| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

星河の覇皇

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第八十五部第一章 国防省への忠告その六十

「もうな」
「飲み終えてからよね」
「三本空けてな」 
「それからというのね」
「聞くな、飲み過ぎ注意っていうのは」
「飲み終えてから聞いても意味ないわね」
「駄目か、って言ってもな」
 そのワインをさらに飲む、かなりの甘口で彼女にも祖母にもよく合っていてしかも料理とも合っていて酒が進んでいるのだ。
「飲むよあたしは」
「あんたはそういう娘ね」
「昔からそうだろ」
「お酒はどれだけ飲むかって決めて」
 そうしてというのだ。
「そこまで飲む娘ね」
「お酒好きだしな」
「そこはお祖父ちゃん似ね」
「祖父ちゃんか」
「ええ、あの人にね」
「祖父ちゃんも相変わらずだな」
「熱心に働いてくれているわね」
 カバリエの夫はメキシコでかなり大きな農園を経営している、多くの社員を雇って彼等に働いてもらっている経営者なのだ。
「今も」
「ああ、それで今度苺が出荷でさ」
「苺も売るのね」
「農家も大変だよな」
「そうよ、だからね」
「祖父ちゃんはいつも頑張ってるんだな」
「結婚するならお祖父ちゃんみたいな人にすることよ」
 孫娘にこうも言った。
「結婚するならいい人とだけれど」
「だからなんだな」
「お祖父ちゃんみたいな頑張って働いて家では優しい」
「そうした人とか」
「結婚してね」
 そしてというのだ。
「お祖父ちゃんを尊敬することよ」
「祖母ちゃんは尊敬しなくていいのかよ」
「自分を尊敬しろと言う人は尊敬されないわ」
 カバリエはこのことは絶対だと述べた。
「むしろ逆よ」
「馬鹿にされるか」
「そんな恥知らずなことを言える人はそうよ」
 人に自分を尊敬しろ、という言葉を出せる者はというのだ。
「冗談ならともかく本気で言う人はね」
「かえってそうなるか」
「ええ、そんな言葉を言う人をよく見ることよ」
「碌な奴じゃないか」
「確実にね」 
 そうであるというのだ。
「だからね」
「そんな奴はよく見てか」
「わかることよ」
「絶対に碌な奴じゃないか」
「そして軽蔑して」
 そのうえでというのだ。
「反面教師にすることよ」
「厳しいな」
「厳しくないわ」
 では何であるかもだ、祖母は孫娘に話した。
「人生の教訓の一つよ」
「そちらなんだな」
「そう、だから」
 それでというのだ。
「そうしたことを言う人に出会う機会があったらそれを活かすことよ」
「正直軽蔑する相手には会いたくないな」
「けれど生きていれば出会うわ」
「軽蔑すべき相手にもか」
「そうしたものでもあるのが人生よ。ただ」
 カバリエは鴨のステーキを食べつつ話した。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧