八条学園騒動記
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第七百二十四話 ゴリラの素顔その二
「そうしたことはな」
「そして攻撃されても」
「非暴力だ」
その行動を貫くというのだ。
「それだけだ」
「まるでステラーカイギュウですね」
上等兵はここでこの生きものを思い出した。
「そうですと」
「あそこまでではないが」
それでもというのだ。
「確かに似ている部分はあるな」
「暴力を振るわないところが」
「そして非常に仲間思いだ」
「ゴリラは」
「家族思いでな」
そうしてというのだ。
「仲間思ひでもある」
「そうですか」
「ステラーカイギュウはな」
この生きもの、動物園に入って最初の頃に地球では絶滅したと認定されたことのある生きものの話をしたのだった。
「仲間が傷付くとな」
「その仲間のところに集まり」
「そしてだ」
そのうえでなのだ。
「助けようとするな」
「そうですね」
「特に雌が傷付くとな」
「そうした習性がありますね」
「そしてだ」
そのうえでなのだ。
「その習性を利用されてな」
「乱獲されましたね」
「只でさえ個体数が少なかったが」
ベーリング海峡付近に二千頭位しかいなかった。
「乱獲されてな」
「地球では二十七年で、ですね」
「一度絶滅したとだ」
「認定されましたね」
「後に発見されたがな」
二十一世紀のことだ。
「それまではな」
「絶滅したとされましたね」
「ステラーカイギュウは完全な草食性でだ」
主食は昆布であった。
「逃げることも戦うこともだ」
「知らなかったですね」
「そしてだ」
そのうえでだったのだ。
「仲間思いだった」
「しかも巨体で動きは鈍いですね」
「ずっと天敵のいない場所にいたからな」
そこでのどかに暮らしていたのだ。
「それでだ」
「逃げることも戦うことも知らず」
「そしてだ」
そのうえでだったのだ。
「仲間思ひだったからな」
「乱獲される条件が揃っていましたね」
「そして発見から僅か二十七年でだ」
それだけの期間でだ。
「いなくなったのだ」
「そうですね」
「そしてゴリラもな」
今自分達が観ている生きものもというのだ。
「同じだった」
「仲間思いであり」
「流石に逃げたり隠れたりはしてもな」
自分達の身を守る為にだ。
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