イベリス
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第百五話 何の為に学ぶかその一
第百五話 何の為に学ぶか
咲は休日を満喫したが予習復習は欠かさなかった、帰った父は母からその話を聞いて今は寝る前に麦茶を飲んでいる咲に言った。
「いいことだよ、咲は違うな」
「どう違うの?」
「真面目に努力しているな、その人のことはお父さんも知ってるよ」
「神戸の天理教の教会の人ね」
「ああ、本は読んでいてもな」
その人はとだ、父も話した。
「ただ読んで知ったかぶりをな」
「してるだけだったの」
「それは努力じゃなくてね」
「楽しんでもいなかったのね」
「あれだ、知識を手に入れてな」
そしてというのだ。
「それを活かすんじゃなくてな」
「ああ、いつもふんぞり返っていたそうだから」
このことからだ、咲は察して言った。
「自分が相手より上に立つ、マウント取る」
「その為にな」
「読んでいただけね」
「本を読むのは楽しむか」
「学ぶ為ね」
「学んでそれを自分なり誰かの役に立てる」
「自己満足の為のものじゃないわね」
「楽しむならな」
自分がというのだ。
「それならそれでいいんだけれどな」
「自分が偉いと思う為だったら」
「もうな」
「読まない方がいいわね」
「ああ、こんな間違った本の読み方なんてな」
「するものじゃないわね」
「何でもな」
父は梅酒をロックで飲みつつ咲に話した。
「ある人に世界の国旗の本を見せてな」
「そうした本もあるわね」
「インドネシアとポーランドの国旗の違いを聞いたんだ」
「ああ、あの二国の国旗ってね」
咲はすぐに両国の国旗を思い出して答えた。
「そっくりなのよね」
「それで貸した人が何か答えたらしいんだ」
「その答えの内容はお父さん知らないのね」
「ああ、ただ本を貸してそこでその答えにな」
それにというのだ。
「馬鹿にした様な上に立った様な」
「そんな笑顔で見てきたので」
「それで偉そうに言ってきたらしいんだ」
「そうだったの」
「その話でお父さんは思ったんだ」
「その人が本を読んでいたのは自分が偉いと思う為で」
「相手に思わせる為でな」
そうしたものでというのだ。
「自己満足だったんだってな」
「思ったのね」
「そうだ、それじゃあな」
「本を読まない方がいいわね」
「しかも人から本を借りてな」
そうした時のことも話した。
「ああだこうだって感謝も言わないでな」
「文句言ってたの」
「それも偉そうにな」
「感謝しない人って聞いてたけど」
「借りてだ」
人から本をというのだ。
「それでな」
「そう言っていたのね」
「だからもう人もな」
「本を貸さなくなったのね」
「それで人に貸してもな」
「そうだったのね」
「だからそちらでもな」
本のことでもというのだ。
「人から呆れられたらしい」
「そんな人だったの」
「しかも人に本をあげると言うとな」
自分の本をというのだ。
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