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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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習得

<ネクロゴンド>

アルル達は4日間を費やし、強敵蔓延るネクロゴンドの洞窟を抜ける事が出来た。
洞窟を出た目の前には、途轍もなく大きな湖が広がり、その遙か中央に禍々しい妖気を発し佇む城が微かに見える。
「あれがバラモス城………まだ距離があるのに、凄い威圧感ね…」
アルルがバラモス城を見つめ、震えながら呟く。
「大丈夫…君なら勝てる、絶対に!だから今は、シルバーオーブの事を考えよう」
震える彼女の肩を優しく抱き寄せ、力強く鼓舞するティミー。

またしても自分らしくない事をしてしまったと思い、チラリとリュカ等の方を見ると…
リュカ・ビアンカ・マリーがビシッとサムズアップで褒め称えている。
ティミーは頬を染め、思わず顔を背けたが、後ろ手でサムズアップし返す成長を見せた。



アルル達はネクロゴンドの祠に入り、シルバーオーブを探し出す。
程なく、1人の神官の霊が現れ、アルル達にシルバーオーブを手渡すと、彼は天へと成仏していった。

そして祠を出て、ウルフがリュカに提案する。
「リュカさん。ちょっとルーラを使うのは待ってくれますか?」
「何で?もう一回洞窟を逆送するの?僕は別に構わないけど…みんなは大丈夫?」
当初の計画で、帰りはアッサラームまでルーラを使用する事になっていた。
その為、船もアッサラームで待機する様に指示してあり、わざわざネクロゴンドの洞窟を逆に抜ける意味は無い!

「違うよ!俺さ、今ルーラの勉強をしてるんだ!だから1度試してみたくって…」
「ほう!ウルフもルーラを使える様になったか…便利だよねルーラって!」
「いや、まだだから!勉強してきたので試したいって言ってるじゃんか!」
まだルーラが成功した事のないウルフは、リュカの決めつけに些か苛つき反発する。
「大丈夫だよウルフなら!バビュ~ンとルーラを使えるよ」
「そうよ!ウルフならルーラぐらい簡単に唱えられるわ!」
リュカはウルフの才能を信じ切り、マリーは抱き付き激励する。
ウルフは2人の信頼に赤面しつつも、アッサラームへのイメージを目を瞑り思い描く。



<アッサラーム>

「ルーラ!」
そしてウルフはルーラを唱え、そっと瞳を開く…
するとそこにはアッサラームの町が!
「や、やった!成功した!やりましたよリュカさ…ん?」
ウルフは嬉しさを身体で表し、振り向いてリュカに報告しようとしたのだが…
そこに居たのはウルフに抱き付いているマリーのみ。
どうやらウルフの魔法力では、自身ともう1人だけが移動出来るのが限界の様だ。

その後、少しの時間をおいてリュカ等も一斉にルーラで出現する。
「お前…マリーと2人きりでイチャ付きたい為だけにルーラを習得したんじゃね?」
合流早々、リュカが呆れきった口調でウルフに話しかける。
「え!?………えぇ、まぁ…それ以外に用途はありませんから(笑)」
「だよねー!僕もコレのお陰で、遠く離れた愛人の元へと楽に行ける!(笑)」
愛妻の前で言う様な台詞では無いのだが、爆笑しながら答えるリュカ…
自ら冗談めかしたウルフも、まだまだ敵わない様だ。

「彼女と2人きりになる為の魔法が…いいなぁ…僕もルーラを憶えたいのですが!?」
しかし一同を驚かせたのは、真面目っ子ティミーの発言だ!
「え!?…本気で仰ってますティミー君?」
流石のリュカも、鳩が豆鉄砲喰らった顔して驚いている。

「今の環境は僕にとって難易度が高いんです。あなた達の様なデリカシーの欠片もない人達と常に行動を共にしていると、恥ずかしがり屋の僕はアルルとの親密度を上げる事が出来ない!…そこら辺を解ってもらいたいですねぇ…」
一応リュカは、自分の腰に差してある変化の杖を確認する…勿論ある!
するとティミーの隣にいたアルルが、クスクスと腹を抱えて笑い出した。
何処までが本気で、何処からが冗談か…
父親似にて分かりづらい事を言う様になった。



さて、アッサラームの町へ入り、一行は宿屋へと…
先に船と共に戻っていたモニカ等と合流すると、近くの食堂で夕食をする事に…

「しかし真面目な話しティミー…お前がルーラを憶えるには、かなりの苦労が必要になるぞ!僕等の住んでいる世界では、ルーラは失われた魔法だ…先ずは魔法特性を付けないと、ルーラを理解しても使用出来ない!僕等の世界で生まれつきルーラの魔法特性を持っていたのは、ポピーだけなんだ…ズルイよね」
「まぁポピーは性格はアレですけど、魔法の才能は素晴らしいですからね…性格は最悪なアレですけど!」
ティミーがくどい程『アレ』と言う言葉を強調して話す。
ビアンカとマリーは、思わず笑い食事を吹き出してしまう。
「「汚いな…2人とも」」
珍しくハモるリュカとティミー。


「では、父さんはどうやって魔法特性を得たのですか?…そう言えばリュリュも、ルーラを憶える事が出来たそうですよ」
「本当に!?…そうかぁ…ベネット爺さんの所へ行ったのか…可哀想に」
リュカが今は遠くの娘を思い、哀れそうに呟いた。

「確か…ルラフェン…ですよね!ベネットさんが居るのは。…一体そこで何をするんですか?リュリュも喋りたく無かったようですし…まさか変な事をされたのでは…?」
ティミーは最愛の妹 (?)を思い、些かの怒りを滲み出させる。
「変な事は無い!そんな変な事する奴の所に、大切な娘を行かせたいするものか!そんな事する奴なら、とっくの昔に僕がぶっ殺してる!」

「じゃぁ、何されるんですの!?私もルーラを憶えたいので、是非とも教えて欲しいですわ」
勿体ぶるリュカに、痺れを切らしたマリーが催促する。
「うん…リュリュの料理を食べた事あるよね…?」
「「はい」」
「僕はアレを食べきる事が出来る…まぁ、不味いけど泡ふいて倒れる程じゃない…僕にとってはね」

「アレを食べきれるお父さんは、凄いと言うより何処かがおかしいですわ!」
「あははははは…でもね、ルーラの特性を得る為に飲む薬は、僕ですら気絶する不味さなんだよ!…それでも耐えられるかい?」
「「……………」」
リュリュのクッキーを食した事のある2人は、それ以上のダークマターの存在に沈黙してしまう。

「わ、私はムリですぅ…アレですらムリですから!」
主語を発しない彼女の台詞に、他の者も大凡感じ取る事が出来る。
「ティミーはどうだい?」

「………あれ以上ですか…正直考えちゃいますね…」
「まぁ、お前にはもう関係かもしれないが、ルーラの薬を飲んだ事があれば、リュリュの料理は苦痛じゃ無くなる。…勿論、不味い事に代わりはないが…」
「なるほど…それであのクッキーを平らげる事が出来たのですね…」
話題が話題なだけに、皆の食が滞る…
リュカだけが、気にすることなく食事をお代わりする…
皆、リュカの胃袋が羨ましくなる時があるのだ。



 
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