神々の塔
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第四十四話 狐狸その三
「ヲチやね、要するに」
「それで殴られてですね」
「お話は終わりとなりますね」
「そやで、けれど狐も狸も殺されたって話少ないし」
そこまで至ることはというのだ。
「かちかち山かて最近はお婆さん殺してへんで最後泥舟から助けられてお婆さんに謝罪させさせられて終わりやし」
「それじゃあね」
「尚更ええし。ただかちかち山は原本えぐいわ」
綾乃はこの童話の話もした、見ればここで九尾の狐と鵺は主に促してそれぞれ彼等をその背に乗せている。
「結末も。太宰さんの方は特に」
「太宰さん?」
「太宰治さんやで」
シェリルのその問いに答えた。
「作家の」
「ああ、走れメロスとかの」
「あの人の作品であるねん」
こうシェリルに話した。
「かちかち山が。御伽草紙の中にあって」
「そういえばあったか。浦島太郎が独特やったな」
「あの作品は読んだんやね」
「ただかちかち山はまだで」
「知らんかったん」
「読んだか忘れたわ」
「ほなまた読めばええね」
綾乃は笑って応えた。
「それやと」
「そやな、それでそっちのかちかち山はか」
「狸別に悪いことしてへんねん」
太宰の作品ではそうした設定で書かれているのだ。
「ただださいおっさんで」
「それだけか」
「純粋無垢で可愛い兎に惚れて」
「ああなるんか」
「そやねん、徹底的に嬲り殺されるなん」
童話にある通りにというのだ、原典の。
「お婆さん殺したりしてへんのに」
「滅茶苦茶えぐいな」
「うちの学校のあの遠井君みたいに」
「あの振られて裏切られてで地獄見た」
「あの人みたいな目に遭って」
それでというのだ。
「惚れたが悪いかって言い残して」
「殺されるんか」
「それで殺した兎は平然として」
その作品の中ではだ。
「汗かいちゃったで終わりやねん」
「えげつないな、それは」
「もうその兎がめっちゃ怖くて」
狸を平然と殺しただ。
「サイコパスみたいやで」
「自分に言い寄って来たおっさん嬲り殺しにしたんか」
「そやねん」
これがというのだ。
「えげつないことに」
「それは確かにえげつないな」
シェリルも唖然となった。
「狸が幾らださくてもな」
「それで外見もようないおっさんやってん」
「それでもあのお話のまま殺す理由があるか」
「敵討ちでもやり過ぎやったし」
「水滸伝の復讐とか敵討ちはえげつないけどな」
施は自国の物語から話した。
「正面から敵討ちって言うしな」
「あの兎いつも騙し討ちやね」
「あれは流石にな」
凄惨な復讐を行い話がある国の者から見てもというのだ、史記でも伍子胥がその言葉通り死体に鞭打っている。
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