仮面ライダーBLACK RX〜ネオゴルゴムの陰謀〜
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第八話『カードを狙う爪』
週間情報誌“週間時代”、編集部は今日も忙しかった。
「そこの裏取りは取れたのね。預かるわ。」
編集長である女性、白鳥玲子。かつて仮面ライダーBLACK RXと共にクライシス帝国に立ち向かった勇敢な人物であり、南光太郎の当時の恋人でもあった。光太郎とはクライシス帝国打倒後、光太郎が日本を離れる際に別れることになり、カメラマンとしてのスクープ察知能力を利用し、現在は記者として活動していた。
「編集長、この封筒が編集長宛に届いていました。」
記者の一人が玲子にA4サイズの封筒を渡す。
「ありがとう。内容はこっちで確認するわ。」
玲子は封筒の中身を確認する。中には一枚のSDカードとA4用紙の書類が一枚同封されていた。書類の内容は、SDカードの内部に関するものであり、かつて暗躍していた暗黒結社ゴルゴムが現代になり深淵結社ネオゴルゴムとして復活し、侵略活動を再開したこと、そしてそれを打倒するために立ち上がったRXの活躍に関する内容であった。
「光太郎さん、日本に帰ってきていたのね…」
玲子は過去を懐かしみながらすぐにSDカードの中身を確認し、それを編集長のコラムコーナーに記事として掲載し、社長に提出する。しかし、
「白鳥くん、君には失望したよ。君には今日限りでここを辞めてもらいたい。」
社長から送られた言葉は解雇通告であった。
「どうしてですか、社長。どこかおかしな点でもありましたか?」
「おかしな点は君自身だよ。こんな子供の妄想みたいな内容を書くのが編集長だと思われたくないのだよ。第一、仮面ライダーなんて若者が騒いでいる都市伝説みたいなものではないか。」
玲子の質問に社長は呆れながら答える。
「いいえ、仮面ライダーは実在しています。35年前、私は仮面ライダーと共にクライシス帝国に立ち向かいました。」
「一体いつの話をしているのだ?35年前なんて言ったら、もうふた昔も前のことではないか。捏造なんていくらでもできるではないか。」
「社長も、当時のことは覚えているはずです。クライシス帝国は日本全国で活動していたのですから。」
「ああ知っているとも。だが、クライシス帝国はある日突然行方をくらませた。それが事実だ。仮面ライダーなんていない。」
「こちらの記事には、情報の提供者もいるのですよ。SDカードにはデータだってあります。」
「それ自体がでっち上げの可能性もあるだろう。兎に角、君はすぐに荷物をまとめて出ていってくれ。それから、君の言うデータも置いていってくれ。捏造証拠が出回っては困る。こちらで廃棄しないといけないからな。」
「そうですか、この頑固親父!こんなわからずや、こっちから辞めてやるわ!」
結局、玲子の解雇が覆ることはなく、玲子はそのままSDカードを置いて会社を後にした。それを窓から見ていた社長は電話を始める。
「これはこれは、お忙しい中失礼。…ええ。…はい、勿論、握りつぶしました。データもこちらで破壊しました。てすが、彼女は抜け目ないところがあります。…本当ですか!ありがとうございます!それでは。」
社長は電話越しに一瞥し、通話を終わらせる。
「何なのかしら、あの社長。ま、データはコピーを取ってあるし、なんとかなるでしょう。」
社長の読みどおり、玲子はすでにコピーしたデータを持っており、これからのことを考えていた。そんな時、風を切るような口笛の音がどこからともなく聞こえてくる。
「何かしら、この音?」
玲子が警戒していると、上空からネオゴルゴムの差し向けたヘビクイワシ怪人が右足を突き出しながら急降下してくる。
「キャッ!」
玲子は反射神経を活かして間一髪でヘビクイワシ怪人のキックを回避する。
「ピュー…」
ヘビクイワシ怪人は玲子を睨む。
「あなた、噂のネオゴルゴムの怪人ね。」
玲子は拳を構える。しかし、ヘビクイワシ怪人は怯むことなく回し蹴りを放つために玲子に接近する。その時、
「変身!」
光太郎がRXに変身してヘビクイワシ怪人の脚を受け止める。
「大丈夫か!」
RXは安否を確認する。
「その声、光太郎さんね。」
「もしかして、玲ちゃん⁉ここは避難するんだ!」
「ええ!」
玲子はそのまま避難する。
「ピュー…」
ヘビクイワシ怪人はRXに対して低空飛行で突進するが、RXに掴まれ投げ飛ばされる。
「ピュー!」
劣勢と感じたヘビクイワシ怪人は上空へ飛び、逃走する。
「逃げられたか。」
光太郎は変身を解除する。
「それで、玲ちゃんはどうしてネオゴルゴムに狙われたんだ?」
光太郎は一本の街路樹に向かって言う。そこから玲子は顔を出す。
「色々理由があってね。話せる場所はないかしら?」
「それなら、俺の喫茶店に来てよ。そこで話そう。」
光太郎の提案を聞き、玲子は幸太郎とともにキャピトラへ向かった。
「ヘビクイワシ怪人、標的を仕留めずにおめおめと逃げ帰るとは何事だ!」
ネオゴルゴム神殿では逃亡してきたヘビクイワシ怪人がリシュナルに叱責されていた。
「申し訳ありません。仮面ライダーBLACK RXの妨害に遭いました。あのままでは不利と判断し、撤退してきた次第です。」
ヘビクイワシ怪人は現場での出来事を説明する。
「しかし、南光太郎にバレた以上、目標の始末は不可能になった。貴様には仮面ライダーBLACK RXの抹殺任務に就いてもらう。」
リシュナルの言葉にヘビクイワシ怪人は怯えながらも頷くことしかできなかった。
キャピトラに着いた光太郎達は席につく。
「もしかして玲子ちゃん?久しぶりじゃん!仕事はどうだった?」
霞のジョーは久しぶりの再会に喜ぶ。
「もう最悪。私、今日から無職よ。」
玲子はやれやれといった仕草をしながら話す。
「それで、玲ちゃんはどうしてネオゴルゴムに狙われたんだ?」
光太郎は本題を切り出す。
「多分、このデータが狙いね。」
玲子はコピーしていたデータを机に置く。
「これは?」
「数日前に私宛に送られてきたデータのコピーよ。中にはネオゴルゴムの破壊活動と、光太郎さんの活躍する姿が写真や動画で入っていたわ。」
玲子はデータの詳細を伝える。
「ほんと、仕事はクビになるし、すぐに怪人に狙われるし、今日はとんだ厄日ね。」
玲子は疲れたように言う。
「兄貴、もしかしてその会社、ネオゴルゴムと関係があるんじゃないのか?」
「いきなり玲ちゃんを狙ったんだ。十分に可能性はある。それよりも、このまま玲ちゃんを放っておくわけにもいかないな。」
「そうよ。明日から職探ししないと。」
玲子は落胆する。すると、
「お義兄ちゃん、この人は?」
杏子がやってくる。
「杏子ちゃん、この人は白鳥玲子ちゃん。クライシス帝国と戦っていた頃の恋人だよ。」
光太郎は軽く説明する。
「お義兄ちゃん、恋人なんてできていたんだ。」
杏子は光太郎の言葉に驚く。
「光太郎さん、こちらの方は?」
「こっちは秋月杏子ちゃん。義妹だよ。」
「知り合いで二人目のきょうこちゃんね。よろしく。」
光太郎の説明を受けた玲子は杏子と握手を交わす。
「ねえ、玲子さんもここで働かない?お義兄ちゃん、人手が足りなくて困っていたみたいだし。玲子さんもちょうどいいんじゃない?」
「杏子ちゃん、勝手に決めないでよ。玲ちゃんだって、急に言われたらびっくりするよ。」
光太郎は慌てて対応するが、
「光太郎さんさえ良ければ、お世話になろうかしら。仕事はしないといけないしね。」
玲子は笑顔で了承する。
「よかった。いくつになっても、玲ちゃんは玲ちゃんで。それじゃあ、早速店番を頼むよ。俺はその間に足りないものの買い足しをしてくるからさ。」
玲子の返答を聞いた光太郎はキャピトラを出て買い出しを始める。
「ピュー…」
横丁を歩く光太郎を高層ビルの屋上からヘビクイワシ怪人はにらみ、狙いを定めている。そして、
「ピュー!」
ヘビクイワシ怪人はビルから飛び立ち、その急降下に力を乗せ、鋭利な足の爪を光太郎に突き刺そうとする。
「はっ!」
しかし、口笛を鳴らしたような甲高い風を切る音に光太郎はヘビクイワシ怪人の襲撃を感知し、受け身を取りながら回避し、ヘビクイワシ怪人の爪はコンクリートの地面に深々と突き刺さる。
「現れたな、ヘビクイワシ怪人!」
光太郎は身構える。
「ピュー…」
ヘビクイワシ怪人は突き刺さった爪を引き抜き、キックボクシングのような構えを取る。
「変…身!」
光太郎の変身の掛け声とともに体組織を変化させる変身ベルト、サンライザーが出現し、キングストーンと太陽、2つのハイブリットエネルギーが全身を駆け巡り、南光太郎は、仮面ライダーBLACK RXへと変身するのだ。
「俺は太陽の子!仮面ライダーBLACK!RX!」
RXの名乗りを聞き、四体のクモ怪人が現れ、RXとヘビクイワシ怪人を囲むように糸を吐き、リングに見立てることができる状況で対決が始まる。
「ピュー!」
ヘビクイワシ怪人は早速回し蹴りをRXに放つが、RXはバックステップで回避していくが、ヘビクイワシ怪人は確実に攻撃を当てるために回し蹴りを繰り返し放ち、RXはそれらを回避するが、
「シュー!」
隅で待機していたクモ怪人に羽交い締めにされてしまう。
「しまった!」
RXは失念していたが時すでに遅く、ヘビクイワシ怪人の回し蹴りが顔面に直撃しかける。しかし、RXはバイオライダーに変身し、ゲル化することで攻撃を回避しつつクモ怪人による拘束から逃れる。
「ピュー!」
ヘビクイワシ怪人は残念そうに、かつ不服そうに鳴き声を上げるが、
「先に反則したのはお前たちだろ!」
そこに霞のジョーが現れ、クモ怪人の一体の頭を飛び蹴りで攻撃し、遅れて玲子が現れ、怯んだクモ怪人に正拳突きを放つ。
「兄貴、こいつらは任せろ!」
「光太郎さんはそいつをやっつけちゃって!」
「わかった!」
バイオライダーはロボライダーへ姿を変える。
「俺は悲しみの王、RX!ロボライダー!」
「ピュー!」
自然においては警戒色でもあるロボライダーのオレンジと黒の姿を見たヘビクイワシ怪人は激昂し、上空へ飛ぶ。
「シュー!シュー!」
クモ怪人は糸で霞のジョー達を拘束しようとするが、糸はすべて霞のジョーの釵に防がれてしまう。
「霞流、雲隠!」
霞のジョーは煙筒を利用し、煙の中に姿を隠す。
「シュー?」
クモ怪人達が二人を探していると、
「こっちだ!」
霞のジョーはクモ怪人の背後に現れ、釵でクモ怪人の腹部を貫き、撃破する。
「よそ見はだめよ!」
更に、玲子の拳がもう一体のクモ怪人の喉を直撃し、攻撃を受けたクモ怪人はもがきながら息絶える。その光景を見た二体のクモ怪人は撤退する。
「逃げられたか!」
霞のジョーは悔しがるが、
「二人とも、ありがとう!ボルティックシューター!」
ロボライダーは感謝を伝え、必殺の光線銃を出現させる。
「ピュー!」
上空に飛んだヘビクイワシ怪人はキックを放つが、ロボライダーの必殺の一撃、ハードショットがヘビクイワシ怪人の心臓に直撃する。
「ピュー…」
そのままヘビクイワシ怪人は上空で爆散し、蒸発する。
「二人とも、本当に助かったよ。」
光太郎は変身を解除し、改めて礼を言う。
「いいさ。兄貴は一人で戦っているんじゃないんだ。それに、心強い仲間が戻ってきてくれたしな。」
霞のジョーは玲子の肩を叩きながら言う。
「確かに、クライシス帝国と戦っていた頃を思い出したわ。」
三人は笑顔になる。そう、光太郎は一人ではないのだ。そして、この笑顔を守ることを、光太郎は固く誓ったのだった。
続く
次回予告
有名K-POPスター来日。ファンが大いに盛り上がる中、襲撃するように現れるキツネ怪人。多くの命が危険にさらされる。『純白のスポットライト』ぶっちぎるぜ!
後書き
怪人図鑑
ヘビクイワシ怪人
身長:198cm
体重:78kg
能力:高高度飛行、鋭利な足の爪を利用した足技
ヘビクイワシの性質を持つネオゴルゴム怪人。鉤爪状の爪を対象に食い込ませる攻撃を得意とし、高高度からの襲撃を得意とするが、襲撃時に独特な風切り音が鳴るため反射神経の高い相手には失敗しやすい。
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