イベリス
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第七十九話 アイスティーその十二
「なるのもね」
「難しいし」
「なってもね」
「大変ですね」
「それで歴史にはよ」
「無茶苦茶書かれますね」
「存在自体が悪みたいにね」
その様にというのだ。
「書かれるのよ」
「ヒトラーもスターリンもそうですね」
「そうなるからね」
独裁者はというのだ。
「だからよ」
「なるものじゃないですね」
「そうよ、普通に生きるのがね」
それこそがというのだ。
「一番よ、紅茶だってね」
「普通に飲めますね」
「独裁者になったらね」
「紅茶もですね」
「飲めてもね」
ヒトラーがそれが出来た様にというのだ。
「それでもよ」
「いいことはないですね」
「そうよ」
まさにというのだ。
「そうしたものだから」
「政治家になっても」
「独裁者はね」
「ならないことですね」
「忙しいし」
それにというのだ。
「そもそもなるまでが大変で」
「歴史には滅茶苦茶書かれる」
「そうなるから」
「普通が一番ですね」
「政治家でもね」
こう咲に言うのだった。
「世の中そうよ、確かにリーダーシップは必要でも」
「独裁者になると」
「いいことはないわよ」
「そういうことですね」
「そういうことよ」
「そのこともわかりました」
咲は紅茶を飲みつつ答えた、そうしてだった。
紅茶を飲み終えると丁度仕事が入ったのでそちらに向かった、飲んだアイスティーは実に美味かった。
そしてそのことを速水に言うとバイト帰りの咲に笑って言って来た。
「それは何よりです、そう言って頂けますと」
「店長さんもですか」
「はい、嬉しいです」
「そうなんですね」
「ではまた」
「紅茶をですか」
「他のものかも知れませんが」
それでもというのだ。
「差し入れさせてもらいます」
「じゃあ期待していいですね」
「はい、そして小山さんも何時か」
咲もというのだ。
「こうした差し入れをです」
「人にですね」
「される様になって欲しいです」
「人にですか」
「差し入れでなくても人を笑顔にする」
「感謝してもらう」
「そうした人になってもらいますと」
そうすると、というのだ。
「私としてはです」
「何よりですか」
「左様です」
咲に微笑んで言った、その速水の言葉を受けてだった。
咲は家に帰った、この日のことを覚えていようと誓って。
第七十九話 完
2022・9・15
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