IS 転生白書 オリ主が奏でる新しいインフィニット・ストラトス
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ちょっとの背伸び!
前書き
相川拓夢
16歳、黒髪に青い瞳。
専用機を用いた初戦闘で勝利を収める。相手は同じ男性操縦者の織斑一夏が使う白式。
機体性能はまだ底が知れない。背中にあるウィングスラスターはとても小型だが、強力そうだ。
引き続き調査を実行する。
四月も下旬。遅咲きの桜が全て散ってしまった頃。俺達は気合入りまくりで授業に励んでいる。
その理由は二つ。
「ではこれよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらう。織斑、オルコット、そして相川。・・・男のほうだ。試しに飛んで見せろ。専用機持ちなら、準備に時間はかかるまい」
一つ目が、この時間が織斑千冬大先生の受け持つ実戦授業だから。
気合が無ければ出席簿が飛んでくる。話を聞き逃せば出席簿が飛んでくる。集中していなければ出席簿がとんでくるからだ。
「え、まさか相川君も専用機を?」
「そう言えば。まだ届いてなかったらしいよ」
「えー、じゃあやっと来たってことなのかなあ」
「ウチのクラス、専用機持ちが三人とか。・・・何気に凄くない?」
「凄いよ!これで代表戦も貰ったね!!」
俺が専用機持ちの二人と同時に呼ばれた事で、少しざわめきが起こる。
大抵千冬さんの授業では、この様なざわめきも無いんだけど、事が事だけにってな。
二つめの理由は、これがISを使った実戦訓練だからだ。
ISを扱う技能を手に入れるために入学してきた彼女達は、これまであまり触れる機会がなかった。
それが、今回は授業ということで触れることが出来るのだ。
気合が入らないわけが無い。
「「はい!」」
返事が被ったけど気にしない。
俺は専用機を手に入れてから、毎日起動して戻してを繰り返す訓練を、朝の練習に入れていた。
IS学園内と言えど、許可なしに決められた場所以外でのISの使用は禁止されている。
だから俺は、千冬さんに許可を取っている。千冬さんが見ている前でなら展開していいと許可も貰った。
「ふん、中々の速度だ。しかし、まだ実戦では遅い。・・・もっと精進しろ」
「了解です、織斑先生」
展開速度は0.4秒くらいか?
コンマ何秒の世界だと、感覚的には違いが分かるけど正確なタイムまでは感じ取れないから。
そこら辺はてきとうだ。
横を見ると、セシリアも同じくらいの速さで展開していた。
ドヤ顔された。何だその顔、言っとくけど負けてないからな?
「うわ、相川君のIS格好良い・・・」
「青色だね!セッシーのと少し似てるかも」
「背中の羽が小さいのはなんでだろ~?」
あ、因みに俺のISの待機モードはネックレスだ。
チェーンの先に、翼を模した青色の飾りがついている。
「こい、白式!」
ようやくと言った所か。一夏も展開を完了させた。
時間的には最悪だ。実戦なら既にやられていますってな。
でもまぁ今は訓練。最初から上手く出来る奴なんて居やしないよ。それこそ、神に愛されているとか無い限り。
そう言えば最近教えてもらった事なんだけど。どうやら俺の操縦方法はマニュアルだったらしい。
千冬さんがこの間の朝練で、もうそろそろいいだろう、と言ってから教えてくれた。
例えるなら車かな・・・。
オートマだと、ギアの切り替えなんかは自動でやってくれるだろ?それと同じ。
ISもマニュアルだと、自分でスラスターの切り替えやPICの制御などを意識していないといけないんだ。その分、オートに比べてより高度な操縦技術が必要とされる。
メリットとしては、高度な技術が必要な分、高度な動きが可能って事。
最初のうちはオートでやっていくことが多いんだけど、そこが千冬さんの凄いところ。
どうせマニュアルになるなら最初からやれ。って鬼ですかっての。
流石にPICを使ったことが無いとイメージが湧き辛いから、本当の最初にはオートで飛ぶのを認めてるらしい。俺は一夏が試験会場でばれた後に一回。入試の代わりにあった教官とのバトルで一回使ってるから十分なんだと。
「よし、飛べ」
「お先に失礼しますわ!」
千冬さんの指令と同時に、セシリアが先行して飛んでいった。
って気合入れすぎだろ!グラウンドから砂埃が舞い上がってるじゃん!
今日は風が強めで乾燥してるから、ちょっとした事で砂埃が舞う。
それが目に入って痛いんだよ、気をつけろって。
まぁ、IS展開してるから痛くないけど。
「じゃ、俺も先行くぜ一夏」
PICを使い少し浮かぶ。そのまま5mほど浮かんだところで一気に加速!
脹脛、腰、背中のスラスターを一気に全開で吹かせ、ゼロから最高速度まで突っ走る。
「くぅっ・・・」
ガツンと一瞬Gがかかり、意識を持っていかれそうになるが気合で持ち直し、どんどん小さくなっていくクラスメート達を感じ取りながらセシリアを追う。
「ふふっ、追い抜かせますかしら?」
「はっ、上等だ!」
前を行く御仁は余裕の様子。ならばいっちょ、驚かしてやりますか。
全スラスターを吹かせながら追う。それでも追いつくには十分な速度が出ている。
その間にエネルギーをチャージして・・・・・・。
「行くぞ!」
「あら、そんな遠くから何を・・・って、きゃあっ!!」
瞬時加速。名をイグニッション・ブーストというらしい。
チャージしたエネルギーを解放することで生まれる、爆発的な加速力。
何十メートルの距離を、停止した状態からでも一瞬で詰められる技能だ。
俺はそれを使い、セシリアを追い抜かしたところで停止した。
あー、みんなは遥か眼下。そこから一夏がふらつきながら昇ってくるのが見える。
まだ機体制御が上手くいってない様だ。これは、千冬さんから教えてもらった事を伝えなきゃいけないか?
「さ、流石は拓夢さん。わたくしが認めたライバルですわ」
「そりゃどーも」
「あら、一夏さんはどこかしら?」
「ほれ、まだ下だぞ」
「あら、本当ですわ。・・・一夏さん、まだISに不慣れな様子。これは放課後わたくしが手とし足とリ・・・うふふ、うふふですわ」
「・・・・全部筒抜けだっつーの」
小声で呟いても聞こえる。それが全てのISに当てはまる事なのか。分からないけど、まぁ聞こえるんだ。
にしても、箒にしろセシリアにしろ、一夏が好きならもうちっと方法を考えてもいいんじゃないのかねぇ?
今みたいに競うようにしても、一夏は靡かないと思うんだけどな・・・。
「く、くそ。拓夢もセシリアも速いな」
「お前が遅いんだよ、一夏。大事なのはイメージだからな?」
「う~ん、イメージがなぁ・・・。大体角錐を目の前に展開するイメージってなんなんだよ?」
「一夏さん、イメージは所詮イメージ。ご自分の分かりやすい方法を模索する方が建設的でしてよ?」
「そう言われてもなぁ。大体、空を飛ぶ感覚自体まだあやふやなんだよ。なんで浮いてるんだ、これ?」
そう言われてみれば。
確かに俺も理屈じゃ分かってないからな。知識としては詰め込んだけど、理解までは出来ていない。
俺の背中にあるウィングスラスターも小さくて頼りなさげだしな・・・。
あ、清香がこっちに手を振ってる。振り返しておくか・・・。おお、嬉しそうだ。
「そう言えば、拓夢はどうやってイメージしてるんだ?始めた時期は同じはずなのに、なんでお前だけそんなに上手く飛べるんだよ?」
「・・・・ん?悪い聞いてなかった」
「あー、また清香のほう見てたのか?拓夢と清香って付き合ってんのか?」
「んなことねーよ。なんでそう思った?」
「だって毎日一緒に居るじゃんお前等。見るたび話してるしな」
「おいおい、それだけで付き合ってるって言うなら、お前とセシリアだってそうなるんじゃね?」
「んん?・・・そうか、それもそうだな」
「い、一夏さん!?それに拓夢さんも何を言っていますの!!」
「おやおや?そんなに焦ってどうしたのかな、セシリアは」
「い、意地悪ですわ!わたくしの気持ちを知っていながら・・・・」
「なんだ?セシリアは拓夢の事が好きなのか?」
「「はぁっ!?」」
「ちょっと待て、今の流れからどう考えたらそうなるんだよ!」
「そうですわ!一夏さん、もうちょっとデリカシーというものをお持ちになったいかがです?だいたい、わたくしが好きなのは・・・」
「ん?どうしたんだセシリア、顔真っ赤だぞ」
そう言いながら一夏がセシリアに近づいて、おでこに手を当てようとした時。
『一夏っ!いつまでそんなところにいる!早く降りてこい!』
何故か真耶先生のインカム奪った箒が、何故かタイミングよく怒鳴っていた。
にしても、俺達がここに居るのは千冬さんの指示だし。
箒、そんなことしたら制裁が・・・。
『何をしているか、この馬鹿者が』
『す、すみませっ!?』
ほら、殴られた。頭をグーで。あれは痛い。
「相川、織斑、オルコット、急降下と完全停止をやって見せろ。目標は地表から10センチだ」
「了解です。では一夏さん、拓夢さん、お先に」
「まぁ待て」
先に下りようとしていたセシリアを止める。
「なんですの?」
「どうせだから勝負しようぜ?」
「勝負?何の勝負だよ」
「ルールは簡単だ。誰が目標である地表から10センチのところに一番近づけるか。勝者はビリからジュースおごりってのでどうよ?」
「いいですわね。では、わたくしが先頭を勤めさせていただきますわ!」
「じゃ、俺二番目で。一夏がトリだぜ、頼んだよ」
「うぇ・・・、俺が最後かよ」
とまぁ、俺から勝負をもちかけた。
こういう事って、何故だか勝負にしたくなるのが俺の性ってな。
セシリアは上手いこと急加速から着地を決めた。
結果はどうだ?
『お二人とも、わたくしは13センチですわ』
おお、たったの三センチかよ。誤差少ないな。
「なにっ!たったの三センチかよ。誤差少ないなセシリア」
一夏が同じこと考えていたようだ。
次は俺の番だな?
「さて、いきますか」
加速。
イメージはツバメだ。
急降下をしてから地表近くでいきなり水平になるイメージ。
いけっ!
「・・・相川5センチ。ギリギリすぎだ、気をつけろ」
「はい、練習します・・・」
ぎりぎりで行き過ぎた。
結果はマイナス5センチ。セシリアに負けちまった。
「ふふ、どうやら今回はわたくしの勝ちのようですわね?」
「そうだな。今ん所、1-1で引き分けか?」
「そうですわね。これでようやく同じですわ」
「あとは一夏だけど」
「どうでしょうか、一夏さん・・・」
結果は既に決まったも同然だがな。
いや、だけどもしかしたら一夏が勝つかもしれない。
ほら、ビギナーズラックが・・・・
ギュンッ──────ズドォォンッ!!!
「「・・・・・・」」
一夏、マイナス2m。
勝者、セシリア・オルコット。
IS 転生白書 オリ主が奏でる新しいインフィニットストラトス
第25話 ちょっとの背伸び!
「あははっ、それは残念だったね」
「本当だわ。あと3センチ手前だったら俺の勝ちだったんだけどな」
「それにしても、凄いよね拓夢君」
「何が?」
「何がって、ISのことに決まってるじゃん。まだ動かしてから一ヶ月とちょっと、それだけしか経ってないのに、代表候補生と張り合えるくらい上手なんだもん。・・・ちょっと嫉妬しちゃうよ」
清香が最後に呟いた言葉は、聞こえなかったことにした。
多分、思っていても俺には聞いて欲しくない言葉なんだろ。
性格上、言いたい事はズバッと言うからな。
夜。俺と清香は第三アリーナから出たところだった。
時刻は八時を過ぎた頃。既に日も沈んでて、外灯の照明が唯一の明かりってな。
今日は清香の特訓に付き合っていた。
ラファールリバイブ。疾風の再来だったか?そんな意味の機体。
これを借りるのに書類を書くのが面倒で、俺は専用機持ちでよかったとつくづく思ったね。
折角借りることが出来たんだから、練習付き合ってと清香に頼まれて。
まぁ俺もアリーナ予約してたからそれを承諾。とりあえず、基本的な動きと飛行を少しだけやったところで時間切れだった。
やってる最中、どうしても飛行で上手く行かなかった清香が、若干ネガティブになるのは仕方が無いと思う。
俺もコイツの立場だったらそう感じていただろうし。
「ま、俺の場合はやらないと駄目って所があったからな。清香も、練習すれば絶対出来るようになるって。俺が保障しちゃる」
「本当?・・・本当に、できると思う?今日のあの動きを見て」
確かに、飛行を最初に行った時は危なかった。
もう少しでアリーナの壁に激突するところだったからな。
「勿論。ここだけの話、俺が最初に飛んだときってもっと危なかったんだよ」
「えっ、それって・・・」
「まぁ聞いとけって。俺が最初に飛んだのって、一夏がIS動かして二日後のだったんだ」
近くにあったベンチに腰掛ける。横に、清香を誘うと、座ってくれた。
そう、あれは今から一ヶ月以上前の話。
受験の日まで遡る。
一夏がISを動かしたことで大騒動になった政府は、すぐさま身近な男子にIS適正試験を受けさせた。
当然、起動できる奴なんて居ない筈だったんだが、俺がひっかかった。
すぐさま呼び出されて、打鉄に乗せられたんだ。場所は政府が用意した特殊アリーナ。
そこでいきなり放り込まれた俺は、訳も分からないまま説明を聞いて飛ぶことになった。
いきなり飛んで成功するわけなんて無く、俺は少し浮いたあたりで怖くなって焦って、んで壁にぶつかって打鉄一機大破させちまったんだ。
当然弁償なんて話になってくるんだけど。そこは研究者の人たちが庇ってくれた。
この子はちゃんとした訓練も受けさせられないまま、あんたがた政府に飛ばさせられたんだ、こうなるのは無理ない、というか当たり前の結果だ。そう言ってくれた。
政府のお偉方も、これには首を縦に振るしかなくて、結局弁償は無し。
「でも危なかったんだわ。危うく高校生にして、億の借金受けるとこだったんだからな」
「う、うわぁ・・・。なんて危ない話」
「だから、清香もあんくらいで落ち込んでちゃ駄目だって。俺も練習繰り返したから出来たんだ、意外と真面目な清香に出来ないわけないだろ?」
「う、うん。ありがと!なんか、その話聞いたら元気出てきたよ。・・・って、意外と真面目ってどういう事?意外は余計でしょー!」
座ってたベンチから立ち上がって、ぶんぶん手を振って怒る清香。
そんな仕草が不思議と可愛いと感じるのは、きっと夜だからだな。今のテンションがそうさせるんだろ。うん、深い意味はない・・・・はず。
「っと、もう戻らなくちゃ。私、ルームメイトの子に勉強教えないといけないから」
「おう、じゃあな。明日は俺の勉強よろしくなっ」
「うん、勿論だよ!今日の借りは明日返す!」
「なんだそれっ」
「拓夢君のマネなのだよ~。じゃ、今日はありがと・・・・、これ、お礼」
「ん?なんだ・・・・・」
なんだよ?と聞こうとした言葉が途切れた。
頬に伝わる微かな温かさ。ちょっと湿った感じ。そして吐息。
「じ、じゃあまた明日っ!」
「お、おう・・・」
すたたたたっ、と足早に掛けてく清香を俺はただ見送ることしか出来なかった。
後書き
ひゃー、清香さん大胆!な今回。
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