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八条学園騒動記

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第七百二十四話 ゴリラの素顔その三

「しかしな」
「それでもですね」
「戦うことはしない」
「あくまで非暴力ですね」
「そこまで平和な生きものなのだ、棒位でだ」
 これを持って行く位でなのだ。
「ゴリラは倒せる」
「棒で殴ればですか」
「ゴリラは身を守るだけでな」
「反撃をしないので」
「簡単にだ」
 こう言っていい位にというのだ。
「倒せるのだ」
「それはステラーカイギュウと変わらないですね」 
 上等兵はここまで聞いて思った。
「まことに」
「そうだな」
「はい、そこまで大人しいのですね」
「そして善良なのだ」
 そう言っていいというのだ。
「優しくな」
「美点ばかりですね」
「若し人間がゴリラから進化していればだ」
 そうして人間になっていればというのだ。
「今より遥かに平和になっていただろう」
「ゴリラがそうであるので」
「きっとな」
「そうなのですね」
「だから怖がることはない」
 ゴリラはというのだ。
「むしろ愛情を以てだ」
「接するべきですね」
「外見で判断しないことだ」 
 決してという言葉だった。
「人も生きものもだ」
「絶対にですね」
「外見でなくな」
「中身で判断することですね」
「そういうことだ」
「それも偏見なので」
「それ故にな、偏見を持つとな」
 そうなると、というのだ。
「何度も言うが」
「見誤りますね」
「昔猿の惑星という映画があったが」 
 この時代でも知られているSF映画の古典的名作である。
「この映画でもゴリラは乱暴者としてだ」
「扱われていましたか」
「チンパンジーが良識派でな」
「確かチンパンジーは」
「あれで案外狂暴だ」
 この生きものはというのだ。
「小型の類人猿は結構な」
「狂暴ですね」
「ニホンザルもヒヒもな」
 こうした生きもの達もというのだ。
「実はな」
「狂暴ですね」
「そうだが」
 それでもというのだ。
「そうは言われないな」
「そうですね」
 エウロパではとだ、上等兵も答えた。
「ゴリラばかり言われて」
「狂暴だの残虐だのな」
「横暴だの獰猛だのと」
「そして創作の世界でもだ」
「悪役ですね」
「だが連合ではな」
 この国ではというのだ。
「全くだ」
「そんなことはないですね」
「狼と同じだ」
 先程観ていたこの生きものと、というのだ。 
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