イベリス
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第六十二話 命の大切さその十二
「そうそうね」
「いないのね」
「そこまで駄目な人はね」
「そうなのね」
「普通の人は最低限の感謝の気持ちはあるか」
「信仰心があるのね」
「全く自分だけでもないと」
それこそというのだ。
「救われないなんてね」
「ないのね」
「そうよ、レベルが低いというか」
「どうしようもない人ね」
「そこまでならないと」
「人は救われるのね」
「そうしたものよ、世の中は」
娘に真剣な顔で話した。
「そんな人はもう人間に生まれ変わらないでしょうけれど」
「じゃあ何に生まれ変わるの?」
「餓鬼でしょうね」
ここでは母はあっさりと答えた。
「それは」
「餓鬼なの」
「そう、どんな生きものでもなくて」
「餓鬼に生まれ変わるの」
「そんな人は物凄く人間性が卑しいから」
そうした輩だからだというのだ。
「それでね」
「餓鬼になるのね」
「普通の生きものじゃなくてね」
餓鬼に生まれ変わるというのだ。
「あまりにも浅ましく卑しい人ならね」
「餓鬼になって」
「ずっと飢えや渇きに苦しむのよ」
「餓鬼にはなりたくないわね」
咲は心から思って母に言った。
「それでそう思うなら」
「ちゃんと生きることよ」
「努力もして」
「そうよ、それに死んで餓鬼に生まれ変わる位の人間性だと」
咲に真顔で話した。
「それ位浅ましくて卑しいなら好かれると思うかしら」
「絶対に嫌われるわね」
「そうでしょ」
「それもかなりね」
「そうもなるからね」
「そんな人にならない様に」
「努力してね」
こう娘に言うのだった。
「お母さんいつも言ってるけれど」
「努力しろってね」
「努力は嘘を吐かないからね」
「その時駄目でもよね」
「後で貯金になるからね。学校の勉強もアルバイトもそうなるし」
努力にというのだ。
「いい人とお話したりお付き合いしてもね」
「努力ね」
「ちゃんとした本を読んでしっかりした考えを持つこともね」
これもというのだ。
「部活もで正しい遊びをしてもね」
「努力になるの」
「要するに人生の経験ね」
努力はというのだ。
「それだから咲はこれからね」
「努力することね」
「そうしてね、家事もそうだから」
「モコのお散歩も?」
「ご飯をあげてブラッシングしてね」
そうしたことをしてというのだ。
「愛情を注ぐこともね」
「努力で人生の経験を積むことね」
「そうよ、だからこれからどんどん努力して」
「人生の経験を積むことね」
「そうしていってね、そうしたら立派な人になって」
そうしてというのだ。
「幸せな人生送れるから」
「これからもどんどんね」
「努力してね」
「そうしていくわ」
咲は母に応えた、そうしてモコを見ると自然にいとおしいと思った。自分を見ている彼女を見てこれも努力なのかと思うのだった。
第六十二話 完
2022・5・8
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