八条学園騒動記
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第七百三話 桜だけでなくその十
「やはり連合らしくな」
「品がないですね」
「連合では誰でもだ」
それこそ国家の要人でもだ。
「そうしたものを口にする」
「それも平気で」
「今の日本の首相もな」
伊東、彼女もというのだ。
「おでんがだ」
「好きなのですか」
「そして時間がないからと言ってな」
エウロパでは貴族ともなれば常に余裕ある食事を摂ることが嗜みとなっていてそれをしないと無作法と思われる。
「昼はよくジャンクフードをだ」
「連合では食べますね」
「一刻の首相それに大統領がな」
「昼にジャンクフードですね」
「夜もな」
「そんなものですね」
「二十世紀の首相でだ」
大尉はうどんの残り少ない麺を刻んだ葱と一緒に食べつつ話した。
「昼はいつもお握りとバナナだけとだ」
「二十世紀の日本で」
上等兵も親子丼の残りを食べつつ応えた、二人共口にしているものは残り少なくなっている。尚満腹に近くなっているのも同じだ。
「それは」
「それも昭和の後半でもな」
「もうバナナも安くなっていて」
「お握りは普通だ」
「そんな軽いですか」
「昼食をな」
「いつもでしたか」
「余裕のあるよい食事なぞな」
大尉はその首相に対して軽蔑を込めて述べた。
「口にしようとだ」
「しなかったですか」
「その発想すらだ」
そもそもというのだ。
「少なくとも昼はな」
「その首相にはなかったですか」
「そうだった」
中曽根康弘という人物である、当時は過激と言われたが実際はかなり穏健ではなかったと指摘されている人物だ。
「私が見るには」
「昼食はいつもお握りとバナナだけとは」
「それでは量もわかるな」
「最早推して知るべしですね」
「そんな粗末な食事でだ」
「お昼を済ませ」
「どうせ食べたらな」
その後はというのだ。
「休まずな」
「すぐに仕事ですか」
「そうしていた、そんな余裕のないだ」
「仕事振りでしたか」
「そうだった、むしろ連合ではな」
この国ではというのだ。
「立場があるとな」
「そうした仕事ぶりがいいとですか」
「思われている、デスクに座ったままだ」
「食事を摂る」
「すぐに食べられるものをな」
「すぐに食べ終えて」
「そして休むことなくな」
デスクに座ったままでというのだ。
「まただ」
「働くのですね」
「食後は休む、何ならだ」
大尉は軽蔑を込めて上等兵に言った。
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