イベリス
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第百話 夏の終わりその十二
「よくないわ、そんなお話もあるでしょ」
「多いわね」
創作にとだ、咲もそうした作品を思い出して話した。
「確かにね」
「そうでしょ」
「それで暴走して」
キャラクターも国家も組織もだ、そこから破滅それも自滅に近い形でそれに至るというのは創作のストーリーのオーソドックスな形の一つである。
「終わるわ」
「そうなることもね」
「あるから」
「個人の欲も気をつけて」
無欲の方がいいこちらもであってとだ、母はさらに話した。
「国家も文明もね」
「溺れないことね」
「それが大事よ」
「そういうことね」
「欲はコントロールして」
そしてというのだ。
「不平不満は持たないで」
「溺れもしない」
「そのバランスがね」
「大事ね」
「そうよ、人間はね」
「そうなのね」
「だから咲もね」
是非にと言うのだった。
「そのバランスをね」
「忘れないでいくのね」
「欲のね、いいわね」
「ええ、不平不満は持たないで」
「そしてね」
そのうえでというのだ。
「溺れない」
「程々ね」
「要するにね、けれどその程々は努力して保つものよ」
「自分の欲は小さくてよくて」
「国家とか文明とか」
「そちらには大きくでも」
「溺れない、いいわね」
「ええ、それを間違えたら」
ふとだ、咲は。
ある超大国の不動産王と呼ばれたかつて大統領だった人物を思い出しそのうえで母に対して話した。
「ホワイトハウスに乗り込めとか」
「ああしたこと言い出すわよ」
「そうよね」
「お母さんあの人嫌いだから思うけれどね」
「私も。結局は自分第一よね」
「自分の国第一って言ってもね」
「自分の欲は大きくて」
そうした人物でというのだ。
「自分の国や文明の欲はね」
「身勝手なものでね」
「それで自分の欲に溺れる」
「そんな人よね」
「ああなったら駄目よ」
「ええ、覚えておくわ」
確かな声でだ、咲は頷いた。そうしてだった。
この日も母と話していった、そのうえでまた人生のことを学んだのだった。
第百話 完
2023・2・22
ページ上へ戻る