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リュカ伝の外伝

作者:あちゃ
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見た目だけではない

(グランバニア王都:陸軍演習場・特設展示会場)
ピピンSIDE

「ビンゴー!」
如何(どう)やら最後のビンゴ当選者が誕生した。
残った(魔道車)はニットサン(株)のボックスバンタイプだ。

アレだって購入すれば6万(ゴールド)くらいするのだから、それを無料入手でいるのはお得だろう。
赤色……即ち免許(魔道車運転免許証)取得の基本料金無料者も10人程当選したし、展示会の催し物としては大成功だったと思う。

後2時間程で今回の展示会も終了だ。
俺もGM(グランバニア・モーターズ)の社長として……いやそれ以上に軍務大臣として展示会を開催する側として全3日間のプログラムを把握してはいるのだが、リュカ様が近々2週間程前から秘密裏に何かを準備していた。

ステージ上のグリーバー伍長は内容を把握しているのだろうか?
ビンゴ大会の片付けを行いながらリュカ様に目配せをする。
リュカ様もそれに対して無言で頷き、大臣で社長の俺が知らないイベントを開始するらしい。

「は~い! ではここで突然ですが、今巷で人気急浮上のガールズロックバンド……プリンセス・ピープルのゲリラライブを開催致しまぁ~す!」
司会のグリーバー伍長がマイクを使って聞きやすい明るい声でアナウンス。

それと同時に会場内の照明が1段階暗くなる。
そしてステージより左奥にある貨物搬入口にスポットライトが集中した。
皆の視線は一斉に集まり、そのタイミングで係の者(全員軍人)が勢いよく搬入口を開ける。

そして威風堂々と入場してきたのは……Hanmmer(ハンマー)!?
誰が運転しているのだろうか、危なげないスピードで搬入口から真っ直ぐにステージへと走ってくるGM(グランバニア・モーターズ)Hanmmer(ハンマー)

色合いは先程までキャンギャルをしていた少女等と同じ……
窓より下のボディーは彼女らが着ていたピッチピチのミニスカ胸元パックリワンピースと同じスカイブルー。

窓より上のピラー(屋根への柱?)や屋根部分は彼女らが身に付けていた下着(見せパン・見せブラ)と同じのパッションピンク(濃いめのピンク?)だ。
因みに屋根にはアタッチメントを取付けして何かを設置してある。音楽の素人な俺でも判るのだが、多分アレはドラムセットだろう。シートで覆ってあるが形で判る。

そして見事な運転でステージ上に停車。
Hanmmer(ハンマー)から颯爽と降りてきたのは先程キャンギャルをしていた少女達だ。
衣装は先程と変わってない……つまりHanmmer(ハンマー)と同じ色だ。

運転をしてたのも勿論キャンギャルをしていた少女の一人。
このバンドのメンバーの一人なのだろう。
助手席から降りてきてマイクなどを設置し演奏の準備をしている少女からサックスを受け取る。あれが彼女の担当楽器なのだろうか?

しかしこの短い距離であれHanmmer(ハンマー)を動かせる事実に羨ましさを感じる。
そんな羨望の眼差しで見ているとリュカ様が「キャロ(キャロライン)ちゃん(サックスの娘)は結構な魔力を持ってるぞ。多分Hanmmer(ハンマー)も300~400km(キロメートル)くらい運転出来る」と……

羨ましいなぁ!
GM(グランバニア・モーターズ)の社長なのになぁ、俺!
所詮置物社長だしなぁ!

「因みに、今後部のトランクを開けて新開発のマジカルピアノを設置してるヴァネッサちゃんもキャロ(キャロライン)ちゃん程じゃないが魔力量は多い」
リュカ様からの報告。

生まれつき魔力を持っているという事なのだろう……
羨ましすぎる……ってかさりげなく新しい楽器のことを自慢された。
如何(どう)やらHanmmer(ハンマー)の後方に展開されてるピアノの鍵盤部分だけの物はマジカルピアノというらしい。

「それと今から屋根に登ってドラムを担当するアーノちゃんも魔力量は多い。プリ・ピー(プリンセス・ピープル)内じゃナンバー3かな。彼女ら3人居れば何所へ出かけてもそうそう立ち往生にはならないんじゃないかな?」

俺ももっと魔法の勉強をすれば良かったのかな?
そう思いながら3番目に紹介された魔力量の多いドラム担当者を目で追っていると……あのミニスカート衣装であるのにも関わらず、中身のパッションピンクが丸見えになることを厭わない格好でHanmmer(ハンマー)の屋根に登っていく姿が網膜に焼き付いてしまう。

サラボナの小倅とその友人は、その若さを利用して彼女の行動に歓声を上げて写真を撮っている。
だがいい歳した中年のオッサンには、体面を気にして取り繕う必要があるのだよ。
少し視線を下に外して息を吐く。

そのタイミングでヒョコッとリューナ嬢が俺の顔を覗き込んだ。
何を見てたのか……何を考えてたのかがバレてるのでは無いかと思い耳まで熱くなる。
だが彼女は淑女だ……中年のオッサンの羞恥心には触れてこない。

「こちら……今回のゲリラライブのCC(コンパクト・クリスタル)です。非売品になりますので大臣閣下もどうぞ」
そう言ってリューナ嬢は彼女ら(プリ・ピー(プリンセス・ピープル))の写真が入った15cm(センチメートル)四方のケースを手渡してくる。

困ったな……
実を言うと俺はまだこのCC(コンパクト・クリスタル)を再生させるMP(ミュージックプレイヤー)を購入してない。
リュカ様の渾身の開発品なのだから家臣としては購入しておくべきだったのだが……

「ふふっ……閣下はまだMP(ミュージックプレイヤー)を購入して居りませんよね」
「あ……はい、左様です……はい」
リューナ嬢は国のお偉いさんの購入事情を把握しているのだろうか? 艶容な笑顔で語りかけてくる。

「でしたら今日……城にお帰りになってPONY(ポニー)に寄り購入されるのがお得ですわよ。(魔道車)の開発により、MP(ミュージックプレイヤー)もオプション装備に出来る様にしましたので、明日よりMP(ミュージックプレイヤー)単体も55(ゴールド)から98(ゴールド)に値上げされます。お安いのは本日中まで……ですわ(笑)」

なるほど……
現行はMP(ミュージックプレイヤー)を広めることを優先させて売れれば売れるだけ赤字になるとは聞いていたが、そろそろ商売にも転じなければならないという事だな。

うむ。
今日はCC(コンパクト・クリスタル)を貰ってしまった事だし、家臣としてMP(ミュージックプレイヤー)を購入しておくべきだな。そう、お得な今日中に!

購入の決意を固めると同時に、キャンギャル……改め、プリ・ピー(プリンセス・ピープル)と呼ばれる少女等の演奏が始まった。
俺はあまり音楽に詳しくないのだが、それでも心地良く身体の中にビートが流れてくる。

「大臣閣下。先程配布しましたCC(コンパクト・クリスタル)の中に入っている小冊子……ブックレットと申しますが、本日演奏の曲目の事も多少は情報を載せておりますので、参考にして頂ければMP(ミュージックプレイヤー)購入の後押しになりますわよ(笑)」

リューナ嬢は思っていたよりも商魂逞しい様だ。
もう既に購入の意思は固まっていたのだが、このブックレットとやらも参考にさせて貰おう。
どれどれ……ケースを開けて隙間から冊子状のブックレットを取り出し開く。

表紙を捲るとプリ・ピー(プリンセス・ピープル)6人のメンバー紹介が載っている。
ふむ……先程Hanmmer(ハンマー)をスムーズに運転したのは“キャロライン・リーパー”という名前か。目の前で演奏してるがサックス担当らしい。

引き続きブックレットを捲る……
そこには今演奏中の曲について書いてあった。
曲目は『世界で一番熱い夏』という……

ブックレットにはリアルな絵……所謂写真も掲載されているのだが、それが曲のイメージを醸し出している。
場所は……砂浜に見えるが砂漠だろう。テルパドールかな?

例のスカイブルーとパッションピンクのHanmmer(ハンマー)から降りてきた運転手の男性の手を引き、青く美しいオアシスへとボーカルの少女(リーダーのアイリーン・アウラー)とドラム担当の先程丸見えになった少女(アーノ・ブレイキー)の2名が誘っている写真だ。

誘われている男性は上手い具合に顔が写らない様にしているけど、この後ろ姿はリュカ様だ。
背中に見覚えがあるのも重要だが、幼き頃の鞭打ちの傷が少しだけ首筋から見えている。
何より手を引く少女等の笑顔……リュカ様以外の男性には向けないのではないだろうか? う~ん、羨ましい。

思わずリュカ様に視線を向けると、丁度こちらを見ていた様で目が合う。
「この男性……リュカ様ですよね?」
「やっぱり判る? 傷がちょっと見えてたしね」

「いえ、傷もそうですけど……私はリュカ様の背中を見て育ってきたので(笑)」
「嬉しいことを言ってくれるね。ティミーもそうだと良いんだけどなぁ」
きっとリュカ様の背中を見て育ってますよ。

「その撮影場所……テルパドールなんだけどさ。勝手に行って勝手に撮影して勝手に帰るわけにもいかないじゃん。だから一応アイシスに連絡はしといたんだよね。僕はアイツ苦手だから会わない様にしたんだけどさ……」
リュカ様が唯一苦手にする女性だ。多分、心を読まれるからだろう。

「わざわざ会わない様にしてたのに、わざわざ地下庭園から出てきて僕の前に現れやがったんだよ! 性格悪いなあの女。本当はもっと撮影したかったのに、サッサと撤収してきたよ」
それはそれは……としか言いようが無い。

そう言えばアイシス女王も数年前にご結婚なさったのだが、王族の結婚式なのにリュカ様は『風邪を引く予定の為欠席』と返信。
無論グランバニアから誰も行かないわけにはいかないので、王子のティミー様と当時はまだ主席秘書官だったウルフ閣下がご出席なさった。

ティミー様が仰るには、ウルフ閣下は一言二言程祝辞を言っただけで、ほぼ無言だったらしいのだが……思考だけでアイシス女王を泣かしたらしい!
無言のウルフ閣下に対して、アイシス女王が終始何かを言っていたそうなんですが、最終的には泣き出したそうだ。

喋らずに泣かすって……如何(どう)なってるんだあの男は?

ピピンSIDE END



 
 

 
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