仮面ライダーBLACK RX〜ネオゴルゴムの陰謀〜
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第七話『死を呼ぶ葉擦れ』
ある乾燥した寒い日の夜、ガサガサと何かが揺れる音がする。
「なぁに?烏?」
居酒屋の女将が閉店作業に勤しむ中、廃棄物を荒らす害獣が出たのかと気になり扉を開けるが、そこには何もなく、生ゴミは荒らされた気配はなかった。
「変ね、この辺の並木は工事で撤去されて、木の葉の音なんて聞こえないのに。」
女将はそのまま店の中へ戻ろうとするが、今度は店の中から物音がし、女将が急いで中へ戻ると、ネオゴルゴム怪人の一体、ユーカリ怪人がユサユサと腕に生える葉を揺らしていた。
「キャー!」
女将の悲鳴が聞こえてしばらく経ち、居酒屋から煙が立ち込め、火の手が上がる。
翌日、この火災はニュースで報道される。
『続いてのニュースです。またしても酒類を扱う店舗の火災です。昨晩2時30分頃、居酒屋ひぐれで火災が発生し、店主の─』
「今月に入ってもう八件、全部バーにクラブに居酒屋。あまりにも不自然じゃねえか?」
霞のジョーの言葉でニュースの声は遮られる。
「そうは言っても、この時期だから普通に火事が起きても不思議ではないからな。」
「そうね。この情報だけだと、ネオゴルゴムが絡んでいるとは言い切れないわね。」
光太郎と克美は様子見をする。
「どうですか、ユーカリ怪人の揮発油は?」
ネオゴルゴム神殿の広間で、ゴルゴメスの実を研究していた科学者は意気揚々と三神官に話す。
「素晴らしいではないか。本来では発火しない温度でも発火させられるように成分を調整するとは。」
リシュナルから科学者が褒められている片隅で、柿坂は拳を握り、歯を食いしばっていた。
「おやおや、どうしたのだい柿坂君?随分と元気がなさそうだが。」
そんな柿坂の神経を逆なでするように麻木はニヤつきながら話しかける。
「麻木、なんの用だ。」
「いや、君があまりにも悔しそうな顔をしていたから、気になってついね。」
「今お前の声は聞きたくない。どっか行ってろ。」
「怪人相手にそんな口の聞き方でいいのかな?」
柿坂はハッとする。
「麻木、まさか本当に怪人になっているのか⁉」
「前からそう言っているだろう?兎に角、私の実験台にされたくないなら、余計なことは言わないほうがいい。安心したまえ、ユーカリ怪人に対して行った薬物調合の件は三神官も把握している。別の形で呼ばれるだろう。」
麻木は柿坂の肩を叩きながら立ち去る。
「どいつもこいつも、俺のことを馬鹿にしやがって。」
柿坂は拳を柱に叩きつけ、広間を出ていった。
それから数日後、毎日のように続く火災に光太郎は不信感を抱き、ある日の夜に事故現場付近の酒場を徹底的に調べた。
「酒類の提供以外に事故が起きた店の共通点はない。一体どうして…」
街を歩いていると、光太郎はあることに気づく。
「何かの液体だ。それも一本道で繋がっている。」
道路に垂れたそれを光太郎は指で触れる。液体は粘度が高く、指はベタつく。
「これは、何かの油か?」
光太郎が気になっていると、
「フゥォォォ…」
ユーカリ怪人が現れる。
「やはりネオゴルゴムの仕業だったのか!変身!」
光太郎はすぐさまバイオライダーに変身し、ユーカリ怪人と交戦する。
「フゥォォォ…」
ユーカリ怪人の声を聞き、三体のクモ怪人が現れ、バイオライダーに糸を吐き、動きを封じる。
「フゥォォォ!」
ユーカリ怪人叫びながら腕の葉を揺らすと、一体のクモ怪人の糸に着火し、バイオライダーの体に火が灯る。
「くっ!このままでは燃え尽きる!」
バイオライダーは一瞬のうちにロボライダーへ変身し、自身に引火した火を吸収する。しかし、その隙きにユーカリ怪人は逃亡してしまう。
「待て!」
ロボライダーはユーカリ怪人を追いかけようとするが、クモ怪人達が行く手を遮る。
「ボルティックシューター!」
ロボライダーはボルティックシューターでクモ怪人達を撃ち抜き撃破するが、ユーカリ怪人は完全に姿を消していた。
翌日、光太郎はユーカリ怪人との交戦があったことを話す。
「やっぱりネオゴルゴムが関係していたか。」
霞のジョーは悔しそうな顔をする。
「ユーカリ怪人が酒場を狙ったのも、引火させやすい場所だからだろう。」
光太郎は昨晩の戦闘からユーカリ怪人の行動の意図を探る。
「ねえ光太郎さん、現場で光太郎さんが触れた油はまだ残っているかしら?」
「もしものために採ってきたけど。」
克美の言葉を聞いて、光太郎は採取した油を取り出す。
「ユーカリって、揮発性の高い油を巻いて火災を起こす原因にもなる植物だから、ネオゴルゴムはこの油を使って酒類に引火させやすい環境を作っているのだと思うわ。」
克美はユーカリの性質を説明する。
「引火させやすい油…それをガスタンクに付着させられたら火災じゃ済まない!何としても止めないと!」
光太郎はすぐに被害現場に近いガスタンクを調べる。
「見つけた!火災の現場から50キロも離れていない。すぐに向かおう!」
光太郎は都内で管理しているガスタンクの施設へ向かう。
「さあ、ユーカリ怪人よ、その一点にお前の揮発油をかけるのだ。」
エピメルの指示を受けたユーカリ怪人は揮発油を噴射しようとするが、そこに光太郎が駆けつける。
「そこまでだ!」
「来やがったな、RX!」
光太郎の声にエピメルとユーカリ怪人は反応する。
「ガス爆発は絶対に阻止してみせる!」
「よくぞ我らの計画を見抜いたな。」
「ユーカリ怪人の性質が、仇となったみたいだな!」
「こうなれば!ユーカリ怪人、まずはRXを倒すのが優先だ!」
エピメルの言葉を聞き、ユーカリ怪人は臨戦状態になる。
「変…身!」
光太郎はその隙きを伺い、変身の掛け声を上げる。光太郎の変身の掛け声とともに体組織を変化させる変身ベルト、サンライザーが出現し、キングストーンと太陽、2つのハイブリットエネルギーが全身を駆け巡り、南光太郎は、仮面ライダーBLACK RXへと変身するのだ。
「俺は太陽の子!仮面ライダーBLACK!RX!」
RXの名乗りを聞き、クモ怪人が四体出現する。
「ユーカリ怪人、人々の憩いの場を奪い、罪のない人たちの命をガス爆発で奪おうとする行為、この俺が食い止めてみせる!」
RXはクモ怪人の一体に掴みかかる。
「RXパンチ!」
RXは拳に力を込めて掴んだクモ怪人の胸部を殴り、撃破するが、他のクモ怪人の糸によって身動きを封じられてしまう。
「フゥォォォ!」
ユーカリ怪人は昨晩の戦闘と同様にクモ怪人の糸に揮発油を吹き付け、着火させて引火した糸でRXの動きを封じながら火炙りにしようとするが、
「無駄だ!バイオライダーのときと違って、今の俺に炎は効かない!」
高熱や火に弱いバイオライダーと異なり、熱源の中でも平気なRXにはダメージとなることはなく、引火したことで逆に強度の落ちた糸を強引に引きちぎり、ロボライダーへ変身する。
「ボルティックシューター!」
ロボライダーは必殺の光弾、ハードショットでクモ怪人達を撃ち抜き、撃破して蒸発させる。
「後はお前だけだ、ユーカリ怪人!」
ロボライダーは再びRXに変身し、ユーカリ怪人に向かってゆく。
「フゥォォォ…」
ユーカリ怪人もRXに掴みかかるが、RXの膝蹴りが脇腹に直撃すると、ユーカリ怪人は怯み、体勢を崩す。
「行くぞ!」
RXは勢いよくジャンプする。そして、
「RXキック!」
必殺キックをユーカリ怪人に叩き込み、ユーカリ怪人は撃破され、高熱を発しながら蒸発する。
「おのれ仮面ライダーBLACK RXめ、このままで済むと思うなよ!」
エピメルは地を這うように移動し、姿を消す。
「ほら見ろ、柿原がもっとしっかり調合していれば良かったんだ。」
「それを言うなら、お前の改良不足なのではないのか。」
RXによってユーカリ怪人を倒される光景をネオゴルゴム神殿で見ていた柿坂と科学者は互いの落ち度を探して揚げ足の取り合いをしている。
「やめないか二人とも!見苦しいだけだ。」
そんな二人をリシュナルは諌める。そこに麻木が現れる。
「ソフィル様、リシュナル様、例の計画の大半が終わりました。」
「そうか、ご苦労であった。様子はどうだ。」
「バイタルも安定し、血液も順応しています。」
麻木とソフィルの会話に柿坂と科学者が疑問を抱く。
「お前たちには話していなかったな。我らが南光太郎の血液を吸血させた理由、それは奴の血液を利用し、我らネオゴルゴムの世紀王を生み出すためなのだ。そして、血液は素体に順応し、後はこのシャドームーンのキングストーンを移植すれば準備は整い、この世紀王生誕計画は最終段階へ向かうのだ。」
ソフィルは柴田牧場での出来事の真意を柿坂達に話すのだった。
「みんなただいま。ユーカリ怪人は倒した、これで大規模ガス爆発は防げたよ。」
光太郎は落ち着いた表情で話す。
「それはよかった。しかし、辺りを燃やす植物だなんて、恐ろしいものもあるんだな。」
霞のジョーはおびえるような仕草を見せる。
「自然というのは、それだけ恐ろしいものなんだ。」
光太郎は淡々と話す。自然の力は、時に人間には想像もできない力を見せるときもあり、今でも様々な研究が日夜行われている。我々も、新しい発見を求めて今一度自然に触れてみるのもいいのかもしれない。
続く
次回予告
週刊誌の記者、白鳥玲子。彼女のもとにネオゴルゴムと戦うRXの活躍をまとめたメモリーカードが届く。それを狙うヘビクイワシ怪人。光太郎は玲子を守れるのか⁉『カードを狙う爪』ぶっちぎるぜ!
後書き
怪人図鑑
ユーカリ怪人
身長:205cm
体重:118kg
能力:揮発性油の散布、着火
ユーカリの特性を持つネオゴルゴム怪人。複数のユーカリが所有する、揮発性の精油を生成、散布し、着火させることで火災を発生させた。
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