大阪の鵺
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第三章
「ご主人と一緒になのよ」
「ここに住んでるんだ」
「けれど今ご主人入院されてるの」
「それは残念だね」
「息子さん夫婦は別の場所でお孫さんと一緒に暮らしておられるけれど」
それでもというのだ。
「今はお一人なの」
「寂しいだろうね」
「ご主人はこの前盲腸になって」
「ああ、何かって思ったら盲腸なんだ」
「そう、別に癌とかじゃないから」
深刻な病気でないというのだ。
「奥さんも落ち着いてるわ」
「それならいいね」
「ええ、ちなみにご主人の趣味はボードゲームで」
そちらでというのだ。
「ビルの中にはそのお店もあるわよ」
「へえ、ボードゲームの」
「色々揃ってるから」
その店にはというのだ。
「人気あるのよ」
「そうなんだね」
「ええ、それで最上階に着いたら」
英梨はそれからの話もした。
「屋上に出る鍵借りたし」
「その鍵を使ってだね」
「それでね」
そのうえでというのだ。
「屋上に出ましょう」
「それじゃあね、一体何がいるか」
武藤は真剣な顔で述べた。
「見てのお楽しみだね」
「そうね、鳴くんだから」
英梨はこのことから考えて述べた。
「幽霊じゃないわね」
「妖怪だね」
武藤も言った。
「まずね」
「そうよね」
「幽霊だと」
「泣くよね」
「それがどんな泣き方でも」
それでもというのだ。
「幽霊は魂が身体から出たものだから」
「人間だしね」
「人間は喋って」
そうしてというのだ。
「そのうえでね」
「泣くわよね」
「鳴くことはないよ」
人間はというのだ、幽霊は魂でありそれが身体から出ただけの存在であるからだというのである。このことを言うのだった。
「そうだよ」
「そうよね」
「だから鳴くとなると」
それならというのだ。
「妖怪だよ」
「そうなるわね」
「まあ妖怪でもね」
「悪くないなら」
「それでいいしね」
「その通りよね」
英梨もそれはと答えた。
「本当に」
「うん、それじゃあ」
「これ持ってて」
英梨は武藤に警棒をもう一本出して告げた。
「用心でね」
「二本持ってたんだ」
「そう、一本は私が持って」
「もう一本は僕が持って」
「それでね」
そうしてというのだ。
ページ上へ戻る