X ーthe another storyー
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第七話 沖縄その五
「からね」
「今もこうしてですか」
「姉さんの夢に出てね」
そうしてというのだ。
「今もよ」
「私の前に立つのですか」
「困らせる為にね」
「憎い、困らせるだと」
神威はそう聞いて言った。
「あんたは姫さんをそうしているのか」
「そうよ」
庚はその通りだとだ、神威に平然として答えた。
「私はその為に動いているのよ」
「だから世界を滅ぼすのか」
「それは地球を考えてよ」
こうもだ、神威に話した。
「人間はね」
「滅びるべきとか」
「考えているからよ」
「人間を護ろうという姫さんに対しているか」
「その通りよ」
「それは本当か」
神威はいぶかしむ目で庚にさらに言った。
「あんたは」
「何度でも答えるわ、そうよ」
「庚の言う通りです」
丁も言ってきた。
「この娘はわらわが憎く」
「あんたの敵に回ってか」
「考えもです」
「あんたと正反対でか」
「こうして今もです」
「姉さんを苦しめる為なら何でもするわ」
庚は微笑んでまた言った。
「私はね」
「その言葉俺には信じられない」
神威は庚に顔を向けて彼女に告げた。
「あんたの言葉には嘘がある」
「嘘?」
「そんな気がする、あんたの言葉には憎しみが感じられない」
こう言うのだった。
「目の光にもな」
「何を言っているのかしら、私は」
「俺にはそう感じる」
「貴方がなのね」
「ああ、あくまでな」
「誤解だと言っておくわ」
庚は即座に神威の言葉を打ち消しにかかった。
「それは」
「あんたはか」
「姉さんを憎んでいてね」
そうしてというのだ。
「人間もよ」
「滅ぼすつもりか」
「その通りよ」
「そうか、だがまだ思うところがある」
庚を見たままの言葉だった。
「あんたはおじさんを殺さなかったな」
「あの神社でのことね」
「ああ、殺そうと思えば殺せたが」
「どのみち人間は滅ぶのよ」
庚はほんの一瞬、神威はおろか丁でさえも気付かないだけのほんの一瞬目を右にやってから答えた。
「それならよ」
「今生きていてもか」
「同じでしょ、だからよ」
「おじさんを殺さなかったか」
「ええ、どのみち滅びるのなら」
人類自体がというのだ。
「どうして今殺す必要があるのかしら」
「後でまとめてか」
「だからあの子にも殺させなかったのよ」
「地の龍の一人にもか」
「そうよ、では吉報を待っているわ」
ここで庚は話を打ち切った。
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