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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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第百三十七話 邪神、封じられるのことその十二

 だがそれでも神は倒れない。それを見てまた言う十兵衛だった。
「やはりもう一人足りぬか」
「じゃあとりあえず誰か一人呼ぶかい?」
「うむ、それがいいだろう」
 こう言いながら戦い模索もしていた。しかしだ。
 ここでその一人が来た。それは。
 ミヅキだった。何と生きていたのだ。
 そのミヅキを見てだ。ズィーガーが言った。
「くっ、君はまだ戦うというのか!」
「・・・・・・・・・」
「ならば私が相手をしよう!覚悟し給え!」
「いえ、待って」
 とりあえずミヅキに向かおうとするズィーガーをだ。命が止めた。
 そのうえでだ。こう言ったのである。
「今の彼女には邪気がないわ」
「何っ、そうなのか」
「ええ。今の彼女にあるのは」
 それならばだ。何があるかというと。
「本来の。人としての心よ」
「ではこれまでの彼女は」
「邪心の社だったのよ」
 それになっていたというのだ。これまでのミヅキはだ。
 だが今の彼女は何か。ミナはそのことをまた語った。
「人よ。もう羅将神ではないわ」
「では今は」
「私は。今は」
 ミヅキ自身もだ。ここで言うのだった。
「人。だからこそ」
「人として私達と共に戦うというのか」
「ええ」
 こくりとだ。ズィーガーの問いに頷きもする。
「そうさせてもらいたいけれど」
「そうか」
 ズィーガーには躊躇いがあった。かつての敵ということからだ。
 しかしだった。ナコルル達はだ。
 確かな顔と声でだ。こうミヅキに言ったのだった。
「わかりました。それではです」
「お願いするわね」
「残る一方は任せたわ」
「はい、それでは」
 三人に受け入れられてミヅキもだ。戦いに加わることになった。こうしてだ。
 八方から邪神を攻めることになった。それによってだ。邪神は次第に追い詰められていた。
 そしてだ。邪神の動きが止まった。一瞬だがだ。
 その一瞬をだ。ミナは見逃さなかった。それでだった。
「今よ」
 仲間達に告げた。この言葉が出ると同時にだ。
 戦士達は一斉に動き邪神に突進した。そのうえでだ。
 一気にだ。渾身の攻撃を繰り出した。八人同時にだ。その攻撃を受けてだ。
 邪神アンブロジアは動きを完全に止めた。そのうえでだ。
「マサカ、我ヲ倒ストハ・・・・・・」
「これで終わりだな!」
 覇王丸が邪神の苦悶の声に応えて言う。
「そうだろ、神様!」
「我ガ倒レルトハ」
「人間だってな。力を出せば神様に勝てるんだよ」
「はい、今それが確かなものになりました」
 ナコルルもだ。覇王丸の横から言った。
「私達がそれを」
「ああ、やってみせたな」
「邪神アンブロジアはこれで倒れました」
 確かな声で言うナコルルだった。
「まさか。封じることなく倒せるとは」
「だがな。確かにやったぜ」
「はい、では」
「俺達の戦いがまた一つ終わったな」
 清々しい笑みになってだ。覇王丸は述べた。
「やったぜ、本当に」
「これで邪神は」
「消エル・・・・・・」
 邪神の最後の声だった。この声を発し。
 煙の様に消えていく。そうしてだった。
 邪神アンブロジアは戦士達に囲まれた中で消え去った。それを見届けてだ。
 ミナがだ。静かに言ったのだった。
「本当に。一つの戦いが終わったわ」
「そうね。じゃあ後は」
「他の皆のところに行きましょう」
 見れば戦いはまだ続いていた。戦場の戦いはだ。
 それを見てだ。狂死郎はだ。
 ミヅキにだ。こう声をかけるのだった。
「それで御主じゃが」
「ええ、これからのことね」
「御主はどうするのじゃ?これから」
「巫女に戻るわ」
 こうするとだ。ミヅキは狂死郎に答えた。
「私の本来の姿に」
「ではじゃ」
「それでは?」
「わしと共に来るのじゃ」
 そうしろとだ。彼はミヅキを誘ってきた。
「御主の戦いも見事な舞じゃ。共に舞おうぞ」
「舞う、神の舞いを」
「そうじゃ。舞うのじゃ」
 狂死郎はミヅキにこう述べていく。
「そうするか?どうするのじゃ?」
「少し考えさせてもらうわ」
 ミヅキは即答しなかった。しかしだ。
 狂死郎にだ。静かに言ったのである。
「けれど今は」
「うむ、どうするのじゃ」
「この場で戦うわ。人間として」
「左様か。それではじゃ」
「ええ、二つの世界の為に」
 そのだ。二つの世界の為にだと。ミヅキは顔を上げて言った。
「戦うわ」
「よし、それではじゃ」
 こうしてだった。ミヅキもこの場面でだ。
 戦いに加わった。人間として。
 刹那も邪神も倒れた。しかしそれでもまだ戦いは続いていた。その激しい戦いの中でだ。人間達は次第にだが確実にだ。その手に入れるべきものを手に入れようとしていた。


第百三十七話   完


                          2012・1・14
 
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