IS 転生白書 オリ主が奏でる新しいインフィニット・ストラトス
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リンリン言うなっ!
前書き
相川拓夢
16歳、黒髪に青い瞳。
相川清香との仲が噂されている。
その為、やや強引な手段で迫る上級生も出ているらしいが、成果は皆無。
また、織斑一夏とも親しいため、同性愛者の疑惑あり。
以後交友関係に関しては、エージェントに一任。
「ふうん、ここがそうなんだ・・・・・・」
夜。IS学園の正面ゲート前に、小柄な体に不釣合いなボストンバッグを持った少女が立っていた。
まだ暖かな四月の夜風になびく髪は、左右それぞれ高い位置で結んである。
肩にかかるかからないくらいの髪は、金色の留め金が良く似合う艶やかな黒色をしていた。
「えーと、受付ってどこにあるんだっけ」
上着のポケットから一切れの紙を取り出す。
くしゃくしゃになったそれは、少女の大雑把さと活発さを非常に良く表していた。
「本校舎一階総合事務受付・・・・・・って、だからそれどこにあんのよ」
文句を言っても紙は返事をしない。少女は多少のイライラと一緒に紙を上着のポケットねじ込む。
また中でぐしゃっという音が聞こえたが、もちろん気にしない。
「自分で探せばいいでしょ、探せばさぁ」
ぶつくさ言いながらも、その足はとにかく動いている。思考よりも行動。そういう少女なのだ。よく言えば“実践主義”、悪く言えば“よく考えない”である。
──ったく、出迎えが無いとは聞いていたけど、ちょっと不親切すぎるんじゃない?政府の連中にしたって、異国に十五歳を放り込むとか、なんか思うところないわけ?
少女はジャパニーズに似ているが良く見ると違う。その鋭角的でありながらもどこか艶やかさを感じさせる瞳は、チャイニーズのそれだった。
とはいえ、この少女にとっては日本は第二の故郷であり、思い出の地であり、因縁の場所でもある。“人に歴史有り”とはよく言ったものである。
(誰か居ないかな。生徒とか、先生とか、案内できそうな人)
学園内の敷地を分からなりに歩きながら、きょろきょろと人影を探す。とは言え時刻は八時過ぎ、どの校舎も明かりが落ちているし、当然生徒は学生寮にいる時間だった。
(あーもー、面倒くさいなー。空飛んで探そうかな・・・)
一瞬、「それは名案!」と思った少女だが、あの“あなたの街の電話帳”三冊分に匹敵する学園内重要規約書を思い出して、やめる。
まだ転入の手続きが終わっていないのに学園内でISを起動させたら、事である。最悪、外交問題にも発展する。それだけは本当に止めてくれ、と何回も懇願していた政府高官の情けない顔を思い出して、少女の気分はちょっと晴れた。
(ふっふーん、まあねー、私は重要人物だもんねー。自重しないとねー)
正直に言って、自分の倍以上も年のある大人がへこへこ頭を下げるのは、ちょっと気分がいい。
昔から“年をとっているだけで偉そうにしている大人”が嫌いな少女にとって、今の世の中は非常に居心地が良かった。
男の腕力は児戯、女のISこそ正義。それもまた気分がいい。少女はかつて、“男って言うだけで偉そうにしている子ども”が大嫌いな子どもだった。
──でも、アイツは違ったなぁ。
とある男子の事を思い出す。その男子の事は少女にとって日本に帰ってくる最大の理由になっている思い出だ。
──元気かな、あいつ。
まあ、元気なんだろうけど。元気の無い姿を見たことが無い。そういうやつだ。
「・うわぁ・・・・・・・・て、・・ない・・・」
ふと、声が聞こえる。視線をやると、IS訓練施設の入り口付近にあるベンチに一組の影が見えた。その、片方の影に見覚えが歩きがして、少女はふと首を傾げる。
──ちょうどいいや。場所聞こっと。
声をかけようとして、少女は小走りにベンチへ向かう。
「・・・・・・・出来ないわけ無いだろ?」
不意を突かれて、少女の体はびくんと震えてその足が止まる。
男の声──それも、知っている声に凄く良く似ている。いや、おそらく、同一人物。
予想しなかった再会に、少女の鼓動が急ピッチでペースを上げる。
──あたしってわかるかな。わかるよね。一年ちょっと会わなかっただけだけど、あいつなら絶対分かる。
もう一人の、具体的には最初に考えていた男はどうか分からないけど。と考えながら、顔が緩むのを感じる。
──うわっ、すごくワクワクする。アイツは最初になんて言ってくるんだろう。
期待に胸を膨らませて、少女は再び歩みを再開する。
「たく──」
ああっ、声裏返っちゃったよ。これ絶対からかわれる。
「っと、もう戻らなくちゃ。私、ルームメイトの子に勉強教えないといけないから」
「おう、じゃあな。明日は俺の勉強よろしくなっ」
「うん、勿論だよ!今日の借りは明日返す!」
「なんだそれっ」
「拓夢君のマネなのだよ~。じゃ、今日はありがと・・・・、これ、お礼」
「ん?なんだ・・・・・」
「じ、じゃあまた明日っ!」
「お、おう・・・」
たたたたっと走り去った女子と、ベンチに座り置いていかれた男子がひとり。
──暗くてよく見えなかったけど、うん、間違いない。あれは・・・・。
「・・・拓夢、いつのまに彼女できたの?」
「へ?・・・ッ!!うわあ!リンリン!?なな、ななななんでここにいるんだよ!!」
それは一年ぶりに再会した親友。相川拓夢だった。
驚きと恥ずかしさに顔を真っ赤にした拓夢は、仰け反るようにしてベンチから落ちた。
それを見て、どうしようもなく笑みが込みあがってくる。
──帰ってきたんだ。
空港でも地元に戻っても感じなかった実感が、今ようやく芽生えた。
「って、リンリン言うなっ!」
──あたし、凰鈴音は日本に来たんだ!
その嬉しさの裏返しで、鈴音は拓夢に向かって叫ぶのだった。
IS 転生白書 オリ主が奏でる新しいインフィニットストラトス
第26話 リンリン言うなっ!
「しっかし、驚いたわ・・・」
今、俺の周りはお祭り騒ぎだ。わっしょい。
寮の食堂にて、織斑一夏のクラス代表決定おめでとうパーティが開かれているからだ。
「とうわけでっ!織斑くんクラス代表おめでとう!」
「おめでと~!」
ぱん、ぱんぱーん。クラッカーが乱射される。俺は一夏の頭目掛けて打った。はずれ、ちくしょう。
紙テープが乗っかった頭で、すごく嬉しそうな顔をしている一夏。
しょうがなかったとは言え、あの位置にいたら楽しそうだなと思ったり思わなかったり。
ちなみに今は夕食後の自由時間だ。一組面子勢ぞろいで、飲み物入った紙コップ片手にやいのやいのと盛り上がっている。
俺はというと、数十分前におきた二つのことについて考えていた。
どちらも心臓が飛び出るほど驚いたから、記憶が鮮明に残っている。
「・・・はぁ、もうなんなんだよ」
いきなりキスされた。そしてそれを目撃された。目撃したのは国に帰ったはずの親友だった。
何だこの状況?改めて考えると恥ずかしい。
それにしても、だ。
キスをするって事は、清香は俺の事そういう風に思っているのだろうか?
いやまて、早合点するのは自殺と同じだと言い聞かす。
中学の時、俺の事が好きだと思っていた女子が実は一夏狙いだったことが分かった時の衝撃を思い出すんだ。
「・・・・・・・」
思いのほか、厳しすぎて涙が出てきた。
もし清香がそうだったらと考えてみる。・・・・・・きっと、俺は立ち直れないな。
よくよく考えると、俺の生活の大半は清香と一緒だ。
朝飯は一人だけど、教室行ったら直ぐ話しているし。昼も最近は一緒。夕飯はたまに一緒だ。
寮に戻ってからも、勉強を教えてもらっているから一緒だし。
あれ?・・・これ、清香がいなくなったらやばくねーか?
きっと俺の学園生活は灰色になってしまう。それだけは勘弁だ。
だが、この燻った感じのもやもやはなんだ?
もし清香が、一夏を好きだったらと考えるだけでイライラするこの感じは・・・。
「新聞部でーす!今話題新入生、相川拓夢君に特別インタビューをしに来ました~!」
「はいこれ名詞」
「あ、どうもっす」
物思いに耽っているところ、先輩が突撃してきた。
そして渡された名刺。
名前は、黛薫子さん。二年で新聞部の副部長らしい。
「ではずばり相川君、IS学園での感想をどうぞ!」
いきなりボイスレコーダーを向けられた。
なんだこれ?しかも、周りからも視線が集まってきている。
「えっと、ですね。はじめの方は混乱して、ここで上手くやっていけるか心配だったんすけど、皆優しいし、話とかもしやすいし。今は、ISを動かせて、んでここにこれて良かったって思ってます」
「ほうほう、なるほどなるほど。では次に、山田先生を口説いたって噂は本当かな?」
「ちょっ、それは完全誤解!」
「しかも結構ナンパしてるとか?」
「えっ、どこからそんな事聞いてくるんですか!?違います、ナンパしてないっすから!」
「あれ?噂ではいろんな女の子に声かけてる、割と幅広い人だって聞いてるけど・・」
「なんでそうなるんですか!?俺が声かけてんのは、友達になりたいからであって、そんな目的じゃないっすから!!」
「ほうほう、では二股についてどうおもう?」
「な、何でいきなりそんな事。ま、まぁ論外っすね」
「おや、君は推奨派だと思ったんだけど?」
「いや、なんでですか!俺はどう見えてるか知らないっすけど、一途ですから!」
「じゃあ今も一途に思ってると?」
「そうっすよ・・・・・・はっ、しまった!!」
「これは大スクープ!話題のネタをありがとうございました」
「ちょっ!待って今の無しで!!」
「もう遅いんじゃないかな?皆聞いてたし」
焦って顔を上げると、俺が向いた方向にいる女子は、ばっ!と顔を逸らしてくる。
うわっ、聞かれてたよこれ。
いやまて、まだ修正可能なはずだ・・・・。いや駄目だ!方法が思いつかねえ!!
今もって言われても、これについては結果が出てないし。
それになにより、今後気まずいだろうがガガガガガ。
俺が正気を取り戻したのはパーティが終わって片づけをしているころ。
近くにいた鷹月さんに聞くと、俺が意識を飛ばしている間に写真まで取られていたようだ。
くっそ、あの人マジで許さん。黛薫子さんか、この借りは絶対返してもらう・・・。
ふらふらとよろめきながら、俺は部屋に戻った。
その後、シャワーを浴びる暇なベッドへ倒れこみ、そのまま寝てしまったのであった。
後書き
鈴登場!そして拓夢の暴露回でした!
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