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イベリス

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第七十九話 アイスティーその十一

「オーストリア生まれですが」
「まあ同じ文化圏だからね」
「ドイツ語で通じますね」
「ええ、それでドイツだと」
「コーヒーですよね」
 こちらの国だというのだ。
「やっぱり」
「けれどあの人紅茶派だったの」
「そうだったのね」
「お酒も煙草もしなくてね」
 兎角このことは有名だった、当時の軍隊の会議ではワインが飲みものとして出てボトルでグラスに入れて飲んでいた、そして煙草を誰もが吸っていたがヒトラーはその中でどちらも口にしなかったのだ。
「チョコレートとかケーキがお好きで」
「飲みものは紅茶ですか」
「そちらがお好きでね」
 それでというのだ。
「よく飲んでいたそうよ」
「そうだったのね」
「夜中にティーパーティー開いたり」
「あの人夜お仕事してたんでしたね」
「夜もね」
「ああ、休みなしですね」
「明け方までお仕事して」
 ティーパーティー等を開きもしていた。
「遅くても九時には起こされたそうね」
「それでまたお仕事ですね」
「だから昼寝て夜お仕事するとか」 
 そうしたことはというのだ。
「なかったのよ」
「お昼もお仕事してたんですね」
「そう、小山さんも聞いたことあるでしょ」
「思い出しました、あの人そうでしたね」 
 咲も言われて実際に思い出した。
「独裁者って暇なしですね」
「自分に権限集めるからね」
「そうするとですね」
「もう普通にね」
 それこそというのだ。
「忙しいわよ」
「暇なしですね」
「スターリンだって睡眠時間四時間だったらしいし」
 その分仕事そして趣味の読書や園芸に励んでいたという。
「独裁者はね」
「権限集めて」
「絶対者として君臨するけれど」
 それと共にというのだ。
「忙しくなるのよ」
「怠け者だと出来ないですね」
「怠け者は無理よ」
 紅茶を飲みつつ話した、咲もそうしている。
「絶対にね」
「やっぱりそうですね」
「働き者でないとね」
「最低限ですね」
「独裁者にはなれないわよ」  
 こう言うのだった。
「しかも有能ね」
「その条件もありますね」
「だから独裁者になることは」
「大変ですね」
「有能で働き者でないと務まらないから」
 独裁者はというのだ。
「なることはね」
「難しいですね」
「そうよ」
 まさにというのだ。 
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