恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS
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第百三十七話 邪神、封じられるのことその九
「最早な」
「しかしだ」
示現が仲間達に述べた。
「あの娘を犠牲にはできない」
「なら。やるしかないな」
楓は覚悟を決めた顔で示現に応えだ。そしてだ。
刹那と闇の穴を見つつだ。そのうえで言ったのだった。
「俺達四人で」
「うむ、残された力を使えば何とかな」
「あの男も常世も封じられる」
「何とかな」
四人は今度は自分自身の命でだった。
刹那を、常世を封じようとしていた。そのうえでもう一度闇に向かおうとした。
だがここでだ。四人の間をだ。何かが駆けた。
そしてそれがだ。刹那を正面から貫いた。それは。
黄龍だった。その彼を見てだ。翁が驚きの声をあげた。
「御主、もしや」
「闇は私が引き受ける」
こうだ。刹那を己の剣で貫きだ。常世まで突き刺したうえで言ったのである。
「無論月にもだ」
「貴様だけで封じるというのか」
嘉神は黄龍に彼の後ろから問うた。
「そうするというのか」
「そうだ。だから今私をだ」
彼自身をだ。どうせよというと。
「闇ごと討て。よいな」
「けれどそれだと父さんが」
「よいのだ、私は一度死んでいる」
だからだとだ。黄龍は楓にも答える。
「そしてこの命もこの為にあるからだ」
「闇を封じる為に」
「そうだ。御前達も月も犠牲になることはない」
決して、そうした口調だった。
「私が。ここで」
「けれどそれは」
楓は戸惑いを見せてだ。父に言った。
「父さんが」
「構わないと言っている」
黄龍の言葉は変わらない。断固とした口調だった。
そしてそのうえでだ。彼はさらに言ったのだった。
「既に一度死んでいる。ならばだ」
「御主、そうして娘を救うのか」
「世界もだ」
そのだ。どちらもだというのだ。こう翁に反したのだ。
「そうする」
「左様か」
「だからだ。四人の力をだ」
「御主に注ぎ込みか」
「そしてそれからは私がやる」
刹那を貫いたままだ。言うのだった。
「この闇を。完全にだ」
「封じるか」
「そうするか」
「わかったな。同志達よ」
嘉神と示現にも言った。そうしてなのだった。
彼等に己への攻撃を促す。その言葉を受けてだ。
遂にだ。まずは翁が頷いた。
「わかった。ではじゃ」
「そうだ、頼む」
「御主のその心確かに受け取った」
こう言ってだ。翁が最初に身構えたのだった。
続いて嘉神と示現もだ。それぞれ身構えてから黄龍に対して言った。
「貴様のその心、何があろうと忘れぬ」
「世界を守った貴様のことは何があろうとも」
「我等の心に生きる」
「だからこそ」
黄龍に力を注ぎ込みだ。刹那を、常世を封じることを決意した。
三人はそうした。しかしだった。
最後の一人、父の力を受け継いだ楓だけはだ。まだ戸惑っていた。
その彼に対してだ。父は背中越しに言うのだった。
「楓、御前もだ」
「けれどそうしたら父さんが」
「死ぬというのか」
「折角また生き返れたのに。それじゃあ」
「いいのだ。私は生きるのだ」
生きる、そうなるというのだ。
「御前の中でだ。だからだ」
「いっていうんだね」
「そうだ、いいのだ」
こうだ。嘉神と示現が彼自身に言ったことを我が子に告げたのである。
「私はそれで生きる。だからだ」
「僕は父さんに力を注ぎ込んで」
「常世を封じろ。儀式はそれにより行われる」
常世を封じる、それがだというのだ。
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