リュカ伝の外伝
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トモダチ100人できそうかな?
(グランバニア城:娯楽室)
ルディーSIDE
「あのクソ親父ゆるせねー!」
娯楽室に入ると目の前でマリーちゃんが怒っていた。
一応はお姫様なんだから、もう少しお淑やかな言動をしてもらいたい。
「あら、どなたかしら?」
娯楽室内には他にも人が居て、マリーちゃんを含めると女性が3人。
その中の一人……マリピエのピエッサさんが僕に気付いて尋ねてきた。
「あ、お邪魔します……リュカ様に言われて城内のポスターを回収してきました」
「あら~、手伝ってくれたのね。ありがとう♥」
可能な限り怒っているマリーちゃんには触れない様にして、回収してきたポスターの事を伝えた……
すると、そこに居たもう一人の女性が近づき、優しく声を掛けてポスターを受け取る。
何処かで観た事のある女性だと思って、よ~く見てみると……
なんと先程まで回収していたポスターに描かれてる女性だった!
そう、昨晩コンサートをしたプリ・ピーのヴォーカルの人だ!
僕は思わず声を掛けてしまった。
「あ、あの……昨日のコンサート最高でした! 僕、感動しました!」
「お前も敵かー!!」
昨晩の感動が蘇り興奮してしまったが故の言葉だったのだが、マリーちゃんはすごく怒っている。
何でだろう……何がいけなかったのだろうか?
「落ち着きなさいよ、みっともないわね。アンタみたいな音痴と違って、私は上手いから感激してファンになったんでしょ。悔しかったらアンタも少しは練習しなさいよ」
僕は素人だからマリーちゃんが音痴なのかは判らないけど、プリ・ピーのヴォーカルの人はズバッと言い切ってしまう。大丈夫なのかな……マリーちゃんはコレでもお姫様なのに?
「ムカつく女ね……ところでアンタ誰よ!? ここは王家のプライベートエリアなのよ。勝手に入ってきて良いわけ無いでしょ!」
「す、すみません……でもリュカ様から許可証は貰ったから」
如何やらマリーちゃんは僕の事を憶えてないみたいだ。
「あ、あと……お久しぶりですマリーちゃん。憶えてないかもしれませんけど、僕……ルドマンの孫のルディーです」
「え!? ハゲマンの孫? 頭フサフサじゃん!」
「あ、なんかすみません。まだ若いので……もしかしたら父親似なのかもしれません」
「謝らなくていいのよ。この娘が無礼なのだから」
プリ・ピーのヴォーカルのアイリーンさんが慰めてくれた。優しい。
「何よ皆にそう呼ばれてるんだからいいじゃない!」
「この子の頭髪のことは誰も言ってないわ。アンタだけよ……そんな無礼なのは」
僕のことを微塵も憶えてないマリーちゃん。
昨晩のコンサートと優しい対応とで僕はプリ・ピーの……いや、アイリーンさんのファンになった。
そういえば姪のデイジー(デボラ伯母さんの娘)も、マリピエの衣装や踊り・新感覚の音楽に惚れ込んでいたけど、マリーちゃんの歌声には何も言ってなかったな。
「あのマリーちゃん、そうやって他人の事を悪く言ってるとファンが居なくなっちゃうよ。少なくとも今、僕はマリピエからプリ・ピーに鞍替えしたからね」
「ムカつくクソガキね」
僕の方が1歳年上のはずなのにガキ扱いされた。
そういえばリュカ様も結構口が悪いし、その影響なのかもしれない。
「でも良いのかしら、私たちのファンを公言しちゃって? この娘と違って私たちは見た目より音楽重視で活動するつもりよ。 この娘みたいにワザとパンチラして男に媚売ったりはしないわよ」
「大丈夫ですよ! アイリーンさんも十分に色っぽくて、男性は皆虜です」
「あら、嬉しい事を言ってくれる。それじゃよろしくね♥」
僕はお世辞などは言ってない。でもアイリーンさんに微笑まれて骨抜きになってしまいそうだ。
「チッ……ババアが発情してんなよ!」
本当に口が悪いなぁ……
「そういえばアンタ……何を歌ったのよ!? どうせあの親父が作った曲でしょ!」
ライバル(?)の曲目が気になったのか、さっき僕が回収してきたポスターを手に取り確認してる。
すでにポスターに意識が行ってるマリーちゃんは気付いてない様子だったが、アイリーンさんとピエッサさんが互いに目を合わせて何か困っている。
多分あの事だろう。
「あ、ご心配なく。僕はプーサンがリュカ様である事や、それに関して口外しない事は心得てます」
「あら、よかった。気兼ねは不要ね」
アイリーンさんの言葉にホッとするピエッサさん。
「ちょっと、ふざけんじゃないわよ。何なのよこの曲目は!?」
「何か問題でもあるかしら?」
アイリーンさんは落ち着いてマリーちゃんに応える。でも僕にも問題はあるように思えない。
「問題大ありよ! 1曲目はいいわ。『どんなときも。』は良い曲だし、私も狙ってたけどもアニソンを優先してたから手が回らなかったし」
“アニソン”って何だ?
「2曲目の『男の美学』って何? 私知らないわ……まぁあのオッサンは私より音楽に精通してるからなぁ」
リュカ様が作った曲なら知らなくても変じゃないと思うけど?
「3曲目もまぁいいわ。『なごり雪』なんて昭和の名曲は古すぎて私の知識になかったわ!」
“昭和の名曲”って何?
何でそれが古いの?
「4曲目の『酒と涙と男と女』もまぁ良いわよ。マニアックすぎて私には思いつかないもの」
マニアックなの?
すごく良い曲だったよ。
「許せないのは5曲目よ! 何で『残酷な天使のテーゼ』を歌ってんのよ!? あれはアニソンよ! 私の領分じゃん!!」
「何で貴女の領分になるのか解らないけどプーサン社長が作り、プーサン社長が発表したのだから社長の領分よ」
「何言ってんの? もっと以前に私は作ってあったもん! ねぇピエちゃん、結構前に楽譜は作ってあったし、ピエちゃんは練習してたわよね!」
「それはそうだけど……社長の方が先に発表したし……」
「私の方が先だもん! 以前に『残念な天空の勇者』って替え歌で城内に発表したもん!」
「アンタはやっぱり馬鹿娘ね」
マリーちゃんのヒステリックな声に対して、冷静に言い放つアイリーンさん。格好いいし色っぽい。
「社長はね、ちゃんとマリー法を通してあるのよ」
「うぐっ……マ、マリー法!」
マリー法って何?
「あ、ルディー君はマリー法を知らないわね。簡単に言うとね……」
・
・
・
「……ってワケ。なんと発案者はマリーちゃんなの。だからマリーちゃんの名を冠してるのよ。凄いのよぉ」
「そうよ、アンタの名前の法律で守られてるの。アンタがギャアギャア言ってこの法律の存在を否定しないでよ! アンタが著作権とかを守ろうって言い出したんだからね!」
「ぐぎぎぎぎっ!!!」
ピエッサさんの説明とアイリーンさんからの言葉に、なんかマリーちゃんが凄く悔しそうに唸ってる。基本的に我が儘なんだなぁ……
少し話の流れを変えた方が良いな。
「そ、そういえば全部良い曲ですよね。マリーちゃんは知らないみたいですし、僕丁度魔道結晶を持ってますし、そこにあるMPで再生しましょうよ2曲目の『男の美学』を」
「何よMPって?」
「え! 知らないの? 新興企業PONY公社で発売された、音声再生機器だよ」
普通にニュースになってると思うけど。
「アンタ新聞も読まないの? リューナさんが社長に就任して魔道機械を開発・製造・販売する会社よ」
「何、リューナが!? じゃぁやっぱりあの親父が絡んでるじゃん! 何で私には教えてくれないのよ!!」
性格が問題じゃにかな?
「よく見たらここにロゴマークが描かれてる。PONYとか言うから絶対ソ○ーのパクりだと思ったのに、マークはビ○ター犬のパクりじゃん!」
この部屋の端(そんなに端っこじゃない)に置いてあるMPに近寄り何やら解らない事を言っている。
「まぁいいや。兎も角聴かせなさいよ! 私は使い方が分からないんだから」
それはそうだろうけど何でこの娘は偉そうなんだ?
お姫様だからか? 僕はこういう娘は嫌だなぁ……
でも言われるがまま僕は自分が持っていた魔道結晶をこの部屋のMPにセットする。
MPは30cm四方の立方体で、上部1/4の蓋部分を上に開けると裏側には音を発するスピーカーになっていて、本体部分中央に小さい差し込み口があり、そこに魔道結晶を差し込むようになっている。
そして魔道結晶より手前側には各種の操作盤が設置されていて、それで音声の再生・早送り・早戻し・一時停止・停止などの操作を行う。
後日発売ではあるのだが、別売りのラジオ受信用の魔道結晶を購入すると、お祖父様も期待しているラジオ放送が聴けるらしい。それらの操作もここで出来る。
僕はポケットから小さいケースを取り出した。
そのケースにはプリ・ピーの絵が描かれており、凄くリアルに描かれているからウルフ宰相が描いたんだと思っていた。
でもさっきリュカ様に聞いたら、それはカメラという魔道機械を使ったリアルな絵だと教えてもらった。
凄いなぁ……こんなリアルな絵を機械で描いちゃうんだ。
ポスターの絵も同じなんだろう。
そんな素晴らしくリアルな美女たちが描かれているケースを開け、中から魔道結晶を取り出した。
「はぁ? 何それ! それが音楽の入った魔道結晶なの? 完全にUSBじゃん!」
また訳分からない事を言い出した。
「あの……USBって何?」
さすがに聞いてしまったが、言ったマリーちゃんも困っている。
自分で分かってない物を言ったのかな?
「USBってのは……アレよ」
「アレって何よ?」
この中でマリーちゃんに物怖じせずに発言するアイリーンさんが、僕らの思いを言ってくれた。
「え~っと……USBってのは……ウルトラ……スーパー……ん~と……ブス……の事……?」
え~~~~~!?
ルディーSIDE END
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