有栖キャロの小学校物語
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第14話 妹とバトルです
さて、明日はお兄ちゃんの中学校で文化祭の一般公開です。
昨日、一般公開は明日と聞いて、急いで連絡したのですが、その代わりに、ルーちゃんの家でみんなで遊ぶことになりました。
そしてついでに新しい家族、優理の事も紹介しようと思って連れてきたのですが………
「いい加減機嫌を直してください………」
朝、お兄ちゃん逹が学校へ向かうと、優理は真っ先にお兄ちゃんの部屋に行き、布団に潜りました。
やっぱりどうしても行きたく無いみたいで、アギトとラグナルに手伝って貰って何とか引っ張りだし、準備させて連れてきたのですが………
「レイの臭いに包まれていたかったのに………」
まあその気持ちも分からなくも………って違う!!
それに、アミタさんとキリエさんがお兄ちゃんの部屋で寝ているからお兄ちゃんの臭いだって薄れている筈ですから、ただの言い訳に過ぎないんです。
「もう来てしまったんですから文句は無しです。それに行ってないと聞いたらお兄ちゃんだってがっかりしますよ」
「ううっ………」
まあこう言えば渋々付いてきてくれましたけど。
そして着いた私はインターフォンを鳴らしました。
「あら、いらっしゃい。………その子が優理ちゃん?」
「はい、有栖優理と言います、これからよろしくお願いします」
出迎えてくれたのはメガーヌさん。
松葉杖で体を支えながら扉を開けてくれました。
しかし、ふてくされてた優理がちゃんとした対応をしてくれて一安心です。
「あらあらご丁寧に。私はメガーヌ・アルピーノよ。ジェイルから話は聞いているわ」
お兄ちゃんの文化祭の一般公開の前日、ルーちゃんの家にお呼ばれされたので遊びに来ました。
「エリオ君ももう来てるわ。中へどうぞ」
「「お邪魔します」」
私達はメガーヌさんに案内されて中に入りました。
リビングに入ると、ルーちゃんとエリオ君が一緒にゲームをしてました。
ゼストさんは新聞を読みながらコーヒーを飲んでいます。
「やあ、キャロ。それと、もしかして彼女が優理ちゃん?」
「はい、初めまして有栖優理です」
「僕はエリオ・モルディアルだよ」
エリオ君はどうやらルーちゃんに事情を聞いたみたいですね。
お兄ちゃんからジェイルさんの事はルーちゃん以外に言っちゃダメって言われてるから気を付けないと………
「私はルーテシア・アルピーノ。こっちがゼスト・アルピーノ、私のお父さん」
「違うぞ………ゼスト・グランガイツだ、よろしく頼む」
ゼストさん、まだ渋っているのですか………
ルーちゃんの話だと、メガーヌさんが一生懸命アピールしてるらしいのですが、ゼストさんがことごとくスルーしているみたいなんです。
お兄ちゃんもお姉ちゃん逹も2人が結婚することを望んでいるのですが………
こればかりは簡単に首を突っ込んじゃいけませんね。
「皆さんよろしくお願いします」
優理はちゃんと頭を下げて言います。
うん、礼儀正しく出来てますね。
「新しくって事はキャロの妹になるのかしら?」
「は………」
「いいえ、むしろ私の方がお姉さんです」
はいと言おうとしたら優理が私の言葉を遮り、まさかの自分が姉宣言をしてきました………
「優理?昨日も言いましたけど私がお姉ちゃんですよ?」
「私はそんな事認めてないです」
「で、でもお兄ちゃんが認めたもん!」
「レイは一言もそんな事言ってないよ!」
「でも任せたって言ってたもん!!」
「それはまだ分からない事が多いから気を使ってくれって意味で、姉として面倒を見てくれって事じゃ無いもん!!」
「ちょ、ちょっと2人共………」
「一旦落ち着いて………」
ルーちゃんとエリオ君に言われて一度言い争うのを止めましたが、ここまで優理が頑固だったとは………
「話は聞かせてもらった!!!」
いきなり声がしたと思って玄関の方を見ると仁王立ちしているエローシュ君。
その後ろに佐助君、夏穂ちゃん、真白ちゃんがいました。
「こんな事もあろうかと!!俺が用意したものが役に立つときが来たようだ!!」
そう言ってバックから取り出したのはハリセンとヘルメット。
「新たなたぬき印の商品。『叩いてかぶってじゃんけんポン』これで勝った方が姉って事でどうだ?」
「そんな物どこにでも売ってそうですけど………?」
「甘いな真白ちゃん。これはそんじょそこらの物とは違うんだ!!見よ、このヘルメットとハリセン!!ヘルメットもさながらハリセンも色んな泣き声がなる特注品の物を使ってるこだわり、まさに匠!!」
「これはいい仕事をしている………」
「馬鹿な二人………」
呆れた目で夏穂ちゃんがエローシュ君と佐助君を見てますけど、今の私にとっては願ってもない物です!!
「これで決着を付ければいいだろ」
「はい、ありがとう、エローシュ君」
「私もそれで構わない」
優理の顔を見るとどうやら自信がありそう。
………これは負けられない。
「よし、そうと決まれば始めるか!!」
こうして、ルーちゃんの部屋に遊びに来ている筈なのに、優理と対決することになりました。
負けられない戦いがここにある!!
「それじゃあルール説明な。じゃんけんをして勝った方は負けた相手がヘルメットでガードする前に叩く。シンプルかつ、燃えるゲームだ」
「分かりました。姉として絶対負けません!」
「私こそキャロに何か負けない!!」
お互い、ルーちゃんの用意してくれた座布団に正座して、相手を見据えます。
「何だかピリピリしてるね………」
「それだけ譲れないのよ雫。キャロもムキになるなんて珍しい事………」
夏穂ちゃん、真白ちゃん、これだけはどうしても譲れませんので。
今回のチャンスを逃せば、姉になれることは絶対に無いですから………
キャロお姉ちゃん………
何ていい響き………
「ねえエリオ、キャロがニヤニヤしてるんだけど………」
「触れない方が良いんじゃないかな?」
おっと、余計な事を考えてしまいました………
先ずは勝つことに集中しなくては………
「それじゃあ3本勝負な。見合って………」
「「叩いて被ってじゃんけんポン!!」」
私 パー
優理 チョキ
「チェスト!」
可愛い声で言ってますが、それに似合わない程キレのあるハリセンが私の頭に向かってきました。
「甘いです!」
それでも私は素早くヘルメットでガードします。
『コッコー!』
鶏の鳴き声が鳴りますがセーフです。
「くっ、流石キャロ………」
「まだまだこんなもんじゃないですよ………」
「それじゃあ2人共見合って………」
「「叩いて被ってじゃんけんポン!!」」
私 グー
優理 チョキ
「貰ったー!」
私の素晴らしい一撃がガード前の優理の頭を思いっきり叩きました。
『なんでやねん!』
何か聞いたことのある声が鳴りましたけど、気のせいかな………
「あれ?痛くない………」
「先ずは私が1勝ですね」
「くっ、だけど次は負けない!!」
「そんな事より………」
「うん、そうだね………」
「やっぱり思ったとおり」
「まあキャロだがら………」
「キャロだよね………」
「「「「「レベルが低い………」」」」」
2人の戦いを見ていた5人が呟いたのだった………
さて、白熱した闘いも終盤になり、どちらも次を決めれば勝ちという所まで来ました。
そして今回私が攻撃して防がれたのは4回目です。
流石マテリアルの盟主を名乗るだけあります。
「ですが、これで終わりです………」
「こっちこそ………」
「行くぞ2人共、見合って………」
「「叩いて被ってジャンケンポン!!」」
私 パー
優理 グー
「チェストォォォォー!!」
私の渾身の一撃はとうとう優理の鉄壁の守りを砕き、直接叩きました。
『つまらぬものを斬ってしまった………』
やっぱり聞いたことがあるような………
まあそれはともかく………
「勝者、キャロ!!」
「いやった!!やりましたよ皆さん!!」
大喜びする私。
しかし皆はゲームをしていてこっちを見ていませんでした………
………何だか恥ずかしいです。
「ま、まあ約束ですよ優理。これで私は優理の姉です!」
しかし、優理の様子がおかしいです。
うつむいたまま顔を上げません。
「あれ?優理ちゃん?」
エローシュ君もおかしいと思ったのか、優しく声をかけました。
恐る恐る顔を覗き込みます。
すると、
「ふぇ………」
「え?」
「ふえええええええええええええええ!?」
大きな声で泣き始めました。
「ゆ、優理!?」
暫く、優理は泣き止みませんでした………
「ううっ………」
「ごめんなさい、私が大人げ無かったです………」
何とかエローシュ君と一緒になだめて優理も落ち着きを取り戻しましたけど、拗ねてこっちを見てくれません。
「優理………」
「うるさいです………」
う〜ん、やっぱり駄目ですね………
「まさか負けるなんて………これじゃあレイに合わせる顔が………」
「あ〜なるほど………なあ優理ちゃん、ちょっと………」
「何ですか?」
エローシュ君が優理に近づいて何かを話しています。
………何を話してるんだろう?
「………やっぱりか。なら………」
そう言って今度は優理の耳元で話始めるエローシュ君。
「本当ですか?それ………」
「ああ、信じられなかったら俺の言う小説を読んでみな。大体そんな感じになってるから」
「だけど小説とは………」
「男からみたらそうなんだって」
「ううっ………まあ、私は女ですし、信じる事にします………」
小説?何の事でしょうか………?
「キャロ………」
「は、はい!」
いきなり声をかけられて、つい大声出してしまいました………
「私キャロの妹でもいいけどお姉ちゃんとは言わないから………」
「えっ!?あっ、はい、構わないけど………」
いきなりの心変わり。
一体何があったんだろう………?
そうだ、エローシュ君に聞いてみれば………
「エローシュ君」
「エロ、言ったら怒るよ」
「言わないって、それにエロは勘弁」
それじゃあただの変態ですからね。
でもやっぱり秘密ですか………
「まあいいです。これからよろしく優理」
「はい、仲良くしましょう」
何か企んでるようにも感じますけど、気にしない事にしましょう。
「それじゃあ俺達もアイツらのゲームに混ざろうぜ」
「「はい」」
こうして、私が優理のお姉さんになりました。
その後は優理の自己紹介をしてみんなで夕方頃まで遊びました。
明日も一緒に行く予定にしたので楽しみです。
「「ただいま〜」」
夕方、家に帰って、リビングに向かうと、昨日みたいに散らかってなく、ちゃんと部屋の中は綺麗でした。
ですけど、ディアちゃんたちは昨日みたいにゲームをしてるし、アミタさん逹も漫画を読んでます。
やっぱり星お姉ちゃんのオハナシが効いたんでしょうね。
流石星お姉ちゃん。
「「「「「「「お帰り」」」」」」」
「お帰り、2人共」
アギトがこっちに来て迎えに来てくれました。
「今日は何も無かったんですか?」
「ああ、6人共ちゃんと片付けしてたよ。よっぽど星のオハナシが堪えたんだろうな」
やっぱりそうですか………
昨日みたいに何処かに食べに行かずに済みそうです。
「「「「ただいま〜」」」」
「ただいま………」
アギトと話してると、お姉ちゃん逹も帰ってきた様です。
「あれ?星お姉ちゃん元気無いけど………」
「色々あったんです………」
疲れた顔をしてそう呟きました。
よっぽどの事があったのでしょうか?
「レイはまだなの?」
帰ってきたと聞いて、目をキラキラさせたのはやっぱりそういう事ですか………
「レイは生徒会に用事があるから先に帰っててくれって言われたよ」
「そう………」
ライお姉ちゃんの返答に優理ががっかりしてます。
しかし、私の態度とお兄ちゃんやお姉ちゃんやアギトの反応とは違うような………
「文化祭は楽しかったか?」
「ああ楽しかったぞ。ただし、明日、私達のクラスには来ない方が良いぞ」
「えっ!?フェリアお姉ちゃんどういう事?」
「行けば分かる。だけど行かない事をおすすめするぞ」
フェリアお姉ちゃんに続いて、夜美お姉ちゃんも同じ様なことを言います。
夜美お姉ちゃんも心無しか疲れてるような………
「お化け怖い………妖怪怖い………」
「せ、星………?」
「星お姉ちゃん………?」
「星!?」
私逹の話を聞いていたのか、震え出す星お姉ちゃん。
星お姉ちゃんの動揺っぷりが半端ないんですけど………
「ただいま………」
そんな時、お兄ちゃんが帰ってきました。
「零治、星が!!」
「悪い、ちょっと休ませてくれ………」
そう言って自分の部屋に入っていきました。
お兄ちゃん何だか元気が無いというか、心ここにあらずって感じでした。
流石の優理もタイミングを逃したみたいで、その場で固まってます。
一体、何かあったのかな………?
「ねえ、キャロ、アギト?」
「何?」
「何だ?」
「文化祭って祭りだよね?」
「ああ、そうだって聞いてるぞ」
「なのに星とレイの状況は何?」
「何と言われてもな………」
「私も分からない………」
文化祭って危険なのかな………?
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