DQ3 そして現実へ… (リュカ伝その2)
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稲妻
<ネクロゴンドの洞窟>
アルル達は目の前の敵を倒しつつ、洞窟内を進んで行く。
初めのうちはティミーの指示で戦闘を行っていたが、次第にコツを掴み、アルルが率先して指示を出す様になる。
「どうですか父さん!…アルル達は十分に強いですよ。戦い慣れた弱い敵とばかり戦うのも良いですが、新たな敵と戦い成長を促す事も必要です!」
リュカのルーラ使用が…使用させた事が、間違いでない事を強調するティミー。
そんなティミーとアルルを見ながらリュカが言う。
「良い彼女を捕まえたな…」
ティミーは誇らしげにアルルの肩を抱き寄せる。
ラブラブである。
だが、この後に呟いたリュカの言葉は聞こえなかった様だ…
「絶対、どっかのバカ女に騙されると思ってたのになぁ…」
マリーも父の言葉に大きく頷く。
暫く進むと、通路上に宝箱が1つ…
勿論スルーするつもりの一行なのだが、マリーが小声でリュカに懇願する。
「お父さん…この洞窟に、結構強力な剣があるんですよ。宝箱を開けたいのですが…許可してもらえます?」
「…またモンスターかもしれないだろ!サマンオサで懲りなかったの?」
リュカも小声で答え返す。
「その件につきましては十分に反省してます!ですが、この洞窟の宝箱にはトラップはありません!100%安全に、強力な武器を入手出来るんですよ」
「それはゲーム内での事だろ…此処でも同じとは限らないだろ…」
「いいえ!基本設定に違いはありません!この洞窟内では宝箱は安全です!お父さんは、冒険者としてスペシャリストかもしれませんが、DQ3の知識で私はスペシャリストです!」
リュカ相手に強気で責めるマリー…相当自信がある様子。
リュカは立ち止まり、宝箱を見ながら考える。
アルル達もリュカにつられて立ち止まり、リュカを見つめている。
「………よし!おいカンダタ…ちょっとその宝箱を開けてみろ!」
1人黙り、考え抜いた末に出した結論…
カンダタに開けさせ、自分たちは少し後ろに下がっちゃう!と言う事…
「はぁ!?何で俺なんだよ!モンスターかもしれないだろ!!」
「うん。だからさ…危ないだろ!」
「俺ならいいのかよ!」
「うん」
「「酷い」」
勇者カップルが呟いた。
「父さん…いくら何でも酷すぎですよ!カンダタさんだって、僕等の大切な仲間ですよ!…それに、急にどうしたんですか?普段なら宝箱は危険だから開けるなって言うのに!」
「だって…あの宝箱に、凄そうな物が入ってる気がするんだもん!…そんな匂いがする」
「匂いって…そう言う不確かな情報で、危険な事をさせるのはどうかと思いますが!」
「大丈夫…多分危険じゃない!僕を信じろ…な、カンダタ!」
無責任極まりない口調で言い、カンダタを宝箱の前まで押しやるリュカ。
「父さん!いい加減に「分かりました…私が開けます!」
リュカの根拠薄弱な自信に文句を言うティミーの言葉を遮り、アルルが自ら名乗りを上げた!
「え!?き、危険だよアルル!匂いがするとか、そう言うレベルなんだよ!」
「大丈夫よティミー…リュカさんが開けろと言うからには、危険では無いのよ。そして中身も凄い物なのよ…きっと」
アルルの決意を聞き、彼女を抱き寄せ必死に説得を試みるティミー。
だがアルルは両手で優しくティミーの顔に触れ、危険がないと説明する。
「うん。パパを信じるいい義娘だ!」
リュカの軽い口調の一言に、ギロリと睨むティミー…
「だったら…僕が開けるよ!アルルを危険に晒すわけにはいかないよ!」
「そ、そんな…ダメよ!この世界を救うのは私の役目…その為に成すべき事は私がやるの!それが勇者アルルよ!」
「そんなの関係ない!僕には君を守る事が役目だ。その為にはやるべき事をやる!」
若い二人は抱き合い見つめ合う。
「…それじゃぁ、一緒に開けましょうティミー」
「…うん、そうだね。それだったら、モンスターが出てきても怖くない!」
最早、2人だけの世界に浸ってる。
「…何だかイライラする空気が漂ってきますわ!1発ぶん殴っちゃって下さいお父さん!」
「まぁまぁ…良いじゃないか、このくらい。宝箱1つでイチャイチャ出来るなんて、凄い事だよ!もっと見ていようよ」
リュカとマリーがニヤニヤしながら囃し立てる。
「う、うるさいわね!今、開けるわよ…私達の事は放っておいてよ!」
顔を真っ赤にしたアルルが宝箱へと歩いて行く…ティミーとしっかり手を繋ぎ。
ティミーとアルルは、モンスターの出現に身構えながら宝箱をゆっくり開ける。
すると中には1振りの剣が入っていた。
その剣を取り出し、構えるアルル…
「まぁ!?その剣は『稲妻の剣』ですわ!ダーマに居た時に、旅の人から教えて頂きましたわ!」
「へー…強そうな剣だねぇ………よし!それはアルルが使うんだ!そんで、アルルが使ってた『草薙の剣』はウルフが使え!」
アルルが持つ剣を見たマリーが、取って付けた様な説明をし、それを聞いたリュカが、強制的に装備者を決めてしまう。
「ちょっとリュカさん…俺は良いですけど、そんだけゴツイ剣なんですから、戦士のカンダタが装備した方が良くないですか?」
「うん。そうだねウルフ…その方が効率的に見えるよね!」
「じゃぁ…」
「でも、その剣は格好良すぎる!カンダタには似合わないよ…それに宝箱を開けたのはアルルだからね。アルルが装備するのが自然だ!」
ザ・リュカ理論!
一方的かつ理不尽!
「何て酷い理由…では、リュカさんの指示通りカンダタが宝箱を開けていたら!?」
「その時はカンダタが装備すれば良いんだよ…でも、カンダタは開けなかった!ビビって開けられなかったんだ!格好悪~い!…そんな奴に、そんな格好いい剣は似合わない!お前には、その『バトルアックス』が似合ってる」
「そ、そんな一方的な!」
「いやアルル…良いんだ。旦那の言う事は事実だ!俺はビビって開けられなかった…その剣は勇者のアルルに似合ってると思うぜ!」
「カンダタ…」
「それに俺は剣を振り回すのは似合わない…斧をぶん回してる方がお似合いさ!」
「じゃぁ…斧系の強力な武器を見つけたら…」
「あぁ、そん時は誰にも譲らねぇ!例えビビって宝箱を開けられなくてもな!」
「ふふふ…分かったわ、その時はカンダタに譲ります」
アルルとカンダタが互いに笑い合う。
そんな2人を見ながらリュカが言う。
「ほら、丸く収まったよ」
だが、この台詞にティミーが凄い形相で睨み付けている。
「どうしようマリーさん…僕、息子に睨まれてますよぉ!」
「大丈夫よお父さん。娘は全員がお父さんの味方ですから!」
何時まで経っても、息子から絶対的な尊敬を得られないリュカだった。
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