リュカ伝の外伝
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
興味を持ったら、それがスタートライン
(グランバニア王都:陸軍演習場・特設展示会場)
ピピンSIDE
気付くとプリ・ピーの演奏曲は次に移行してた。
俺も手元のブックレットを捲る。
そこには『夢見る少女じゃいられない』と曲名が書いてある。
イメージ写真も先程までの曲とは違い、舞台はグランバニア王都内だろう。
夜の町をSBPPHanmmerを運転してる男性(顔は写ってないがリュカ様)の横顔をギター担当(エミー・ヘンドリクス)の少女とベース担当(ピノ・パラデイン)の少女がウットリ覗き込んでいる写真だ。
この曲もまた激しく、気が付けば身体の何処かでリズムを刻んでいる自分がいる。
ブックレットの写真で見るとギターを弾いてる少女は、それこそタイトル通りの夢見る少女に見えるのだが、演奏中は酸いも甘いも経験してそうな程の大人っぽさを醸し出している。
そしてベースの少女も……デカい。
いや、身形は全体的に小さいのだ。
ある一カ所(二山?)がデカい!
如何してもそこに目が行ってしまう。
激しく演奏しているので揺れる揺れる。
だからそこに目が行ってしまう。
ボディーラインを強調してる彼女らの衣装は危険だ。
特にステージに齧り付いているサラボナの小倅とその友人等には刺激を与えすぎだ。
そしていい年をした中年にもな!
暫くは意識を演奏曲に集中させる。
すると当然の如く曲目が次へと変わる。
俺もそれに合わせてブックレットを捲った。
今度の曲名は『翼の折れたエンジェル』という……
ブックレットの写真も歌詞の出だしにあるように、悪天候の街中を運転しながら運転手の男性(勿論顔を見えない様にしてるリュカ様)が何かを言ったのだが、聞こえなくて同乗の少女2人(サックス担当のキャロライン・ピアノ担当のヴァネッサ)が口元に耳を寄せている。
窓を閉めて運転すれば良いのに……馬鹿だなぁ。
何て考えてしまうのは若いピュアな心を失った中年の思考なのだろうか?
息子(ピパン)もピュアな心で歌詞を受け入れるのだろうか?
歳は取りたくないものだ(笑)
サラボナの小倅とその友人の様に、周囲の目も歌詞の内容も気にしないで楽しめる精神が欲しいなぁ。
今日は帰りにMPを購入して帰る予定だし、もう少し若者の心を取り戻す努力をしてみるか。
そんな中年風味丸出しの野望を抱いているうちに、如何やら曲目も変わっていた。
俺も慌ててブックレットを捲る。
そこには今演奏中の曲目……『タマシイレボリューション』と!
何だろうか……心の底から力が湧いてくる様な曲だ。
如何やら俺はこの曲が好きになったらしい!
この曲も先ほど貰ったCCに収録されている……元よりMPを購入して帰るつもりだったのだが、それに輪を掛けて購入意欲に火が付いた!
歌詞も前向きで元気が出てくる内容だ。
そしてブックレットの写真も、内容を表現している。
撮影場所は何処だろうか……?
結構激しめな山道……いや、道などは無いな。
歌詞にもあるのだが、まさに道なき道を突き進む……そんな写真だ!
晴れた日に何処かの山をSBPPHanmmerが突き進む。
勿論ドライバーはキャロラインさんだ。
だがこの曲目のイメージ写真には男性(リュカ様)は写ってない。
プリ・ピーの面々が全員SBPPHanmmerに載って楽しそうに山を突き進んでいる写真だ。
彼女らをプロデュースしてるリュカ様のセンスなのか……
写真も歌詞も素晴らしい! 何よりも曲が素晴らしすぎる。
俺の様な音楽のド素人でも素晴らしさが解るのだから、それが凄いと思う。
演奏している彼女らも全員が心底楽しそうだ。
そんな中でも俺を自然にリズムを刻ませるドラムの音に気が行ってしまう。
気が付くとドラムの音に合わせて身体を小刻みに振っている。
しかし演奏者の方に視線を向けると、そこには如何しても見えてしまうパッションピンクの下着が……
見せパンとの事なのだから、見たって問題ないのだろうし、何より演奏している彼女が、致し方ないにしても股を大きく広げての演奏スタイルなのだから、俺に罪は無い……はず。
そう心に言い聞かせて俺も彼女等の演奏に注目する。
リュカ様が集めただけあって皆が美女だ。
各種パートだけに注目しても若者は憧れるだろう。
何より俺は、あのドラムに興味を持ってしまった。
ドラム担当の彼女の様(下着を見せたいわけでは無い!)にドラムセットを演奏してみたくなった!
流石に今日の今日では無理だろうけど、無趣味だった俺の趣味の一つとして購入して練習してみようかな?
購入するにしても妻(ドリス)の許可を貰わないとなぁ……
家計的にはそのくらいは大丈夫……なはず。
だって一応は軍務大臣だし……お飾りだけどGMの社長として少しだけ給料も貰える事になってるし……
そんな事を考えながらタマシイレボリューションの演奏(主にドラム)に見とれてると、ドラム担当のアーノさんと目が合った。
下着をガッツリと見てはしまったが、それは悪い事ではないし何より不可抗力だから、顔を引き締めて軽く首を縦に振って挨拶を送った。
すると彼女は演奏を止めず(当然だな)に口だけを動かして『チュッ♥』と投げキッスを飛ばしてきた!
やれやれ……いい歳した中年のオッサンだと思われ舐められたモノだな。
だが舐められて当然である。
思わず慌てて下を向いてしまってるのだから……ね!
この中年オッサンは若い娘に投げキッスされて恥ずかしくなる様なヘタレなのだから!
恥ずかしすぎてゆっくりとリュカ様に視線を移した。
こんなヘタレはリュカ様の恰好の的であろう……
せめてからかって貰い笑い話にしなければ!
……だが、こういうときに限ってリュカ様は俺に興味を向けて居らず、何やら別の事を考えられてる様子でプリ・ピーの演奏に注力されている。
何だろうか……リュカ様のお考えは勿論解るわけも無い。
だが俺も恥ずかしかったので、リュカ様のお考えを理解する努力するフリをする感じで手元のブックレットに視線を落とした。
そんなタイミングではあったのだが、丁度良く次の曲目……今回のゲリラライブ最終曲の5曲目。
曲名は『グランキング』となっている。
俺は彼女等(プリ・ピー)の曲目は今回の5曲しか知らないのだが、ド素人の俺にですら解る……先の4曲とは全然違うと言う事が!
何が違うと訊かれても俺にはド素人過ぎて答えられない。
因みにブックレットに写ってる写真も、今回は人物は写ってない。
何処かの部屋(彼女等の練習部屋だろうか?)に、今目の前で演奏している楽器だけが並んでいる写真が載っている。(マイクとそれを立てるスタンドがボーカルを表しているのだろう)
曲調は先ほどまでの曲の様にスピード感は無いが、それなりに早めの曲……かな?
でも何より気になるのは歌詞の方だ。
リュカ様もそれが気になるのだろうか……この曲が始まってから終始難しい顔をされている。
ご自分で作った曲が気に入らない……のだろうか?
いや……だとしてもリュカ様が気に入ってない曲を彼女等に無理矢理演奏させるとは思えない。
何より気に入らないのなら、無理矢理5曲目を演奏曲に入れなければ良いだけの事なのだ。
とは言え、俺もこの曲には心(身体も)が動かされなかったので、手元のブックレットを再度見返してみる。
そこで発見した!
如何やらこの曲だけがプリ・ピーの作詞・作曲そして編曲(編曲って何だ?)らしい。
先にも言ったが、このブックレットには今回演奏する曲の情報が載っている。
“曲名”と“歌詞”……更には作詞者・作曲者・編曲者の名前だ。
曲名と歌詞の間に小さく書かれている。
それを見ると1~4曲目は全て作詞・作曲・編曲が“プーサン・ホーク”……つまりはリュカ様って書いてある。
だが5曲目のこの曲だけは、
『作詞:ヴァネッサ・ベネッツモーゼル & キャロライン・リーパー』
『作曲:エミー・ヘンドリクス & ピノ・パラデイン & アーノ・ブレイキー』
『編曲:プリンセス・ピープル』
となっている。
詳しい事はよく分からないが、全部リュカ様に任せた方が良かったのではないだろうか?
う~ん……
リュカ様が先ほどから難しい顔をされているのも、少しだけど解ってきたかもしれない。
と言うのも……
今演奏しているこの曲って……
う~ん……なんて言うのか……全体的にリュカ様を賛美する歌詞なんだよな。
リュカ様ってそう言うのあまり好きじゃないし……
でもこうして発表出来てるって事は、リュカ様も許可したわけだし……何か思うとこがあるのだろう。
でもこの曲は歌詞的に部外者が文句を付けるわけにもいかないし、俺は面倒事に巻き込まれない様に触れないでいよう。
・
・
・
さて……無事に魔道車の展示会及びプリ・ピーの演奏会も終了。
当初の予定通り俺は城内にあるPONYでMPとやらを購入。(明日には値上がりするらしいからな!)
帰宅後、妻にMP購入の理由と購入しなければならない言い訳……では無くって、音楽の素晴らしさを話し事後承諾を得る。
そしてここからが本番である!
俺は妻に俺の気に入ったタマシイレボリューションを訊かせて、趣味としてドラムセットを買いたいと伝える。
『いい歳した中年が何言ってんだ!?』とか言われるかなと思ってたんだが……
「あら良いんじゃ無いの。アナタ仕事(軍事)しか趣味が無かったから、丁度良いんじゃない?」
と快諾を貰えた!
これは嬉しい。
更に嬉しい事が……
何と一緒に訊いてたピパン(息子)も……
「あ……俺もMGが欲しい! 父さんと同じような音楽の趣味として、今流行ってきてるMG買ってよ!」
との要求をしてきた。
如何やら巷ではMGとMBが流行り始めている様だ。
これは良いぞぅ!
趣味として親子で演奏する……
リュカ様に自慢出来そうだ!
因みに妻の返答は……
「二人とも……買うからには、練習をちゃんとする事! あるだけで誰も演奏出来ない粗大ゴミは要らないんだからね!」
との事で、今度の週末に家族で楽器店にショッピングだ!
明日にでもリュカ様にお勧めの店を訊いてみよう。
ピピンSIDE END
後書き
この展示会のエピソードは
2024年5月中頃からの入院中に書き終えました。
ページ上へ戻る