イベリス
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第六十三話 夏が近付く中でその一
第六十三話 夏が近付く中で
六月も下旬になった、するとだった。
部室でだ、部長がこんなことを言った。
「あと少しでテストだね」
「それが終わったら夏休みね」
副部長は部長にこう返した。
「そうね」
「うん、それを言うつもりだったんだ」
「だからまずはテストを頑張る」
「それでいい結果を出して」
「気分よく夏休みに入るのね」
「そうしようね。うちの部活はテストの点が悪くても特に何もないけれど」
部長は今度は部員全員に話した。
「やっぱりテストの点はいい方がいいから」
「だからですね」
二年の男子部員が応えた。
「僕達は」
「うん、皆出来るだけいい点を取ろうね」
「勉強をして」
「そうしようね、勉強してるかな」
部長は二年の男子部員だけでなく他の部員達にも尋ねた。
「テスト前だけじゃなくて」
「まあ一応は」
「コツコツとしてます」
「時間を見て」
部員達はそれぞれ答えた、そして咲も答えた。
「私も予習復習はしてます」
「そうなんだね、小山さんも」
「そうしています」
「そういえば小山さん成績よかったわね」
副部長がこのことを言ってきた。
「一年の中で」
「いえ、別に」
「謙遜しなくていいのよ。成績はいいに越したことはないから
「そうですか」
「いいならいいでね」
それでというのだ。
「満足しないとね。けれど模試で全国二番とかでも」
「それって凄いですよね」
「前の都知事さんみたいになったらね」
「あの人ですね」
「駄目だしね」
「あの人そうだったんですね」
「模試いつも二番か三番で」
全国のそれをというのだ。
「東大法学部入ってね」
「それは知ってました、私も」
「そこから留学もして東大の先生になって」
「物凄いエリートですね」
「何ヶ国語も喋れて学者として有名になって」
「政治家にもなって」
「それで都知事にもなったけれど」
それでもというのだ。
「ああなったらね」
「駄目ですね」
「成績がいいに越したことはなくても」
それでもというのだ。
「人間として駄目過ぎたらね」
「ああなるんですね」
「正直あの人人間としてはいお話聞いたことがないから」
兎角というのだ。
「人間性が駄目過ぎたら」
「成績がよくて頭がよくても」
「学者さんとして凄くてもね」
そして都知事にまでなろうともというのだ。
「ああしてね」
「都知事辞めることになって」
「それでね」
そのうえでというのだ。
「今はよ」
「あの有様ですね」
「信頼を完全に失って」
まさにそうなってというのだ。
「何を言っても相手にされてないでしょ」
「都知事の時どうだったって」
「もうそれが実績になっていて」
「マイナスのですね」
「それでよ」
「誰もですね」
咲も言った。
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