大阪の鵺
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第二章
警棒片手にサングラスとマスクそしてヘルメット姿で制服からジーンズとセーター姿になった英梨を見てだ、武藤は横から言った。
「絶対に襲われない恰好だね」
「そうかしら」
「その前に通報されるよ」
むしろというのだ。
「そんな格好だよ」
「学生運動みたいだから」
「今だと不審者かな」
そう見られるというのだ。
「もうあからさまにね」
「怪しい恰好なのね」
「そうとしか見えないよ」
横を歩く英梨にこうも言った。
「だからそこは覚悟してね」
「通報される可能性は」
「そうしてね」
「まあ襲われないならね」
英梨は暗がりの中のサングラスは見えにくいと思いつつ武藤に返した。
「それでいいわ」
「そうなんだ」
「女の子としてはね。通報されてもね」
「疚しいことないんだ」
「ええ、あとビルの管理人さんは知り合いで」
今から行くそちらの話もした。
「もう事前にお話してるから」
「それでなんだ」
「もうね」
「問題なく入られるんだ」
「管理人さんも気になっていて」
その鳴き声がというのだ。
「ビルは雑居ビルで夜特に真夜中は人いないけれど」
「マンションじゃないから人は住んでないんだ」
「管理人さんは住んでいて」
そのビルにというのだ。
「気になってるそうで」
「英梨ちゃんが調べてくれるからなんだ」
「いいって言ってくれたのよ、何でもご自身で調べるには」
自分自身はというのだ。
「凄くね」
「怖いんだね」
「そう言ってて」
「英梨ちゃんが言ったら」
「二つ返事だったわ」
「そうなんだね」
「管理人さん幽霊とか妖怪とか大の苦手なのよ」
そうした話がというのだ。
「それで若しと思って」
「僕達の学校そうした話滅茶苦茶多いから」
武藤は自分達が通っている八条学園の話をした。
「幽霊とか妖怪は」
「出て来てもね」
「全然怖くないけれど」
「見た人も多いしね」
「そんな学校にいるからね」
「人を襲う様じゃないとね」
「問題ないわよね、ちなみにお守りとかお札も持ってるから」
英梨は武藤にそうしたものを出して見せた、そこには十字架や大蒜そしてコーランまである。
「安心してね」
「そっちもフル装備だね」
「ええ、だからタチの悪い幽霊や妖怪でも」
ビルの屋上で鳴いているのがというのだ。
「別にね」
「問題ないんだ」
「全くね」
こう言うのだった、そしてだった。
二人でビルに行って一階の事務所で管理人である優しそうな顔立ちの老婆と話してそのうえでだった。
ビルに入った、英梨はまずはエレベーターで最上階に向かいつつエレベーターの中でも一緒にいる武藤に話した。
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