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第九十三話 最悪の日その一

               第九十三話  最悪の日
 この日かな恵達はバイト帰りに団地のすぐ傍のカラオケボックスに入っていた、そしてそこで飲んで食べて歌っているが。
 その中でだ、富美子は憮然として言った。
「明日で遂にね」
「夏休み終わりね」
 留奈も同じ顔で応えた。
「もうね」
「そう、だからね」
 富美子は留奈にマイク片手に話した。
「今最悪な気持ちよ」
「私もよ」
「そうよね」
「一年で一番悪い日は何時か」
「明日よね」
「八月三十一日よ」
 この日だというのだ。
「何といってもね」
「絶対に来て欲しくない日ね」
「ええ、それを感じだすのは」
 富美子はさらに言った。
「二十日を過ぎた頃位からで」
「二十五日になったらどんどん強くなって」
「今日になったら」
「三十日だとね」 
 八月三十日である。
「もうね」
「時間止まって欲しい」
「そう思うわよね」
「子供の頃からよね」
 こう思うことはとだ、理虹も言ってきた。
「そう思うのって」
「あんたも同じ気持ちでしょ」
「そう思わない人いないでしょ」
 富美子に彼女と同じ表情で答えた。
「やっぱり」
「そうでしょ」
「ええ、明日になって欲しくないわ」
「時間が止まって欲しいわね」
「今日のままでね」
 それでというのだ。
「エンドレスでね」
「いて欲しいわね」
「そうよね」
「エンドレスエイトね」
 こう言ったのはかな恵だった。
「それって」
「ああ、アニメのことよね」
「何か制作が修羅場で」
「同じ様な話を何話もやって」
「それが作中の大きな謎になってたのよね」
「けれどそれ以上に視聴者の人達が混乱して」
 間違えて先週の話を観てしまっているのかとだ、実際に放送時期視聴者の間でかなりの混乱が起こってしまったという。
「大変だったみたいね」
「そうみたいね」
「それでもね」
 富美子はかな恵にも言った。
「今日ばかりはね」
「ループして欲しいのね」
「そう思うわ、ただね」
「ただ?」
「親戚でスーパーで働いてる人いるけれど」
 富美子はこの人の話をした。
「スーパーにいたら夏休み関係ないそうよ」
「お仕事してたらそうでしょ」
 かな恵は普通の顔で応えた。
「だって夏休みとかね」
「学生の間だけよね」
「もうお仕事したら」
 それならというのだ。 
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