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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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第百三十七話 邪神、封じられるのことその八

「あの娘、決して犠牲にしたくはないがな」
「それでもいざという時はか」
「そうなるというのじゃな」
「あの娘はそうした娘だ」
 己を犠牲にしてもこの世を守ろうとする、月のそうした性格は嘉神もよくわかっていた。
 そのことをだ。示現も言った。
「だからだ。ここはだ」
「何としても。刹那を消し去るのです」
 父に続いてだ。虎徹も言った。
「絶対に」
「ああ、じゃあな」
「やるとしようぞ」
 楓も翁も身構えてだ。そしてだった。
 刹那に一気に突き進みだ。そのうえでだった。
 四人一度にだ。それぞれの剣を突き出し叫んだ。
「これで!」
「終わりじゃ!」
 四人の必殺の一撃がだ。刹那を貫いた。それを受けてだ。
 刹那もだ。その闇の声を出すのだった。
「こうして俺をか」
「そうだ、封じる!」
「二つの世界の為にな!」
 楓と嘉神が応える。そしてだった。
 四人はその力をだ。剣を通して刹那に注ぎ込んだ。それで刹那を倒そうというのだ。
 その中でだ。翁が三人に言った。
「我等の力を込めればじゃ」
「刹那、常世とてだ」
「倒せる」
「完全に消せる筈だ」
 示現も楓も嘉神もだ。そのことを確信していた。この世を護る四霊の力を使えばだ。
 だからこそ刹那に力を注ぎ込む。それで倒そうというのだ。
 実際にだ。刹那は動きを止めていた。そしてだ。
 そのまま消えようとしていた。刹那の姿は四人の出す力に飲み込まれようとしていた。
 そのままだ。姿を消したのだった。
 楓はそれを見てだ。確かな声で叫んだ。
「やったか!」
「うむ、我等も相当な力を使ったがのう」
「確かにだ。刹那は消えた」
「常世への門は」
 翁、嘉神、それに示現もだ。勝利を確信した。
 そのうえで刹那が消えた場所を見た。そこには誰もいなかった。
 そしてだ。虎徹もだ。こう言うのだった。
「これで。まずは一つ終わったのです」
「戦いはまだ行われているがだ」
 嘉神もだ。笑ってはいないが確かな声で虎徹に応える。
「まずは常世が封じられた」
「うむ、まずは我等がそれを果たせた」
「流石にこれ以上雑魚以外の相手はできないがな」
 示現に楓も言う。楓は力をかなり使ってしまったことを実感していた。
 ましてやだ。ここでだった。
「もう一度封じろと言われてもな」
「うむ、無理じゃな」
 まさにそうだとだ。翁も楓の言葉に応える。
「それだけのことを果たしたのじゃからな」
「そうだな。その通りだ」
 この時だった。四人、そして虎徹に対してだった。
 不意に声がしてきた。その声はというと。
 虎徹がその声を聞いてだ。蒼白になり声をあげた。
「まさかなのです!?」
「くっ、まさかと思うが」
 嘉神はその声の方を歯噛みと共に見た。するとだ。
 そこに刹那がいた。彼は健在だったのだ。その闇の姿を見せながらだ。こう行って来たのだ。
「かろうじて力が残っていたのだ」
「だからこそ復活した」
「そうだというのか」
「そうだ。残念だったな」
 こう四人と虎徹に返す刹那だった。そしてだ。
 その背にあるものを出してきた。それは黒い闇の穴だった。
 穴は次第に大きくなっていく。そこから無気味な咆哮が聞こえてくる。
 その咆哮を聞いてだ。翁が傘の下からその目を不吉なものにさせてだ。
 そのうえでだ。こう言ったのである。
「まずいのう。今の我等にはじゃ」
「最早刹那を封じる力は残されていない」
 嘉神もだ。忌々しげに言った。
 
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