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リュカ伝の外伝

作者:あちゃ
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良い真実と悪い真実・良い嘘と悪い嘘

(グランバニア王都)
ルディーSIDE

プーサン社長の運転で(プリ)(ピー)(ハンマー)快適な乗り心地を満喫する事10分ほど……
ここはグランバニア王都内では“城前地区”と呼ばれている王都内南側中央にある場所なのだが、(プリ)(ピー)(ハンマー)で着いた場所は地区内では北東の方にある場所だ。

(プリ)(ピー)(ハンマー)を降りて徒歩で北に進んでも5分と掛からず隣の“中央地区”に行ける様な距離。
そんな場所に何用があるのか……
はい。如何(どう)やら僕が今回の相談で発生する“相談料”の支払場所で在る事が発覚。

停止させた(プリ)(ピー)(ハンマー)の車内から……
「ドーナッツ食いたい。その店のドーナッツ……買って来いよ。『マイスター・ドーナッツ』の『カン・デ・リング』な! あと飲み物は紅茶」
そこまで告げ、助手席の僕に所謂パシリを要求する。

本当にお高く付く相談料だ……
喜んでパシられますよ!(笑)
急ぎ目に(プリ)(ピー)(ハンマー)から降りてマイド(マイスター・ドーナッツ)の店内へ……


言われた通りの物を購入して再度(プリ)(ピー)(ハンマー)へ戻る。
中に入り飲み物や食べ物を置く(設置)するホルダーにドーナッツと紅茶を置く。
勿論だが自分の分も購入してあるよ。まぁ注文が面倒くさかったから社長と同じ物を購入しましたけどね。

「よし、じゃぁシートベルトを締めろ。発進するぞ」
「え……食べないんですか?」
「食うよ。運転しながら……」
「き、器用ですね!」

「慣れれば誰にだって出来るよ」
優しくそう言い、(プリ)(ピー)(ハンマー)はゆっくりと動き出す。
それに併せて社長も手探りでドーナッツを掴むと一口食べる。

口内に残るドーナッツを一緒に購入した紅茶で流し込み飲むと、「旨いねマイド(マイスター・ドーナッツ)のカン・デ・リングは」と言って(プリ)(ピー)(ハンマー)のスピードを少しだけ上げた。

僕も社長に続いてドーナッツを食べ始めたが、それを気にせず社長が話し始めた。
「まずさぁ……基本的な条件として『嘘』は言っちゃ駄目だ。これは色恋・恋愛とかに限った事じゃ無いけどね。それから妙な言い方になるけども『真実』をワザワザ言う必要は無い。例えるなら……お前が服屋の店員で、デブが買いに来たとする。選んだ服は其奴には似合わないけど『お似合いですよ』なんて嘘はトラブルの元だ。だが服のサイズが小さい場合は本当の事を言って『服が小さい or お前がデブ』と真実を言う必要がある。元から着れるサイズだったら其奴の体型の事は何も言わなくていい」
嘘は駄目……真実でも言わなくて良い場合有り……うん。

「今回の場合さ……ザルツだっけ? 其奴の方から『お前(ルディー)俺の女に手を出したのか?』って訊かれない限りお前から『お前(ザルツ)の彼女とヤッちゃった(テヘペロ♥)』って言う必要は無い」
「い、言いませんよ! 言えませんよ!!」

「……んでぇ、訊かれてしまった場合の事なんだけど」
「そ、それ……重要です!!」
思わず身を乗り出す。シートベルトが身体に食い込み少しだけ苦しくなった。

「現状では結論は存在しない」
「……ど、どう言う事ですか!?」
「そのままの意味だよ」
「ど、如何する事も出来ないって事ですか?」

「現状ではね」
「そ、そんなの困りますぅ!」
「ちょっと落ち透け。パニックになるとチャンスを逃す事になるやもしれんぞ」
「そ、それは……その通りでした。お祖父様にもよく言われ続けてきました」

僕は落ち着く為に一旦魔道車(まどうしゃ)の外に視線を移す。
現在は王都の“スタジアム地区”を走っている様で、素人目にも70~80%完成している巨大な建物(スタジアム)が右の方に見える。

やっぱり凄いな魔道車(まどうしゃ)は……
この短時間でこれだけ移動出来るのに、それほど重労働ではないのだから。
僕も買って可愛い彼女を隣に乗せてデートとかしたいな!

「さて……少しは落ち着いたかい?」
「あ、はい……取り乱して申し訳ございません」
うん。落ち着いた。

「忘れてるかもしれないから一応言うけど……今回の件はお前(ルディー)だけの問題じゃないからね。お前と同じ立場に彼女(親友の彼女)が居るからね! ってか、彼女(親友の彼女)の方が今後の人生が左右されるかもしれなくて重要な事柄だから」

そ……そう言われればその通りだ!?
言われるまで自分の事でいっぱいいっぱいだった……
人として駄目だなぁ……

「だからさぁ……気持ちの整理が付かないとか在るだろうけどさ、少しでも早いタイミングで余人を交えずに話し合った方が良いんだ」
「よ、余人を交えず……つまり二人っきりって事ですよね」

「まぁそうなる」
「でも……彼女(ザルツ君の彼女)と二人きりになるのは……怖い。僕からも彼女からも襲ったりなんてことはしないけど、昨晩と同じ現象が訪れるかもしれませんから」

「まぁそうだねぇ……そういう可能性は頭の片隅に留めておくべきだね……なら、僕が参加するよ」
「……どう言う事?」
言ってる意味が理解出来なくて社長の方を見ると、窓の外に港が見える。

如何(どう)やらここは“港地区”で、王都中央北に位置する場所だ。
気が付けばグランバニア王都を反時計回りに半周しちゃってた。
このまま直進すれば軍港がある地区になるのだろうけど、あそこは一般人は行っちゃ駄目だし……本当は一般人じゃない(リュカ様が居る)けど……如何するのかな?

ってな心配をしたけど、無用だった。
と言うのも、港から南のグランバニア城の北広場に繋がる真っ直ぐ一本の大通り……『グランバニア王都中央道路』に僕の乗る(プリ)(ピー)(ハンマー)は曲がった。

この道は王都のメイン道路。
道幅も広くて中央線を境に片側4車線。
つまり4台の魔道車(まどうしゃ)や馬車(今はまだ主流)が横一列に並んで走る事が出来る。

当然ではあるのだが魔道車(まどうしゃ)の姿は殆ど無い……
でも以前から商業・工業を主目的としたアリアハン製の魔道人員輸送車(バス)魔道運搬車(トラック)が走っていた。

今も僕等の少し前を魔道運搬車(トラック)が走っている。
対向車側(つまり中央線反対側)には港に用があるんだと思われる人々を乗せた魔道人員輸送車(バス)が走っている。
あと数年もすれば、魔道車(まどうしゃ)がこの広い道を大量に走ってる景色が出来上がるのだろう。

「取り敢えずはさぁ……その彼女に『何処かで話し合いを』って持ちかけるワケじゃん。その際に彼女も『二人っきりはちょっと……』ってなるかもじゃん? お前の方から二人きりにならない様に持ちかけるべきだし……そんな場合に今回の事を知っちゃってる僕が中立・中性・仲介役として“二人きり(プラス)僕”って感じで話し合いの場を設けようって事。当然だけど中立・中性・仲介役(めんどいから略して“中人”)の僕は居るだけ。その場(部屋等)に存在するだけで、君らの話し合いに参加しないし、口すらも出さない……何か訊かれても話す事は無い。だけど万が一にも二人がS○Xしそうになったりとか、暴力が含む喧嘩とかになったら“中人”として止めに入る。そして当然中の当然として、その時の二人の言動はビアンカにも喋らない。これをルディー……お前に誓う。これまでの人生と僕が最も尊敬する父『パパス』の名にかけて!」

「わ、解りました! リュカ様は信頼出来ますが、先程のお言葉で今回の件に関しての絶対的な信用をさせていただきます」
姿は社長であったが、今は王様として話をさせてもらった。

兎も角も……この問題は僕一人だけの事では無い。
メリー(メリーアン)さんの事を常に念頭へ置いておかねばならないのだ。
だから……如何様(どのよう)な方向性になろうと二人(僕とメリー(メリーアン)さん)で決めなくてはならない。

………………とは言え、大分進展した気分だ。
いや、僕の中では相当解決に近付いたと言えるだろう。
流石はリュカ様だ……相談を持ちかけて間違いなかったと言える。

ホッとして周囲(車外)を見回すと、助手席側(つまり進行方向から見て左側)に中央公園がある。
ここはグランバニア王都の“中央地区”になり、名前もそのままの『中央公園』が中央に鎮座している。
本当に中央なんだよ。

その中央公園も王都のシンボル的な公園と思われる様に、かなり大きな公園なのだ。
どの位大きいかと言うと……よく表現される言い方が『グランバニア城一個分』だ。
この公園に関してなので、あくまで面積的な部分が『グランバニア城一個分』だ。

グランバニアは“ビルディング”と呼ばれる背の高い建物が多いから、グランバニア城からも中央公園側からもお互いを見る事は出来ないが、結構な面積を王都から奪っている(笑)
だから“スタジアム地区”なんてのが出来て、平地の東側に広がっていってるんだ。

そんなグランバニアの都市計画に思いを馳せていると、中央公園でカメラを構えて撮影している人物が視界に入る。
そう……僕の大親友であるザルツ君だ。
しかもデート中。つまり……居るわけだ。

気まずい。
横目で社長を見る。
……多分……気付いてない……と思われる。

僕も気付かなかった事にしちゃおう。
多分、社長はこのままグランバニア城まで南に直進し、そのままGEO(グランバニア・エンターテインメント・オフィス)ビルまで帰る予定だろうから、その予定を進めてもらおう。

ありがたい事に中央公園の南側出入り口(最もグランバニア城に近い出入り口)へ行く為の交差点の信号(魔道車(まどうしゃ)に関わらず道を通行・横断する人々に三色灯で指示を出す鉄柱)は“進め”と言う指示の“青”だ。

そのまま直進してしまえば中央公園からは離れていく。
今日の所はこれで帰ろう。
明日以降に問題解決への行動を起こせば良いのだ。

そんな事を思って正面を見てたんだけど……
アレぇ?
視線が勝手に“中央公園南側”に向いていくぞぉ???

「腹減った……ドーナッツ買ってこい」
「はぁ? さっきもドーナッツを食べたじゃないですか! 何か別の物にしましょうよぉ!!」
先程食べたマイド(マイスター・ドーナッツ)は、グランバニア王都内だけでなく、地方都市にも……そしてサラボナにもチェーン展開しているドーナッツ屋さんだ。

そしてこの中央公園南側にも店舗があり、そこで購入して公園内で食べるって人も大勢居る。(因みに店舗自体は公園外だよ)
ドーナッツを買って、直ぐに(プリ)(ピー)(ハンマー)に乗り込んで帰るのなら問題ないけど……
公園で食べていくとか言い出しそうだなぁ……

ルディーSIDE END



 
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