八条学園騒動記
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第七百二十九話 カバは狂暴その九
「熱帯や冷帯でも育ち咲く様に品種改良した」
「桜の木をですか」
「植える、熱帯用の桜もあれば」
「冷帯のものもですね」
「乾燥帯にもな」
「そうしますか」
「砂漠なら開発してだ」
その地域全体をというのだ。
「そしてだ」
「そのうえで、ですね」
「緑豊かな地域にしてな」
「桜の木もですね」
「植える、どの国も国花には思い入れがあるが」
「日本人は特にですね」
「それが強い」
即ち桜へのそれがというのだ。
「非常にな」
「だからそうしますね」
「そういうことだ」
まさにというのだ。
「この国はな」
「やはり独特な国ですね」
上等兵はその話を聞いてしみじみとした口調で言った。
「連合の中でも」
「そうだな、桜なくしてはだ」
「日本人は気が済まない」
「そうなのだ」
「犀の周りに桜吹雪があっても」
上等兵は穏やかに過ごしている彼等を観て述べた。
「どうにも」
「先程も話したがな」
「絵にならないですね」
「合いませんが」
「それは我々の感覚でな」
「日本人はですね」
「桜はな」
この木そして花はというのだ。
「どんなものにもだ」
「合いますか」
「春になれば」
この季節になればというのだ。
「満開になってだ」
「桜の花達が」
「国を飾るのだ」
日本全体をというのだ。
「冬が終わりだ」
「遂に春が来た」
「その象徴でもあるからな」
「それで尚更ですか」
「日本ではな」
桜の花はというのだ。
「まず梅が来てだ」
「あの木の花が咲いて」
「次に桃でな」
「あの木の花も奇麗ですね」
「そしてだ」
「真打ですね」
「日本ではそうした言葉があるな」
上等兵にこう返した。
「大物はだ」
「最後に出ますね」
「最初に出て来るのは前座でな」
そうした立場の者でというのだ。
「そしてだ」
「その後で真打ですね」
「最初に出て来るのは格が落ちるとだ」
その様にというのだ。
「考えられている」
「日本では」
「それで春の花もな」
「真打は桜ですね」
「今はそうなっている」
「今は、ですか」
「平安時代の後期からだというから二千年の間はな」
それだけの期間はというのだ。
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