| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ファイアーエムブレム聖戦の系譜〜選ばれし聖戦の子供たち〜

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第一章:光をつぐもの
  第4話:二人の王子

 フィー、アーサー、リフィスたちは山賊たちを成敗氏それぞれ解放軍へ足を進めていた頃解放軍はガネーシャ南でイザークのヨハン、ソファラのヨハルヴァの両軍双方と対峙していた。軍は解放軍一万五千、両王子の軍双方と戦力的には解放軍不利であったがどういうわけか両王子は兵を全く進めようとはせず双方は睨み合いの形を取っていた。
「何か妙なことになってるね」
 天幕の中に置かれた作戦会議用の机にセリスはこう言った。机には地図が広げられ解放軍とヨハン、ヨハルヴァの両軍がそれぞれを表す駒が置かれていた。
「もうこの状態になって三日になるとういうのにヨハン王子もヨハルヴァ王子も守りを固めるだけで動かない。一体どういうことなんだ?」
 訝しげに地図を見るセリスを見てスカサハとロドルバンが思わず吹き出した。
「セリス様、もしかしてご存知ないんですか?」
「えっ、何を?」
 スカサハの言葉にセリスはキョトンとした。ロドルバンが真相を打ち明けた。
「ヨハンはラクチェに、ヨハルヴァはラドネイにそれぞれベタ惚れなんですよ。だからあいつらは軍を動かさないんですよ」
「え?そうなの!?」
「ちっ、違います違います!」
「そうですよ、なんで私があんなカザツな奴と・・・」
 ラクチェとラドネイが顔を真っ赤にして必死に真実を覆い隠そうとする。それをスカサハが剥ぎ取った。
「あいつらはそんなわけで俺たちと戦いたくないんですよ。むしろラクチェやラドネイの側にいられるから解放軍に入りたがってる位でしょうね」
「そうか、あの二人はダナン王の暴政にも終始反対していたし悪い人間じゃない。それに腕も立つ。是非解放軍に入れたいな。どうしようか」
「使者を送ればよろしいかと」
 オイフェが献策した。
「よし、そうしよう。その使者は・・・・・・」
「適役が二人いるじゃないですか」
 レスターとディムナが悪戯っぽく片目を瞑って適役の二人を親指で指差した。指された二人の顔にまた火が点いた。
「よし、じゃあ行ってくれ二人共。デルムッド、トリスタン、馬で送ってくれ」
「ちょっとセリス様それだけは・・・・・・」
「そうですよ、私はどっちかというとオイフェさんやホメロスさんみたいな人がよろしいかと・・・・・・」
 二人がわあわあと慌てふためいて顔を真っ赤にして懸命に断ろうとする。他の者はそれ見てクスクスと笑っているが当の本人たちは必死である。他に笑っていないのは骨の髄まで騎士道精神が入った『堅物の中の堅物』と呼ばれる男オイフェとその愛弟子でそういうことには疎いセリスだけである。セリスがその二人を知らず知らずに引導を渡した。
「頼む。解放軍全体の生死が関わっているんだ。二人共是非行ってくれ」
「・・・・・・わかりました」
 青菜に塩を振りかけたようにラクチェとラドネイは項垂れデルムッドとトリスタンに連れられて天幕を出た。まだ周りに笑い転げているのを全く理解が出来ていないセリスであった。キョトンとし、なぜみんながこんなに笑っているのか、オイフェに目が問うたがオイフェもわかりません、と首を横に振り腕を組み首を傾げるばかりであった。

ーイザーク・ヨハン軍陣地ー
「殿下、リボーから反乱軍を討てとの伝令が来ておりますが」
 L字陣の下の部分であるヨハン軍本陣で、ロナンが主に報告する。
「ううむ・・・・・・」
 ヨハンが呻くような声を出した。
「どういたします?まだ動かないですかおきますか?」
「うむ。もう三日間待とう。それで何もなかったら一応攻撃しよう」
「わかりました」
「ラクチェ・・・・・・」
 解放軍の方を見てヨハンは愛しい者の名を呟いた。その時解放軍の白旗を掲げた一騎の使者が現れた。
「誰だ!?」
 オーシンとハルヴァンが迎えに出た。やがて二人は酷く慌てた様子で陣に戻ってきた。
「一体どうしたというのだ?」
 凄まじい勢いでヨハンの方へ駆け込んできた二人を見て彼は不可解そうに尋ねた。
「反乱軍からのし、し、し、使者ですが・・・・・・」
 普段いつも冷静なハルヴァンさえも完全に取り乱している。
「使者が!?」
 ヨハンは更に突っ込んだ。
「デルムッドと・・・・・・」
 オーシンは酸欠の川魚のように口をパクパクさせている。
「ラクチェです!!」
「ラクチェ!!」
 その名を聞くや否やヨハンは喜び勇んで白旗の方へ駆けて行った。その後もロナン、そして肩で息を切らしながらもオーシンとハルヴァンが必死に追いかけていく。
「ラクチェーーーーーーッ!!」
 両手を思い切り広げてヨハンはラクチェへ突っ込んでくる。それを見たデルムッドはドン引きしていたが当のラクチェ整った眉間を皺に寄せた苦虫噛み潰した顔をしている。
「ああ、ラクチェ・・・我が愛しの人よ・・・ついに運命の日は来たり・・・」
 俯き目を閉じ右手でヨハンを制したまま左の人差し指を額に当て眉をひくひくさせたラクチェは口を開いた。
「やめろ!気持ちが悪い!ここは戦場なのだぞ!とても正気とは思えない」
「私の心が、偽りではない証拠を見せる。愛は時に人を狂わせるもなのだ」
 腰の剣に手を掛けそうになるが思い止まり言葉をかける。
「セリス様からお誘いよ。解放軍に入って一緒に戦わないか、って」
「え!?」
「どうすんの?あんたもお父様を裏切るわけになるし心苦しいだろうから無理強いはしないわよ」
「・・・・・・そんなことは決まっている」
 ヨハンはラクチェを見て微笑んだ。それを見てラクチェの全身に寒気が走った。
(これはやっぱり・・・・・・)
 ヨハンが最も危惧していることを言うのだと勘で直感した。
「みんな」
 ヨハンは自分の軍の方へと向いた。そしてラクチェが最も恐れていた言葉を発した。
「全軍に次ぐ、これより我が軍は、解放軍に協力する!今日から我らは、愛と正義と、ラクチェのために戦うのだ!!」
 ヨハンの軍からオオーッ、と賛同の雄叫びが沸き起こる。その雄叫びの中、ラクチェはがっくりと肩を落とした。しかしヨハンはその両肩を強く抱き締めた。
「ラクチェ、私たちはこれでいつも一緒だ。もう離さないぞ!」
 満面な笑みを浮かべるヨハンであった。

ーソファラ・ヨハルヴァ軍陣地ー
 ラクチェとヨハンが陣で話していた同じ時ラドネイとヨハルヴァも会っていた。
「ラドネイじゃねえか!俺に会いたくなって、ここまで来たのか?」
 天幕の入口で立ちながら話をしているヨハルヴァの顔からは笑みが溢れそうだ。
「ヨハルヴァ、セリス様から伝言よ」
 いかにも嬉しそうなヨハルヴァに対しラドネイは腕を組んでそっぽを向き突っ慳貪に話す。
「解放軍に入らないかってまあ強制はしないわよ。あたしは別に戦ってもいいんだし。それにあたしは・・・んっ!?」
 ラドネイの口をヨハルヴァは自分の手で塞いだ。
「むぐっ!?(な、何すんのよ!)」
「その先言う必要はねえぜ」
 ヨハルヴァは小さく首を横に振り言葉を続ける。
「んっ!んんーっ!(離しなさいよ!ちょっと!)」
 必死に逃げようとするが叶わない。
「おおしっ!野郎共!」
 ラドネイを抑えながら自分の軍に大声で言う。
「今日から俺らは解放軍だ!てめえら、愛と正義のために戦おうぜ!」
「おおーっ!」
「むぐうっ!んっ!んむーっ!(ちょっとあんたたち!あたしの言う事を聞きなさいよ!)」
「ラドネイ、俺はお前のために戦うぜ!」
「はむう!あうーっ!(ふざけないでよ!なんであたしがあんたなんかと!)」
「んーーーっ!!(イヤーーーっ!!)」
 ヨハルヴァに抱き締められラドネイは何回も高く振り回されていた。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧