八条学園騒動記

　　　　　　　　　　　　　　　　狼へのイメージ
　大尉は今度は狼を観た、そのうえで傍にいる上等兵に言った。
「随分太っているな」
「餌がいいのですね」
「そして毛並みもな」　　
　こちらもというのだ。
「いいな」
「この動物園の他の生きもの達と同じく」
「そして解説もだ」
　銀河語で書かれているそれを読むと。
「かなり好意的だな」
「畑を荒らす獣を食べてくれるとありますね」
「獣害を防いでくれるとな」
「書いてありますね」
「自然とな」
「そうですね」
「羊や豚を襲うとはな」
　その様にはというのだ。
「書かれていないな」
「そうですね」
「連合では放牧をしてもな」
「狼に襲われてもですか」
「天の取り分と考えるのだ」
「そうですか」
「特にモンゴルではな」
　この国ではというのだ。
「そう考えている、むしろ畑を守ってくれるからな」
「有り難い存在ですね」
「空を飛ぶ鳥もな」　
　今度は鶏の翼をもつ狼、アーコルを観て話した。
「捕まえたりしてくれるしな」
「鳥の害もですね」
「防いでくれるな」
「やはり有り難い存在ですね」
「それがだ」
　まさにというのだ。
「狼だ」
「農耕社会の考えですね」
「連合の基本は何か」
　それはというと。
「多くの文明、文化がその中にあるが」
「農業ですか」
「その土台はな」
「だから畑を荒らす獣を食べてくれるなら」
「有り難い存在となるのだ」
　そうなるというのだ。
「狼もな」
「そうなのですね」
「エウロパでの狼はだ」
「悪魔ですね」
「まさにそうした位置だな」
「童話では常に悪役で」
　狼と七匹の子山羊や赤ずきんちゃんといったエウロパでも連合でも誰でも知っている童話を思い出しつつ大尉に答えた。
「妖怪にもです」
「狼男だな」
「はい、なっていますね」
「実際にいるな」
　狼男はとだ、大尉は鋭い目になって言った。
「妖怪は、そしてだ」
「狼男もですね」
「私としてはな」
「人間の世界の物陰にですか」
「彼等はいる」
「そういえば狼男の伝承は今もありますね」
「現在進行形でな、何処かの星の森に逃れ」
　そうしてというのだ。
「秘かに暮らしている」
「そう言われまていたりしますね」
「妖怪もいるのが世の中でな」
「狼男もですね」
「いるな、尚連合でも狼男はいるが」
　その彼等はというのだ。