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神々の塔

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第四十二話 血に酔い痴れる女神その一

               第四十二話  血に酔い痴れる女神
 次に戦う神霊達についてだ、メルヴィルは敵を倒した後で出していた自身の神具であるグリフォンに対して嫌そうに言った。
「女神様と言っても色々やな」
「次に戦う神霊の方ですか」
「次はメソポタミアの神々の何柱かでな」
 彼等が相手でというのだ。
「それでその中にな」
「確か」 
 グリフォンは自分の背にいる主に応えて言った。
「アナト女神もおられますね」
「そや、あの女神さんもおられるわ」
「戦の女神であられますね」
「それでその戦いぶりがな」 
 この女神のそれはというのだ。
「もう敵を見たら手あたり次第にや」
「殺して」
「殺し尽くしてな」
「その血の中で高らかに笑い」
「そして血の匂いに酔い痴れるな」 
 そうしたというのだ。
「女神さんや」
「そうでしたね」
「戦はしてもな」
 メルヴィルは難しい顔でさらに言った。
「わしは殺戮はせんからな」
「それはお嫌いですね」
「極悪人には容赦せんでもな」 
 それでもというのだ。
「そやけどな」
「それでもですね」
「殺戮はせん、戦で敵を倒しても」
「それを楽しむことはですね」
「せんからな」
 だからだというのだ。
「わしはあの女神さんはな」
「苦手ですか」
「普段はええが」
 アナト女神のというのだ。
「そやけどな」
「それでもですね」
「戦をする時のあの方はな」
 どうにもというのだ。
「好きやない」
「そうですか」
「そやからちょっとな」
「今度の戦は」
「憂鬱や」
 彼女と戦うと思えばというのだ。
「どうもな」
「そうなのですね」
「そやな、アナト女神も無駄な殺戮はせんが」
 羅も言ってきた、彼は今自身の神具である麒麟に乗っている。
「それでも殺して血に酔うのはな」
「よくないとですね」
「我もそういうのは趣味やない」
 こう麒麟に答えた。
「ほんまな」
「ではご主人も」
「戦は血に酔うもにゃないとな」
「お考えですね」
「政や、敵を倒すんやなくてな」
「目的を達成する」
「その為のもんでな」
 そう考えているからだというのだ。
「血は流れてもな」
「その匂いはですね」
「酔うもんやない、酔うのは酒や」
 こちらだというのだ。
「その後の勝利の美酒でや」
「血ではない」
「そや、血は流れてもな」 
 それでもというのだ。 
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