恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS
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第百三十七話 邪神、封じられるのことその十
「私が犠牲になることでだ」
「けれど父さんは生きる」
「そうだ。御前達の中でだ」
やはりだ。そうなるというのだ。
「わかったな。それならばだ」
「・・・・・・・・・」
楓は沈黙した。しかしだった。
やがて顔をあげた。その顔は意を決したものだった。
その顔で身構えてだ。そして言ったのだった。
「わかったよ。それじゃあ」
「守矢、そして月に伝えてくれ」
彼等のこともだ。黄龍は言った。
「御前達と共にいられて。よかったとな」
「そう伝えればいいんだね」
「そうだ。私は御前達の中で生きる」
だからこそだ。そうしていいというのだ。
「頼めるか」
「うん、それじゃあ」
楓は身構えたまま頷きだ。そしてだった。
渾身の気と力を込めてだ。青龍の力を黄龍に向けて放った。
そして三人も。彼に続く形でだ。
次々とそれぞれの力を放ちだ。黄龍に放った。それを受けてだ。
黄龍はだ。全ての力を受けそのうえでだ。彼の受けた力をだ。
刹那に注ぎ込む。それから言ったのだった。
「これで・・・・・・全ては!」
「貴様、その命を賭けて」
「言った通りだ!貴様を封じる!」
「四霊の力、それにか」
「私のこの力、黄龍の全ての力があれば」
「巫女の犠牲なぞはか」
「不要!月、生きろ!」
娘にだ。捧げた言葉だった。
「御前は御前の幸せを求めろ!」
「ぐおおおおおおおおおおっ!!」
刹那は五色の光に飲み込まれた。黄龍が放つ。
そして黄龍もその中に消えた。闇の門もだ。
あらゆるものが光の中に消えたのを見てだ。楓は言った。
「これで常世は」
「うむ、封じられた」
まさにそうなったとだ。翁が楓に答えた。
「全てはな」
「常世の心配はなくなったんですね」
「尊い犠牲じゃった」
しかしだ。それでもだというのだ。
「じゃがこれでじゃ」
「そうだね。父さん・・・・・・」
「黄龍の言った言葉だが」
嘉神が楓に述べてきた。
「わかっているな」
「うん、僕達は」
「生きろ」
こうだ。黄龍の言葉をまた彼に伝えたのだ。嘉神の口からも。
「わかったな。御前は生きろ」
「うん、何があっても」
「我等も生きる」
示現も言った。
「これからの。人としての生涯もな」
「親父殿、ではおいらもなのです」
虎徹もだ。父の言葉に頷きだ。
そのうえで意を決した顔になってだ。そして言ったのだった。
「次の白虎として生きるのです」
「そうだね。だから僕は」
「楓、お父様は」
「己の責を果たされたのだな」
楓の後ろにだ。月と守矢が来た。そのうえでだ。
二人でだ。楓に問うてきたのだった。
「私を助ける為に」
「己を犠牲にされたのか」
「うん、そうしたよ」
小さく頷きだ。楓はその通りだと答えた。
「そして刹那も常世もね」
「なら私は」
「姉さんにも兄さんにもね」
父の遺言をだ。楓は二人に告げる。
「生きろ。そう言ってたよ」
「そう、生きろというのね」
俯き目をやや伏せさせた顔でだ。月は応えた。
そして守矢はだ。確かな顔で言ったのだった。
「父上の最後の遺言、確かに受け取った」
「うん、それでだね」
「私は生きよう、これからも」
「私も」
そして月もだった。顔をあげてだ。
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