン)さんは彼氏であるザルツ君と離れ離れにさせられても、そのことに関しては気にする素振りも見せる事はない。

どちらかと言えば僕に対しての方が対応に困っている感は否めない。
“まさかこの場で話題に出さないと思うけど、彼(ルディー君)と一緒に居るのは気まずい
”って感じだろう。
だけどね……僕の方がもっと気まずいんだよ。
社長からの圧が強すぎてねぇ……

「……ゴ、ゴホン! メリー(メリーアン)さん……じ、実は話しておきたい事があるんだ!」
「えっ!?」
二人きりになってからなら兎も角、まだこの場には社長と言う完全に今回の件に関係ない存在のが居て、それなのに真美やら話を振ってきた事に大きな動揺をしてる。当然ではある。

「さ、昨晩の事……僕等はちゃんと話し合っておいて、結論というか今後の方向性を明確にしておいた方が良いと思うんだよね! だ、だから……「ちょっとまって!!」
意を決して僕は話を進め出す。だが当然の如くそれは制止される。

「わ、私も……その気持ちはあるわ。ただちょっと……今じゃ無くても……って感はあるけど」
そこは同意します。
僕だって今日は一晩ベッドに潜って熟考したい。

「で、でもね……それ以上に今する話じゃ無いと思うのよ! だ、だって……その……無関係の社長さんが……」
「うん。無関係な他人(ひと)が居るね。だからさ……今話したいのは、さっき言った今後の方向性とかの事を話し合いたいって事なんだ……で、何で今この話題を出したかと言えば、話し合いの内容が内容だけに他者が絶対に居ない(来る事の無い)場所じゃないと拙いよね」

「そ、それは……そうだけど」
「うん。でね、もう一つ問題があって……それは僕達が二人きりになるって状況なんだ」
メリー(メリーアン)さんも感じてはいたみたいだ……一瞬だが視線が僕の股間に集中する。まぁ当たり前か。

「だから……このプーサン社長に立ち会ってもらおうと考えている」
「はぁ!? ちょ……何言ってるの!! い、嫌よ! この問題は私達のプライベートの事なのよ! そ、それを他人に……それに誰にも言わないでって、言って言ったわよね、私!?」

「言ったよ。言ったし理解してるよ! でもプーサン社長はこの世で一番信頼出来るし、その手の相談をするのに打って付けなんだ!」
「“打って付け”って……貴方(ルディー君)が彼(プーサン社長)を信頼していても、それは私には関係無いじゃない! ちょっと……困るわ。幻滅してます!!」
困ったな……凄くご立腹でらっしゃる。

「まぁまぁお嬢さん。落ち着きなさい」
「お、落ち透けませんよ! 部外者は黙ってて下さい!」
本来ならこのタイミングでの部外者(社長)の発言は困り者だが……今は違う。

「おいルディー。立ち上がって死角を作れ」
突然の指示……だが僕は言われるがままに立ち上がり、社長の右横に立ちそちら方向からの死角を作り上げる。

メリー(メリーアン)ちゃんももう少し近付いてくれるかな?」
そうやって僕とメリー(メリーアン)さんで小さな死角(空間)を作ると徐に社長は眼鏡と付け髭を外した。つまり変装を解き社長から王様に姿を変えた。

「………………っ!!」
確実に叫ぶ事が解ったから、寸前ではあったが事前に僕は左手でメリー(メリーアン)さんの口を塞ぎ声を漏らさせない様にする。

効果はあった。
リュカ様も周囲に気付かれてない事を素早く確認(認識?)すると、また手早く変装を戻してプーサン社長へと戻る。
それを僕も確認して、先程までと同じように社長の右隣に腰を下ろした。

色々衝撃な出来事に立ち尽くすはメリー(メリーアン)さん。
そんな呆然としている彼女に、社長と陛下の呼び間違いや、当然だが他言する事の危険性を説明する。如何してこういう事をしているのかは今後理解していってもらうつもりだけど、兎も角プーサン社長って人物が今回の中人として妥当であり、トラブルの無い解決に必要ならざる人物である事を伝えた。

「出来るだけ早くに話し合いをするべきだし、その為の場所は僕の事務所……つまりGEO(グランバニア・エンターテインメント・オフィス)ビルのスタジオ内が良いと思うんだけど……そこも提供するから、今この場で日時を決めちゃった方が良いんじゃ無いかな?」

「そ、そうですね……ザルツ君が戻ってくるかもしれませんしね」
「いやぁ……“中央公園東商店街側”までも結構な距離があるし、センス溢れる買い物もしてくるわけだからアイツの方はまだ時間が掛かると思うよ。でも早く決めて、別の事をお喋りしながらアイツを待とうよ。その方が気持ちも落ち着くだろ?」

「そ、そうですね……メリー(メリーアン)さんは何時頃が都合良いの?」
「……わ、私的には……明後日……の仕事終わりなんて都合が良いかも?」
「“仕事終わり”って事は……」
「18時30分には職場を出れます」

「じゃぁ19時くらいかな?」
GEO(グランバニア・エンターテインメント・オフィス)のスタジオって、あの城前南通にある三階建てビルよね? う~ん……職場から30分で行けるかしら?」

「別に何時でも良いじゃん。僕が責任もって……ってか、あのビルの責任者だし、明後日の18時には居る事にするよ。早く来ても良いし、ドタキャンをするワケじゃ無いんだったら、何時まででも待ってるよ」

「時間的に何か食べ物でも用意しといた方が良いですね」
「……これから真剣な話し合いをするのに!?」
「いや、そうじゃなくて……言い訳用に」
「“言い訳用”?」

「僕は学生だし、時間が自由になる。そんな暇人が町中を散策してたら、偶然にも仕事終わりの女友達に会って『丁度良いから近くで何か食べていかない?』ってなって、その辺の店で買い食いして帰る……的な状況を訊かれたらザルツ君やご家族には説明して、その日の夕飯というアリバイを作っておく」

「た、確かに……二人きりで会ってる理由や、その時間何をしていたかを答える為に口裏を合わせる必要があるわね」
「うん。だから食べる物も店舗内での飲食限定は回避するね。う~ん、そうだなぁ……ハンバーガーなんて如何(どう)かなぁ? “B・K(バーガー・キングダム)”なんて如何(どう)かな?」

「駄目よ!」
「何で?」
「私の職場近くにB・K(バーガー・キングダム)が無いの」
「あぁ……それじゃ駄目だねぇ。因みに如何(どん)な飲食店がある?」

「ハンバーガーなら“ヤッテリア”なんて如何(どう)?」
「ヤッテリアか。 良いねぇ……サラボナ資本のバーガーチェーン店だね」
「……? 何でサラボナ資本の店だとルディー君が嬉しいの?」
「あ、いやぁ……一応サラボナは故郷だからね」

「……其奴のジジイがサラボナ通商連合のトップなんだよ!」
「サ、サラボナ通商連合の……? そ、それって凄っい(すっごい)お偉いさんじゃ……え? 国のトップがお祖父様?」
「な、何でバラしちゃうんですか社長!?」

「僕だけ正体をバラさなきゃならないのが不公平だから! 元々はお前の問題事だったのに!」
「だ、だからって……周囲に知られて僕が誘拐やテロのターゲットにされたら如何するんですか!? リュk……ゲフンゲフン……社長のお子様達みたいに、僕は自分一人の身を守る事が出来ない軟弱好青年なんですよ!」

「お前が手を出した親友のフィアンセ次第だろ!」
言われて視線をメリー(メリーアン)さんに向ける。
「い、言わないわよぉ!」
まぁ……大丈夫だろう。

ただ……僕の財産(現状はお祖父様)に目が眩んで、ザルツ君から僕に乗り換えられても困るんだよな。
言い続けてるが彼女(メリーアンさん)は僕の趣味じゃないんだ。
メリー(メリーアン)さんがそう言う心の汚れた人物で無い事を切に祈る!



そうこう会話を続けていき僕も当然だが、何よりもメリー(メリーアン)さんが落ち着き心配事(例の問題ね)の重さが軽減したみたいで、何時もの明るい笑顔で笑い合えている。
良かった……

「お待たせしました!」
そんな楽しそうに談笑してる中に、そこそこ大量に食べ物を買い込んできたザルツ君が帰ってきた。
買った物の袋を見ると……そこには“YATTERIA(ヤッテリア)”とロゴが書かれてる。

「おいおい……よりによってヤッテリアのハンバーガーを買ってきたのかよ……センスねーなぁ!」
「ヤ、ヤッテリアの何処がセンス無いんですか!? 美味しいじゃないですか!」
「そうだそうだ。ヤッテリアは美味しいぞぅ!」

「馬鹿野郎……資本がサラボナなんだから、儲けがサラボナにも流れちゃうだろ! 実家が流通関連の商売して成り上がってんだから、そういう事にも留意しろよ!」
「そ、そんな事まで考えませんよ……と言うか、よく私の実家がブールグ商会で在る事に気付きましたね? 自己紹介でフルネームを言っただけなのに」
確かに……ザルツ君はリュカ様と会った事が無いって建前だから、少しだけ不自然かも!

「お前のボンボンっぷりは、事前にルディーから聴かされてきてる! PONY(ポニー)の店舗で、MSV(マジック・スチール・ヴィジョン)が気に入って翌日にパパにお強請りして買って貰ったんだろ? それ……フルセットだと結構な金額になる物だろ? 僕もプリ・ピー(プリンセス・ピープル)の為に購入したけど、一応は経費として落とせるから僕にとってはなんとかなるけど、お前みたいな個人だと……」

「ボ、ボンボンって……き、君(ルディー君)はそう言う目で私の事を見てたのかい!?」
「そ、そう言うつもりは無いよ! でも事実じゃんか!? それを話しただけで、その他の付随してる感情は社長のモノだよ。僕を睨まないでくれ(笑)」

「それにだ……あそこ(中央公園東商店街側入り口付近の飲食店)でハンバーガーなら、“マス・バーガー”だってあるじゃんか!? マス(マス・バーガー)の方が旨いし!」
「た、確かにマス(マス・バーガー)は美味しいですけど、微妙に価格が高いじゃないですか!?」

「馬鹿野郎! 今回はお前の金じゃねーだろ! そんな時に金額を気にしてんじゃねーよ 成金家庭のボンボンだなぁ……」
「あ、貴方(プーサン社長)は失礼な人ですね!」
「そうだそうだ、失礼だぞ! ヤッテリアの方が美味しいよぉ!」

「な、何なんだ君(ルディー君)はぁ!? 今はそれどころじゃないだろ!」
「そうだ、それどころじゃない! 皆して僕の故郷のサラボナを、サラボナ資本の店で買い物をして盛り上げようぜ!」
「馬鹿者! 僕等はグランバニア人なのだから、内需を発展させる事に尽力するべきだ!」

「こういう時は女性の意見を取り入れるに限るよね。僕の女性絡みで何かあった時に頼る師匠が言ってたよ。だからメリー(メリーアン)さんは如何(どう)思う?」
「……さぁ? 誰が儲かるとか、何処の資本だとかは、私にはイマイチ解らないけど、買ってきたハンバーガーは冷める前に食べるのが一番美味しいわよね。そして一番美味しいタイミングで食べるのが、一番得をしているって事だと思うわよ」

そう言って彼氏(ザルツ君)の手からハンバーガーの入ってる袋を奪い、中から自分の好みのハンバーガーを取り出す。
そしてそのハンバーガーから梱包を外してパクり!

美味しそうに咀嚼をして、別の袋に入っていたドリンクを飲む。
Mサイズのカップに蓋がされておりストローが差し込まれている為、中身が何の飲み物かは解らない。だが……

「おいおい何でオレンジジュースなんだよ!? ハンバーガーにはコーラだろ! 普通は炭酸飲料のコーラ(ミタ・コーラ)が常識でしょうに……はぁ、ボンボンだわぁ(笑)」
と……

ルディーSIDE END



 
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