星河の覇皇
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第八十五部第一章 国防省への忠告その五十九
「それではね」
「一番とか全部とかはか」
「言えないわ、若し言えたら」
その場合はというと。
「気付かずに自白しているのよ」
「自白?」
「自分が愚かだとね」
「その人を一番知っている、全部知っていると言ったらか」
「人の多面性を理解していないから」
このことをというのだ。
「だからね」
「難しい話だな」
「そうかしら」
「それだけで馬鹿になるんだな」
孫娘はチーズを食べつつ祖母に述べた。
「一番知っているとか全部知っているとか言っただけで」
「実際にそうした人を見たから言えるわ」
「祖母ちゃん自身がか」
「ええ、けれどその人は人の気持ちを全くわからない人だったわ」
「相手がどう思うか、か」
「それで無責任で自己中心的な発言や行動を繰り返したわ」
「そんな奴嫌われるだろ」
孫娘は一言で述べた。
「絶対に」
「知り合いのほぼ全員からそうなったわ」
「だろうな」
マルグリットは祖母の言葉をその通りとした。
「そんな奴あたしでもな」
「嫌うわね」
「相手にしないさ」
「それである人のことを一番よく知っているって絶対の自信で言っていたけれど」
「その人のこと全くわかっていなかったんだな」
「人の気持ちがわからない人よ」
だからだというのだ。
「わかる筈がないわね」
「そうだよな」
「今は親戚全員から縁を切られて一人よ」
「そこまで嫌われたんだな」
「日頃の行いがあまりにも酷かったから」
「あまりにも性格悪くて頭も悪かったからか」
「だからよ、そうした人を見てきたから」
カバリエは孫娘の顔を見つつ彼女に話した。
「お祖母ちゃんは言わないのよ」
「祖母ちゃんも色々あるんだな」
「人間生きていればね」
それでというのだ。
「そうなるわよ」
「そうなんだな」
「ええ、しかしあんたのお料理が美味しくて」
美食家として知られるカバリエからもだ、尚カバリエは食事だけでなく酒についてもかなりの造詣があることで知られている。
「ワインが進むわね」
「ああ、あたしもな」
「どんどん飲んでいるわね」
「元々好きだしな」
酒、それがというのだ。
「だからな」
「飲み過ぎには注意と言っても」
「飲み終わってから聞くわ」
「模範解答ね」
「ああ、これだけ美味いとな」
サンチアゴ星系産のその赤ワインはというのだ。
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