神々の塔
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第四十四話 狐狸その五
「狸の人のよさと自分を好きな感情にも付け込んで」
「背負った薪に火点けて火傷跡に芥子とか塗って」
「最後は泥舟に乗せて叩いて溺れさせて殺したな」
「そうしたで、原典通り」
「お婆さん殺しても一度で殺すべきやのに」
それがというのだ。
「何度もやるのはおかしいし」
「ましてお婆さん殺してへんで自分を好きになっただけやのに」
「そこまでするのはな」
それはというのだ。
「ほんまな」
「おかしなことやね」
「太宰さんの書いた兎はサイコパスや」
そう言っていい存在だというのだ。
「人を傷付けても殺しても何とも思わん」
「汗かいたで終わるみたいな」
「純粋で無垢かも知れんが」
太宰はそう書いている。
「邪悪そのものや」
「そう言ってええね」
「ほんま何で狸がそこまでされなあかんねん」
リーはこうまで言った。
「一体」
「ほんまそうなるね」
「ああ」
まさにというのだ。
「太宰さんの方やとな」
「そうやね」
「好みやないなら」
自分に言い寄る相手がだ。
「御免なさいでな」
「終わりやね」
「そうしたらええ、流石にしつこいとな」
その場合はというと。
「ストーカーとしてな」
「通報するけど」
「さもないとな」
「お断りしてね」
「それで終わりや」
「そやね」
「それをああしてな」
「しつこく残酷に攻撃して」
「殺すのはな」
それはというのだ。
「非道や」
「そやね」
「その話ってな」
芥川は苦い顔で言った。
「うちの学校でもあったしな」
「似た話がな」
中里もそうした顔で応えた。
「あるな」
「ああ、告白する様にけしかけられてな」
「その娘に告白したら振られて」
「それでな」
そのうえでというのだ。
「告られたこと皆に言ってそんなんするなって言ってな」
「けしかけた奴に縁切れとか言うてな」
「それでけしかけた友達だった連中は縁切った」
「そんなん最初から友達やなかったにしても」
「断わるにしても二人だけで収めずに」
「周りに言い回って」
「それで太ってるから嫌とかな」
そしてというのだ。
「告白するなとか言うてな」
「いや、それってな」
「あの兎と同じやな」
「そやな」
「このお話学園中で有名で」
綾乃も嫌そうに言った。
「今も批判されてるけど」
「振った奴もその友達もな」
「けしかけた連中もな」
「在学してるけど」
その関係者全員がというのだ。
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