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イベリス

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第百五話 何の為に学ぶかその二

「別にいいと言われてもな」
「それっていらないってことよね」
「それでも持って来たりな」
「無神経さを発揮したのね」
「そうだったんだ」
「何か何をしてもね」
「いいところがないな」 
 こう咲に言った。
「この人は」
「生きていて何の努力もしないとそうなるのね」
「ああ、もうな」
「もう?」
「白痴と言ってもな」
 その様にというのだ。
「いいだろうな」
「努力しないと何も備わらないし」
「生きていてずっと何の努力もしないとな」
「何もない」
「人格でもな」
 そこから見てもというのだ。
「本当にな」
「何もない人で」
「苦労から人は得られるんだ」
「努力して」
「ああ、努力すると苦労もな」
 これもというのだ。
「人は経験するんだ、だからな」
「努力しないと苦労もなくて」
「そして備わるものもな」
 これもというのだ。
「なくてな」
「白痴みたいになるのね」
「だから奥さんが去った時もな」
 この時もというのだ。
「感謝しないでな」
「確か爪切りまで持って行ったよね」
「そんなこと言ったんだ、十数年働かない自分を養ってくれて」
 金銭面でというのだ。
「料理まで作ってくれた奥さんがな」
「去って」
「自分がそんな人間でな」
 それでというのだ。
「甲斐性もなくてな」
「爪切りまで気にするなんてね」
「器が小さいな」
「物凄くね、そんなのね」 
 咲は言った。
「呆れる位よ、それを人に言ったのよね」
「だからお父さんも知ってるんだ」
「そうよね」
「いや、奥さんに爪切りまでお世話になっていた甲斐性なしにな」
 父は飲みつつ話した。
「そこまでしてもらったことに恨みがましく言う恩知らず」
「どっちも凄いわね」
「ある意味な、そこにな」
 さらにというのだ。
「気にする器の小ささ人に言うな」
「無神経ね」
「こうなるとな」
「駄目ね」
「本当に白痴だってな」
 その様にというのだ。
「思った」
「そこまで酷いと」
「お父さんはな」
「そうなのね」
「だから咲はな」
「こうはならないことね」
「この人は本当に生まれてからな」
 それからというのだ。
「一切努力をしなかったんだ」
「それで大人になったのね」
「五十位にな」
「五十でそれ」
「つまり五十代で子供だったんだ」
「だから自分をこの世で一番偉いとか思ってたのね」
「子供にしか相手にされなかったそうだ」
 人付き合いはというのだ。 
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