ハッピークローバー
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第八十一話 甲子園へその十二
「やってるからね」
「いいのね」
「そうよ、デートもね」
「いいのね」
「野球を観ながらね」
「そうなのね」
「よくあることよ、特に阪神を応援して奈良」
そのうえでのデートならというのだ。
「もうね」
「最高ね」
「そうよ、しかも巨人に勝つと思うと」
「最高の最高ね」
「応援するチームが悪いチームを正々堂々と成敗する」
この世の邪悪を全て集めた巨人をというのだ、巨人程この世に悪を喧伝している存在はないからである。
「こんなものが観られるって」
「いいわね」
「まあ完封して十点差勝ちはね」
母は笑って言った。
「いつもだから」
「私達が観に行く時も」
「観られるわよ、そう思ってね」
「一緒に行くことね」
「ええ、あと多少冒険するなら」
母は娘に笑ってこうも言った。
「いいわよ」
「冒険?」
「そう、達川君とね」
「いや、それは」
一華は母のその言葉に顔を赤くさせて応えた。
「もうね」
「しないの?」
「そんなのとてもよ」
顔を赤くさせたまま言った。
「出来ないわよ」
「奥手ね」
「そういうのはね」
どうにもという口調で言うのだった。
「私は」
「奥手ね」
「奥手も何も」
慌てた口調での返答だった。
「まだまだ早いでしょ」
「昔は十三歳で結婚してわよ」
「だから十五でなの」
「そんなことなんてね」
「普通だったの」
「ああ、結婚は卒業してからにしてね」
これまたあっさりと言う母だった。
「いいわね」
「高校を?」
「男の人は十八歳から結婚出来るからね」
「結婚も」
「とても考えられないっていうのね」
「そうよ」
まさにという返事だった。
「とても」
「そういうけれどね、そうした知識もないとよ」
「駄目なのね」
「要は間違えないことよ」
「それが大事なの」
「そうよ、間違いが何かわかるわよね」
「赤ちゃんとか」
一華はかなり戸惑いながら答えた。
「そうした」
「そうよ、そうしたことがなかったら」
それならというのだ。
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