神々の塔
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第四十四話 狐狸その四
「ないわ」
「そやね」
「敵を討つ覚悟やなくてな」
そう言って狸を正面から攻撃するのではなくというのだ。
「いつも騙して残酷にやってるな」
「あれはないね」
「流石にな」
「あの兎めっちゃ陰湿やな」
こう言ったのはメルヴィルだった。
「正々堂々とかな」
「一切ないね」
「ほんま敵討ちはな」
「普通正面から名乗ってやるね」
「何処の国でもな」
「そやね」
「あの狸も非道やが」
お婆さんにしたことはというのだ。
「そやけどな」
「卑怯過ぎるね」
「しかもどんな残酷でも一回で済ませるもんを」
敵討ちをだ。
「三回も延々とな」
「騙し続けて」
「やるなんてな」
それはというのだ。
「あまりにもな」
「卑怯やね」
「残虐でな」
「あれは敵討ちやなくてな」
羅も言った。
「嬲り殺しやろ」
「確実にそれやね」
「ほんま普通はどんなに残虐にやっても」
「一度で終わらせるね」
「それが敵討ちや、水滸伝でもな」
この作品でもというのだ。
「そうしてるしな」
「それでやね」
「あの兎はどう見てもな」
「敵討ちにしてやおかしいんやね」
「あの兎の性格考えたら」
トウェインも考える顔になって話した。
「かなり卑劣で陰湿で執念深い」
「そして残酷やね」
「そんな奴やな」
「敵に回したらあかんし」
「惚れてもな」
太宰の作品にある様にというのだ。
「そうしてもな」
「あかんね」
「ああ、狸が何したんや」
太宰のかちかち山の彼がというのだ。
「好きになっただけやろ」
「それで惚れたが悪いかやで」
「惚れるんが悪い筈あるか」
トウェインは忌々し気に言い切った。
「相手が彼氏持ちとか人妻さんでもないとな」
「ええね」
「そや、何でそんな殺され方せなあかんねん」
「確かにな」
リーも否定しなかった。
「惚れたが悪いかなんてな」
「ないね」
「ある筈がない、身分違いとか立場が違うとかもな」
そういったこともというのだ。
「本来はな」
「恋愛にはないね」
「その筈やからな」
だからだというのだ。
「嫌いでも告白を断ればええ」
「それだけやね」
「それも相手を傷付けん様にしてな」
そのうえでというのだ。
「したらええんや、けどな」
「あの兎はちゃうね」
「断わるどころか騙してまでしてな」
それも何度もだ。
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