イベリス
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第百十九話 秋という季節その七
「本当に」
「私もそのお話を聞いてわからなくなりました」
友達についてだ、咲は実際にそうなっていた。そのうえで部長に対して真剣に考えつつそうして言うのだった。
「どうも」
「その辺り難しいね」
「そうですよね」
「まあ一生考えることかな」
「お友達とはどんなものか」
「そのことはね」
咲にこれまで以上に考える顔で述べた。
「そうも考えてるよ」
「ううん、一生なんて」
咲は部長の今野言葉からこう言った。
「哲学ですね」
「そうだね、哲学だよね」
「そうですよね」
「僕純文学は読むけれど」
部長はここで咲に自分が読む本の話をした。
「日本語訳の海外文学が好きだよ」
「海外ですか」
「三銃士とかああ無情とか読んだし」
そうした作品等をというのだ。
「紅楼夢とかトムソーヤーの冒険とかも」
「色々な国のを読んでますね」
「戦争と平和も読んだし」
トルストイの代表作であるこの作品もというのだ。
「アーサー王だってね」
「本当に色々ですね」
「けれど哲学は読まないんだ」
こちらの本はというのだ。
「どうも馴染めなくてね」
「それで、ですか」
「読まないんだ」
「そうなんですね」
「けれど今の僕の考えが哲学かっていうと」
友人とはどういったものかということについてのというのだ。
「それはね」
「そうなりますね」
「うん、そうだよね」
咲に考える顔のまま話した。
「これって」
「そうですね」
「哲学書読まなくても哲学的考えをしてもいいんだね」
「私も哲学書は読まないですね」
それはとだ、咲も言葉を返した。
「そういえば」
「小山さんもなんだ」
「はい、ですが純文学も読みますし」
咲にしてもだ。
「ライトノベルや漫画と一緒に」
「そうそう、どれも楽しんで読んだら」
「それでいいですね」
「それでこの前泉鏡花も読んだんですが」
この作家の作品をというのだ。
「夜叉ヶ池を」
「あの作品なんだ」
「それと天主物語を」
この作品もというのだ。
「それでファンタジーだって思いました」
「あの人の作品妖怪よく出るしね」
「ご存知なんですか」
「中学校の時結構読んでね」
泉鏡花の作品はというのだ。
「知ってるんだ」
「そうですか」
「純文学はね」
それこそというのだ。
「別に肩肘張らないで読んでいいよ」
「ライトノベルみたいに読んでもいいですね」
「楽しんでね」
「それでいいですね」
「うん、けれどそこから知識が得られて」
そうしてというのだ。
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