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八条学園騒動記

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第七百二十四話 ゴリラの素顔その七

「そうした文明になっていたな」
「穏やかな生きものなので」
「そうだからな」
「子供の頃ゴリラが怖かったです」 
 上等兵はこのことを素直に話した。
「外見が」
「そうだったか」
「しかしですね」
「怖さなぞだ」
 それこそというのだ。
「実はな」
「ゴリラにはないですね」
「狂暴性、攻撃性なぞ皆無だからな」
 そうした生きものだからだというのだ。
「何一つだ」
「恐れることはないですね」
「実はな」
「今はそのことがわかっていますが」
 大人になってとだ、上等兵は答えた。
「ですが」
「子供の頃はか」
「外見だけを見て」
 それでというのだ。
「子供を襲って食べる」
「猛獣だと思ったのだな」
「そうでしたが」
「間違ってもそんなことはしない」
 ゴリラはとだ、大尉は断言した。
「何しろ肉なぞ食べないからな」
「ゴリラはですね」
「それでどうして子供を襲う」
 獲物とするかというのだ。
「そんなことはだ」
「有り得ないですね」
「むしろ檻に入った人間の子供を怖がったり気遣う」
「そうした生きものですね」
「むしろだ」
 ここでだった。
 大尉はゴリラのコーナーの隣の池になっているコーナーの中でのどかに暮らしているカバ達を見て話した。
「カバの方が怖い」
「愛嬌のある感じですが」
「神経質で案外狂暴でだ」
 カバ達はというのだ。
「身体も大きく力も強くだ」
「人を襲えばですか」
「怖い、そしてだ」
「命を奪うこともですか」
「あるのだ」
「そうですか」
「地球でもいるが」
 大尉はさらに話した。
「水ライオンという生きものがいる」
「ライオンの一種ですか」
「サーベルタイガーから進化したな」
「ああした外見ですか」
「そうだ、その水ライオンが天敵だが」
 カバのというのだ。
「その水ライオンすら倒す時がだ」
「天敵に勝つのですか」
「ある、そこまでだ」
「カバは強いですか」
「その外見から愛嬌がありだ」
 そうしてというのだ。
「大人しい生きものと思われていますが」
「そうでもないですか」
「普段は何もせずともな」 
 それでもというのだ。
「気が立つとな」
「その時はですか」
「攻撃的になってな」
「人の命さえ奪うのですね」
「そうしたことがあるのだ」
 そうした生きものだというのだ。 
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